お薦め映画 FAVORITE MOVIES(1)

「チャイナ・シンドローム」

ジャーナリストの使命とは?

原発の本質鋭く突く

生中継のカメラに涙をこらえて…


 原子力発電所の本質を、これほど鋭く突いた映画をほかに見たことがない。それでいながら一級の娯楽作品に仕上がり、約二時間を飽きさせないのだ。

 1978年、アメリカ。映画「チャイナ・シンドローム」はスリーマイル島の原発事故を予見するかのように製作された。

 ジェーン・フォンダ演ずる女性TVキャスター、キンバリー・ウェルズの原発訪問から映画は始まる。見学中に振動が起きた。鳴り響く警報サイレン。発電所に緊張が走る。

 契約カメラマンのリチャード(マイケル・ダグラス)は、その様子の一部始終を録画しており、それを専門家に見せた。「チャイナ・シンドロームだ。炉心が露出して大爆発を起こす寸前だったんだよ」と、専門家は言った。「スクープだ!」。局に駆け戻るキンバリーら。しかし、電力会社の横やりで、放送は中止になった。

 一方、発電所のジャック・コデル(ジャック・レモン)も実は、発電所の異常に気付いていた。工事・検査に手抜きがあり、このまま運転すると大事故になる。コデルは会社に再検査を進言するが、「操業を休むことになり損益につながる。だめだ」と相手にされない。だれのための発電所か。資本の論理優先の電力会社の姿勢。

 キンバリーの取材に心を開いたコデルは、証拠書類の提供を約束するが、手抜き工事をした建設会社は公聴会への証拠提出を力で阻んできた。身の危険を感じたコデルは発電所に逃げ込み、制御室に立てこもる。呼ばれたキンバリーが制御室から生放送を始めた途端、コデルは踏み込んできた警官隊に射殺される。

 次々に駆け付ける他社の記者に、発電所の広報担当者は「コデルは精神錯乱だった」と発表した。「あんな正常な男はほかにはいない。彼は発電所の危険を知っていた。彼こそ英雄だったんだ」。会社に気遣ってコデル逮捕に協力した同僚の一人から、そんな言葉を引き出したキンバリーは、生中継のカメラに涙をこらえて真相究明を訴えるのだった。

 現場で、何が真実かを見極めたリポート。キンバリーは単なる美人キャスターではなくなった。伝えるべき事実を伝えるジャーナリストとしての仕事をやり遂げたのだった。

 カラーバーがスクリーンいっぱいに映し出されたラストシーンを見た後、興奮で体の震えがしばらく止まらなかった。さすが。あくまでも娯楽映画の線は崩さず、それでいて本質に迫る。アメリカ映画の底力に参った。

 映画館に入り浸っていた学生時代、最も影響を受けた映画の一つだ。元気がなくなった時には、この映画を見ることにしている。再びやる気にさせてくれるからだ。

             (初出:神奈川新聞「社報」1993年8月27 日号)

 ◆依頼されて「社報」に書いた文章転載で恐縮ですが、それなりにこの作品をうまく紹介したつもりなので、そのまま転載しました。スクリーンのほか、ビデオでも繰り返し見た作品です。とにかくおもしろい。僕が最も好きな映画の一つです。ビデオはRCAコロンビア。カラー作品、122分。


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