身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2008年8月1日〜8月31日

●「冤罪File」第3号が本日発売●「新聞と教育」2008年夏号●猛暑●献本からいくつか紹介●「セカンド」10カ月ぶり更新●民放の夕方のニュースは異常だ●残暑見舞い●スポーツ過多の一方で●それって祭りの演出でしょ●志の高い記者仲間●資料の山が崩落●箱根合宿●司法崩壊だな●どうした阪神●●●ほか


8月1日(金曜日) 「冤罪File」第3号が本日発売

 朝日新聞など全国紙の広告でご覧になった方もいるかもしれないが、季刊「冤罪File」(えんざいファイル)第3号が全国書店で本日発売された。僕はこの中で3本の記事を書いている。

 僕の執筆記事は次の3本。冤罪事件の検証として、横浜地裁で無罪判決が確定した「横須賀の古書店主わいせつ冤罪事件」をレポート。また、来春にも導入される裁判員制度をめぐっては、取り調べの可視化の問題を「映像の影響力と怖さ」の視点からクローズアップしてみた。そして「裁判官の品格」シリーズの3回目では、東京高裁でいくつも逆転無罪判決を言い渡している原田國男裁判長を取り上げた。いずれも読みごたえがある内容だと自負している。ぜひお読みください。

 なお、今号はそのほかにも、「御殿場少年事件の全検証」「大阪地裁所長オヤジ狩り事件」などの特集記事が掲載されている。巻頭インタビューは、死刑制度廃止の運動を続けている国民新党の亀井静香代議士。これで定価380円は絶対に安い。ものすごくお買得な一冊だと思う。どうぞ書店で手に取ってみてください。


8月2日(土曜日) 「新聞と教育」2008年夏号

 学校新聞の専門誌「新聞と教育」の2008年夏号が届いた。小・中学校や高校の学校新聞をテーマに、「何のために新聞を作っているのか」を生徒や教師たちに40年間も延々と問い続けてきた熱い雑誌だ。全国の新聞部員から寄せられた紙面や記者活動についての相談や質問に対し、複数の顧問教師が具体的にアドバイスするページは、相変わらず充実した内容で読みごたえがあり、新聞部員の取材活動に大いに参考になるだろう。

 ただし今号の同誌は、いつもとは少しばかり様子が違っている。新聞コンクールの入賞常連である北海道の帯広柏葉高校新聞を同誌編集長が厳しく批判したことについて、一部の顧問教師や生徒が激しく反発しているという「事件」を、特集の一つとして取り上げたからだ。問題の本質は、「高校新聞を本物のジャーナリズムだと認識しているかどうか」にかかわってくる。取材で得た事実を基にして読者に問題提起するのは、ジャーナリズムの基本的な役割だ。これはプロの記者にも高校新聞にも違いはない。

 同誌編集長は北海道のこの高校新聞に対して、「そういう記者活動をしていないのではないか」と叱咤激励するつもりで批判したのだろう。ところが、「高校新聞は一人前の言論・報道機関である」という認識がなければ、あるいはそのような問題意識を持っていなければ、同誌編集長の辛口の問題提起が心に響くことはまずない。残念ながら同校の顧問教師ら関係者は、せっかくの助言が全く理解できなかったということらしい。

 かわいそうなのは新聞部の生徒たちだ。実際には建設的な助言であったはずなのに、「高校新聞は本物のジャーナリズムだ」という認識がない顧問教師の「指導」の下で、部外者から一方的に誹謗中傷されたと思い込んでしまったのだから。なんともったいない。生徒たちに素晴らしい実力そのものは大いにあった。ただ、問題意識を磨く機会がこれまでなかったのだ。そこにさらに向上するために「考える材料」が提示されたというのに、あまり頭のよくない教師に誤った誘導をされたおかげで、生徒たちは考える「きっかけ」自体を奪われてしまった。顧問教師の責任は重いと思う。

 ちなみにこの問題をめぐっては、僕も同誌の特集の中に、「高校新聞はジャーナリズムとしての責任を果たすべきだ」との視点から論説原稿を書いた。ジャーナリズムのあり方に深く関係する部分もあるので、近いうちに全文を「セカンドインパクト」に掲載しようかと考えている。「新聞記者って…」「エッセイ」「論説・解説・評論」のどのページに掲載するかは思案中だ。


8月4日(月曜日) 猛暑

 午後から都庁。都立高校長の記者会見に顔を出す。夕方から新宿区内の法律事務所。各国の刑務所事情について、海外視察経験の豊富な弁護士の話を聞く。それにしても異常な暑さにはまいってしまうな。この夏一番の暑さだったらしい。東京の最高気温は34・5度だったとか。いくら拭っても汗がどっと吹き出てくる。ハンドタオルがぐっしょりと重くなった。なんなんだこの暑さは。


8月6日(水曜日) 献本からいくつか紹介

 昨年後半あたりから最近にかけて、献本していただいた書籍の中からいくつかを紹介する。今ごろになって遅いよと怒られそうなものもあるが、どうかご勘弁を。(定価はすべて税抜き価格)

 ◇「教育と格差社会」佐々木賢(青土社)「教育問題とは労働問題そのものだ」との視点から、格差社会の背景と政府の提唱する教育再生(教育改革)構想の欺瞞性を鋭く分析。1600円。

 ◇「ことばで伝え合う学級づくり/ユーモア詩で笑った!泣いた!どんぐり先生と子どもたち」増田修治(教育開発研究所)「表現する力」を身につけることで変化する子どもたちの姿を描いた小学校教師の実践報告。1900円。

 ◇「希望は生徒/家庭科の先生と日の丸・君が代」根津公子(影書房)「自分の頭で考えよう」と生徒に教え続けて処分された中学校教師の教育実践と闘いの記録。1700円。

 ◇「兵役拒否の思想/市民的不服従の理念と展開」市川ひろみ(明石書店)武力行使を現場で担う兵士の状況を基に、「責任ある主体」としての市民の兵役拒否の可能性を分析。2800円。

 ◇「子どもは好きに育てていい/『親の教育権』入門」西原博史(NHK出版・生活人新書)子どもの人権をテーマに発言を続ける憲法学者が「子育てする親の権利」について考察。700円。

 ◇「校長を出せ!バカ親とクソガキのワガママが学校を襲う」堀和世(PHP研究所)サンデー毎日の記者が話題の「モンスターペアレント」の背景を探ったレポート。1200円。

 ◇「日野『君が代』ピアノ伴奏強要事件/全資料」処分対策委員会、事件弁護団・編(日本評論社)ピアノ伴奏拒否訴訟の一審から最高裁までの準備書面などの訴訟資料を集大成。762ページに及ぶ力作。8000円。

 ほかにもいろいろあるけど、とりあえず以上7冊。とても簡単な紹介の文章で恐縮です。


8月7日(木曜日) 「セカンド」10カ月ぶり更新

 「セカンドインパクト」を10カ月ぶりに更新(汗)。「冤罪・裁判・裁判員制度」のページを新設しました。このページでは、雑誌「冤罪File」に執筆した記事を主に紹介するつもりです。とりあえずコーナートップのページに記事一覧を掲載し、その中の「裁判官の品格」シリーズの1回目について、小見出しだけをアップしておきました。


8月11日(月曜日) 民放の夕方のニュースは異常だ

 日本テレビの夕方のニュース番組の「大食い女王対決」のコーナーで、昨年10月と今年1月と6月の3回にわたって、食べた料理の「水増し」があったそうだ。新聞や週刊誌で、「実際に食べた皿数を水増ししていた」「やらせや捏造がまたもや発覚」などと報じられた。事実と異なるデタラメな内容を伝えるのは論外だ。しかし、ニュース番組で「大食い対決」などというコーナーを設けて放送すること自体が、そもそもおかしいというか異常だろう。むしろそっちの方こそ問題にすべきではないのか。

 日本テレビに限らず、民放の夕方のニュースでは、人気のラーメン屋や格安の回転寿司、デパ地下めぐり、質屋に持ち込まれるブランド品の紹介などといった特集が毎日飽きもせずに延々と流されている。いったいこれのどこが「ニュース」「報道」だというのか。バラエティーや情報番組だというのなら、そういうのもありだとは思う。だが、曲がりなりにも「ニュース番組」を名乗っている番組で、いくらなんでもこれはないだろう。少なくとも「報道」として放送するような内容ではない。

 そういうワイドショー的な番組を作りたいのならば、ニュース番組とは別枠として、ニュースとは区別して放送すればいい。いやむしろ、ニュースとは明確に区別するべきだ。ジャーナリズムと娯楽情報は果たすべき役割が違う。事実確認の厳密さや取材記者に科される倫理や規範意識も全く異なる。ジャーナリズムと娯楽情報との混同は、報道機関として自殺行為ではないか。民放の夕方のニュース番組は、本来の報道番組に徹するように強く提言する。


8月13日(水曜日) 残暑見舞い

 いただいた暑中見舞いの返事を出すために、残暑見舞いのはがきをパソコンで作成して印刷する。立秋を過ぎたので残暑見舞いだ。年賀状と違ってほとんどが返信ということもあって、枚数は年賀状の十分の一ほど。あまり多くないから宛名はすべて手書きである。それでもやっぱり面倒くさい。来年からは宛名も印刷にしようかなあ。ちなみに、使用したはがきは「かもめーる」の「夏の海」。近所の郵便局では売り切れだったが、ほかの郵便局から取り寄せてくれた。なんて親切なんだ。助かりました。


8月16日(土曜日) スポーツ過多の一方で

 テレビの画面にも新聞の紙面にもスポーツがあふれている。北京五輪、高校野球、プロ野球…。どこもそんなのばかりだとつまらないなあ。しかしそうは言うものの、興味のある五輪種目は選んで見たりもするんだけどね。問題であり憂慮すべきなのは、延々と大量に流されるスポーツ情報に押し流されて、本来なら伝えられるべき情報が伝わらなくなっていることだ。物理的に隅っこに小さく追いやられるか、なかったことにされてしまうのだから。スポーツに関があるかないかのレベルではなく、そこのところが実は最も怖い。


8月17日(日曜日) それって祭りの演出でしょ

 北京五輪の開会式に「ウソ」があったとして、内外から批判が集まっている。開会式会場の上空に映し出された花火はCGの合成映像だったとか、9歳の少女の歌声が口パクだったとか、56の民族の代表として登場した子どもたちのほとんどは漢民族だった……というのだ。でもさあ、これってそんなに批判されるような大層な話かね。演出なんだから別にいいんじゃんか。そもそも花火の映像は見ていてすぐに合成じゃないかと分かったし、少女の歌声も歌と声のタイミングがどことなく不自然だなあと感じた。民族衣装を着て登場した子どもたちのことはよく分からなかったけど、別人の格好をして演じることなど映像の世界では普通の表現ではないのか。歴史絵巻をベースに壮大な仕掛けと人海戦術を駆使した開会式の映像は工夫が凝らされていて、僕はそれなりに面白いと思って楽しんで見たけどなあ。お祭りのオープニング映像の演出に、いちいち目くじらを立てるなんて不粋じゃないかと思う。


8月21日(木曜日) 志の高い記者仲間

 午後から横浜地裁。県立学校の教職員らが「日の丸・君が代」の強制に異議を唱えている裁判の口頭弁論を傍聴取材。この日は県教育長が証人として登場。さらに、大学教授や原告の教職員に対する証人尋問が行われた。

 山本正人教育長は、「国歌斉唱の際の起立は社会常識としてのマナーであると考えている。教員の行動は生徒に与える影響が非常に大きい。不起立は社会常識に反する」と主張。起立しない教職員の氏名を県教委が校長に報告させていることについては、「氏名を把握しないと指導できなくなる。懲戒処分を前提としているわけではないが、可能性としては否定できない」と述べ、起立しない教員の管理職登用の可能性を問われると、「学習指導要領に沿わない対応をするのであれば(管理職としては)適切ではない」と答えた。また、「国旗・国歌は国民統合の象徴と理解している。式場正面に掲揚することが儀式的やり方としてふさわしい」との認識を示し、三脚での国旗掲揚を認めない理由とした。

 一方、県立横浜翠嵐高校の学校事務職員は、「事務職員や司書や技能職員も学校運営や行事に参加する。教員と一緒になって共同でつくっていくのが学校だ。生徒は教員に言えない本音や相談を私たちに語ることもある」と学校の現状を語った上で、「今年3月、事務職員らが集められて事務長から卒業式に参加しなくていいと告げられた」と証言した。この職員は自主的に卒業式に出席し、卒業生にお祝いの言葉をかけ、会場の後片付けも一緒に手伝ったという。国歌斉唱の際は起立しなかったが、「式を妨げたり混乱させるような行為は一切していないのに、校長から県教委に報告書が提出されたことに驚きと不安を感じた」と述べた。

 教育長と事務職員との発言の落差が際立っていた。あるべき学校の姿を考えれば、どちらが教育理念として説得力を持っているか、どちらがより多くの共感が得られるかは一目瞭然だと思われる。事務職員の証言には、裁判長らもうんうんとうなずきながら真剣に聞き入っていた(ように見えた)。言わんとすることは十分に伝わったのではないか。なかなか見ごたえのある法廷だった。

◇◇

 裁判の報告集会を取材した後、弁護団や原告団に誘われて懇親会へ。一緒に参加していた全国紙A紙の中堅記者から、「大岡みなみのホームページを見たのが新聞記者になるきっかけになった」と聞かされた。それは感動的なことを言ってくれるなあ。ちょっと(というよりかなり)うれしいじゃないか。記者やジャーナリズムのあるべき姿について、あれこれ書いた文章をまとめてサイトを立ち上げた甲斐があるというものだ。初対面のこの記者は、できる限り記者クラブから外に出て、発表やリークを垂れ流す記事を書かないように心がけているのだと話してくれた。いいなあ。最近では貴重な存在の記者だと思う。

 志を同じくする記者仲間の存在は、自分自身にとっても大きな励みと刺激になる。すっかり意気投合したので2人で別の居酒屋に繰り出し、取材活動や最近の記事について深夜まで語り合った。


8月24日(日曜日) 資料の山が崩落

 仕事部屋に積み上げてあった取材資料の山が崩れ落ちた。これまでも小さな崩壊はしばしば起きていたのだが、いくつかある山の一つが突然どさっと大きく崩れたのだ。後片付けをしながら(といっても元通りに山を積み直すだけなんだけど)、やっぱり思いきってどんどん捨てなければダメだなあと真剣に思い始めた。仕事部屋だけでなくて、リビングにもそういう資料の山ができている。しかもどんどん増える一方なのだ。ちょろちょろと捨てるだけでは追い付かない。いやあ、困った困った。


8月26日(火曜日) 箱根合宿

 午後から箱根湯本のホテル。「日の丸・君が代」の強制に反対して裁判を続けている都立高校教員らの研究合宿に、誘われて参加する。訴訟の進め方がさまざまな法律論から検討される中で、「卒業式や入学式で国旗を掲げて国歌を斉唱させるのは、国家忠誠宣誓儀式の強制行為である。最高裁の旭川学力テスト判決はこうした教育の国家統制に歯止めをかけるものだ」との考えをベースにした組み立てが学者から提示される。全く同意見だ。すとんと腑に落ちる理論だと思う。

 さらに、「教師という職業や職務の持つ特殊性とは何か」「政府の一方的なメッセージを伝達(配達)することを拒否する自由の根拠とは何なのか」「教師の教育の自由はどの範囲まで認められるものか」──といった課題も。どれも簡単に答えが見つかるような問題ではない。見当外れでとんちんかんな質問も含めて討論は白熱。とても刺激的で面白い議論が聞けて勉強になった。

 懇親会に顔を出して午後9時前に退出。「泊まっていけば」と言われたが、翌日も仕事があるので横浜に戻る。編集部からファクスで届いていた10ページ(1万2000字)の初校ゲラをチェック。はみ出した20行分の文章を削って調整する。


8月27日(水曜日) 司法崩壊だな

 午後から霞が関の東京高裁へ。刑事11部で冤罪事件の被告人質問を傍聴取材する。それにしても検察官が酷いのなんの…。それが本件事件の立証にどんな関係があるんだ、というようなくだらない質問ばかりを、へらへらとした態度で延々と続ける。さらに輪をかけてとんでもないのが左陪席の裁判官だった。最初から被告人を犯人だと決めつけんばかりで、これまた事件とどんな関係があるのか意味不明な質問をする。被告人から逆に突っ込まれる有り様で、傍聴席からも失笑が起きていた。なんともまあすさまじい法廷だ。これじゃあ被告人があまりにもかわいそうだよ。

【おことわり】8月16日付から8月27日付までの「身辺雑記」をまとめて更新しました。


8月31日(日曜日) どうした阪神

 阪神の勢いがひところに比べて衰えてきたなあ。どうも北京五輪あたりからダメダメっぽい。愛用していた猛虎が描かれた扇子の骨が折れたころから、下降線を描き始めた(ような気がする=笑)。巨人がじわじわと下から迫っているのが無気味だ。というか、きょうも負けてるし…。巨人にだけは負けないでほしい。


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