身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2010年11月1日〜11月30日

●裁判員を否定する山室恵・元裁判長●出版不況●尖閣ビデオ流出●冤罪被害者●もう一つの尖閣ビデオ●海保職員が流出か●取材情報提供について議論●やっと静寂●シュレッダー●宇和島●冤罪集会●あれこれ雑務●スペア用メガネ●小型の一眼レフ●値段交渉してよかった●喪中はがき●●●ほか


11月1日(月曜日) 裁判員を否定する山室恵・元裁判長

 東京・港区の「耳かき店員殺害事件」で殺人の罪に問われ死刑を求刑された被告人の裁判員裁判で、東京地裁は無期懲役の判決を言い渡した。たぶんどの裁判員も相当な苦悩と葛藤の末に、議論を積み重ねてたどり着いた判断だと思うが、この判決について元東京地裁裁判長の山室恵氏は、「偶然に選ばれた裁判員によって、死刑になったり死刑にならなかったりするのは問題だ」「裁判員裁判ではよほどのことがなければ死刑にはならなくなる」などと、TBSテレビのニュース番組で指摘していた。さらに「自分だったら死刑判決を言い渡したかもしれない」のだそうだ。この人はいったい何を言ってるのだろう。

 プロの裁判官であっても、死刑であったり死刑でなかったりするではないか。冤罪事件であっても担当の裁判官によって、死刑判決になることもあれば無罪判決になることもある。「当たり外れ」が大きいのは裁判官でも同じだ。むしろ裁判官の方こそ人権感覚がなくて、憲法や刑事訴訟法を無視したいい加減な裁判をやっているではないか、と思わざるを得ない裁判は少なくない。山室氏の勘違いと現状認識のお粗末さには、驚きを通り越してあきれるばかりである。「裁判員裁判ではよほどのことがなければ死刑にはならなくなる」といった指摘にも耳を疑ってしまう。死刑という究極の刑罰を言い渡すのだから、慎重にも慎重な判断をするべきで、どうしても仕方がないと判断するよほどの重大事件に限るのが当然だろう。そんなに気軽にホイホイと死刑判決を言い渡されたら困る。というか怖い。山室氏のお里が知れるというものである。

 【おことわり】10月23日付から11月1日付までの「身辺雑記」をまとめて更新しました。


11月4日(木曜日) 出版不況

 読まなくなったコミックスなど約100冊を処分するために、古本屋に持ち込んだ。あふれ返った資料や書類に占拠されて足の踏み場もなくなりつつある部屋を何とかしようと、このところ時間を見つけては、整理整頓と思い切ったゴミ出しを断行している。パソコンのハードディスク(HD)と同様に、室内スペースもマジでパンク寸前なのだ。コミックスの売却はこの一環である。

 とまあそんなわけで、以前にも何回か古本を持ち込んだことがあり、相場よりもかなりの高額でいつも買い取ってくれた古本屋を久しぶりに訪れると、店は跡形もなく消えていた。やっぱり……。新刊書店も古書店も次々に閉店しているご時世なので、なんとなくそういう不安はあったのだが、悪い予感は的中してしまった。いやあ困ったなあ。良心的な馴染みの店が消滅して寂しいというより、率直に言って困った。仕方がないので離れたところにある別の古本屋に行った。そこは今まで一度も利用したことがないが、店の外から様子をうかがうだけでも、ろくな成果が得られないことは十分に予測できる店だった。

 結果は案の定だった。「古いマンガは売れない」「マイナー出版社の本は要らない」「ボランティアで店をやってるわけじゃないから、売れないものを買っても捨てるしかないんだ」と店主は繰り返した。10冊ほどをピックアップして、残りはゴミに出すしかないなので全部で350円だという。それはひどい。言わんとすることはもっともだとも思うが、それにしても安すぎるだろう。それに、もう少し言い方があるだろうに。でもまあ本が売れないのは事実だし不況だし、たぶん他店も似たようなものだろうなあ。結局、売るのはやめにした。これなら捨てた方がマシかもしれないな。


11月5日(金曜日) 尖閣ビデオ流出

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突ビデオをユーチューブで見た。映像はなかなかリアルで鮮明だった。たぶん僕も含めて多くの日本人が見たかった映像だったので、ネット上に流出されたものを実際に視聴できて喜んでいる人が多いだろう。そもそも日本政府はもっと早い段階で、例えば中国人船長を逮捕した直後か釈放する段階で、映像を公開してよかったのではないかと思うが、しかし政府の意思決定に反してこういう形で映像が流出されてしまうのは、いかがなものかなあとも思う。「内部告発」と素直に受け取っていいものなのかどうなのか、率直に言って判断に迷うところだ。


11月6日(土曜日) 冤罪被害者

 午後から横浜市内。痴漢容疑で逮捕され有罪が確定し、懲戒免職された横浜市立高校の元教諭の集会を取材する。元教諭は一貫して無実を訴えていて、今月末には処分の取り消しなどを求める行政訴訟の第1回口頭弁論が開かれる予定だ。集会では弁護団から裁判の目的や争点などが説明された。終了後、野毛の中華料理店で関係者と懇親会。途中で退席して横浜駅前の居酒屋へ。「仙台筋弛緩剤事件」の冤罪を訴えるグループの懇親会に顔を出す。当時の一方的なマスコミ報道と病院関係者らとの証言の落差に驚かされる。関係者から改めてきちんと話を聞かなければと思った。懇親会には、再審公判で無実を主張している「布川事件」の被告人の杉山卓男さんも同席。お開きの後もしばらく店で飲んでから、杉山さんら数人と近くのカラオケ店へ。みんな疲れ知らずだなあ。


11月7日(日曜日) もう一つの尖閣ビデオ

 午後から東京・神保町。ジャーナリストグループの定例の集まりに参加。前回に引き続いて、メディアを取り巻くさまざまな課題をテーマに議論する。拡大ティーチインとしてテレビ報道のあり方をめぐって突っ込んだ話し合いを企画したい、現場の記者やディレクターたちの「レベルの高い苦労話」を聞きながらディスカッションする機会を設けようということになった。面白くなりそう。

 ネットに流出した尖閣ビデオに関連する映像として、海上保安官が巡視船「いそなみ」(PC217)の甲板でAKB48の曲に合わせて踊るビデオを定例会の参加者が紹介してくれた。これもユーチューブにアップロードされた映像で、不安定な揺れる船上で4人の海上保安官が約3分間にわたってダンスを披露するのだが、日ごろから訓練を積んでいるからこそああいう場所でも踊れるのだろうな、ということがよく分かる。なかなか愉快な映像だった。こんな流出(漏洩)ビデオだったら平和でいいのに。(ちなみに同映像は11月10日現在で削除されていました)


11月10日(水曜日) 海保職員が流出か

 午後から授業。大学に出かける直前に、神戸の海上保安官がビデオ流出を認めたとの速報が流れたので講義冒頭で少し触れる。ユーチューブに流出した尖閣ビデオを見たかと学生に聞いてみると、4分の1ほどの学生が手を挙げた。ついでにAKB48の曲に合わせて海上保安官がダンスを踊るビデオについても聞いてみたら、こちらもわずか数人ながら見たという学生がいた。機会があれば授業の中で、流出行為の是非やインターネットに映像が流されたことについての評価など、学生の意見や感想を聞いて討論してみたい。


11月12日(金曜日) 取材情報提供について議論

 夕方から東京・原宿。報道実務グループの定例会に参加。この日のテーマは、NHK記者が家宅捜索情報を取材先にメールで送信していた問題(10月11日付「身辺雑記」参照)について。取材で知り得た情報をどこまで関係者に伝えていいのかが議論になった。取材録音データの流出事件や捜査情報の「前打ち」報道も取り上げられたが、この問題の最大のポイントは「取材対象との距離感」だろう。掲載前の原稿やゲラや大刷りを取材先に見せてしまうのも、取材で知り得た情報を提供するのと同様で、取材対象との距離感や緊張感のなさが背景にあると言っていい。問題の本質は、記者が取材対象の一方に過度に肩入れし過ぎる点にある。ところが「ギブアンドテイクは不可欠」だとか「建て前では済まない」といった言い方で終わってしまって、「距離感や緊張感」への参加者の関心が希薄だったのは残念だった。取材相手との関係はケースバイケースで、どこまでのめり込むかといったギリギリのラインは微妙なバランスの上にあるのは言うまでもない。だからこそ議論するなら、具体的な事例をあげてもっと掘り下げるべきだったと思う。


11月14日(日曜日) やっと静寂

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)が終わって、これでようやく横浜も静かになると思うとほっとする。警備のために仕方ないとは言え、やたらと警察官だらけだったのは威圧感があったし、朝から夜遅くまでヘリコプターが飛び回っていたのは、正直かなり鬱陶しかった。滞在中の各国首脳や関係者にしても、ヘリの飛行音は相当うるさいと感じたんじゃないかなあ。会場近辺に住んでいる人たちの期間中のご苦労が偲ばれる。


11月17日(水曜日) シュレッダー

 午後から授業。話の組み立てがイマイチだった気がする。それでも「今回も面白かった」とか「勉強になった」といった感想を書いてくれる学生も少なからずいるので、どこがどうしたらウケるのかは謎だなあ。それはさておき授業が終わってから、過去の古い出席カード(兼ミニレポート)を講師控室のシュレッダーにかけて処分する。学籍番号など学生の個人情報が書かれているため、不用意にマンションのごみ集積所に出すわけにもいかず、自宅から運んできたのだ。いわゆる大掃除の一環である(苦笑)。しかしとにかく大量にあるので、あっという間にシュレッダーのごみ袋がいっぱいになるし、おまけにやってもやってもさっぱり終わらない。ホチキスで閉じられていてシュレッダーにかけられないレポートの束は、教務に頼んで焼却処分してもらうが、それらも含めてブツはまだまだたくさん残っている。やっぱりためこんだりしないで、1年ごとにこまめに処分しておくべきだった。


11月19日(金曜日) 宇和島

 午前3時に起きて、早朝の電車に乗って羽田空港へ。松山空港を経由して、昼過ぎに列車で宇和島に到着。10年前の誤認逮捕事件で無罪になった元被告の男性と主任弁護人から話を聞いた。真犯人が逮捕されて男性が釈放された当時に、取材で2人にお会いしてから10年ぶりの再会だ。夕方、松山に戻る。


11月20日(土曜日) 冤罪集会

 午前中に松山市内の別の弁護士に会って話を聞く。夕方の便で帰京。そのまま東京・大塚へ。再審・冤罪事件被害者の集会に遅れて顔を出す。会場に到着した時はちょうど、東京高裁の元裁判長で法政大学法科大学院教授の木谷明さんの講演の最中だった。終了後、懇親会に参加。木谷さんのほかに、映画「それでもボクはやってない」の周防正行監督も同席されていた。せっかく同じテーブルだったのに、会場内があまりにもうるさくてほとんど声が通らず、お二方としっかり会話できなかったのが残念だった。また次の機会に。

 散会後、さらに二次会の飲み屋を探して駅前をしばしふらつく。山陽本線痴漢冤罪事件の山本真也さん、布川事件の杉山卓男さんらと途中で別れて、痴漢冤罪・練馬駅事件のNさん夫妻と居酒屋へ。懇親会の中華料理がてんこ盛りで満腹だったので、つまみは全く頼まず。とにかくひたすら飲むだけだった。


11月22日(月曜日) あれこれ雑務

 授業のレジュメ作成。次回の授業で学生に指示するレポート課題の要項を作成し、教務担当者に連絡。「ウェブ・キャンパス」に掲示してもらうように依頼。お世話になっている弁護士や編集者らに礼状などを書いて、ファクスやメールを送信。そのほかあれこれ雑務を片付ける。


11月23日(火曜日) スペア用メガネ

 注文していたスペア用のメガネを受け取る。特別な圧縮レンズと外国製のフレームなので8万円もする。それでもレンズのグレードはワンランク落としているので、最初に提案されたものに比べたらかなり安くなったし、商店街の10%オフキャンペーン適用で割り引きもされたが、貧乏人にとっては実に痛い出費だ。


11月24日(水曜日) 熱心

 午後から授業。今回のテーマは「ネット社会の光と影」。身近な話題ということもあって、学生たちの関心はいつも以上に高いようだ。とても熱心に話を聞いているのが見て取れる。終了時に集める出席カードには、授業の感想や意見とともに、自分自身の経験談などをぎっしり書いてくる学生が目立った。


11月25日(木曜日) 小型の一眼レフ

 午後から横浜地裁。痴漢容疑で逮捕されて有罪が確定し、横浜市教育委員会に懲戒免職された横浜市立高校の元教諭の河野優司さん(現在はタクシー運転手)が、事件は冤罪であるとして免職処分の取り消しなどを求めた行政訴訟の第1回口頭弁論を傍聴取材する。河野さんは一貫して無実を訴えているが、今回の行政訴訟のポイントは3つ。まず、誤った刑事裁判による有罪確定に基づいて、懲戒免職処分をしたのは不当であること。次に、もし仮に痴漢行為をしたのが事実だとしても、懲戒免職とした処分の重さは同種の事件と比べて不公正で人事裁量権の乱用であること。そしてもう一つは、無実を訴えている本人に対する調査や事実認定が不十分で、行政処分の手続きとして不当で違法であること。以上の3点を河野さん側は強く主張し、処分の取り消しなどを求めている。

 民事裁判ではよくあることだが、この日の法廷はほかの審理事件がいくつも立て込んでいて、裁判官はまさにベルトコンベアの流れ作業状態の仕事ぶり。河野さんの第1回口頭弁論もわずか3分ほどで終わった。次回以降は意見陳述や証拠調べなど、本格的な審理が行われる予定だ。弁護士会館で報告集会。弁護団が審理内容について説明し、河野さん本人が近況や心境などを語った。その後、裁判所近くの喫茶店で教員OBら関係者としばし雑談。

 横浜駅前のメガネ店でメガネの調整をしてから、家電量販店へ。いい感じの小型の一眼レフカメラが目に止まった。やや小さめの手ごろな大きさで、なによりデザインが気に入ったし機能も申し分ない。店員の説明を聞いて、ますます欲しくなった。いいなあ。欲しいなあ。だけどちょっと値段が高いんだよなあ。もうしばらく我慢していれば値下がりするかも。ちょこっと様子を見よう。


11月28日(日曜日) 値段交渉してよかった

 家電量販店の店頭で3日前に見かけて、デザインと性能にすっかり魅せられた軽量の小型一眼レフのデジカメを買ってしまった。先日のこの欄でも書いたように、決して安い買い物ではないのでしばらく様子を見ようと思っていたのだ。ところが、最初に見かけた店の競合店をのぞいていたら、「欲しい欲しいオーラ」が出まくっていたのか、店員が声をかけてきた。「今ならお安くしますよ。◯◯さん(家電量販店の名前)よりも絶対にお買得です」。提示された価格は、店頭表示価格よりも1万円も安かった。ええっマジっすかあ。その値段ならなんとかなりそうだし、思い切って買ってもいいかも…。ただし個人的な想定ラインよりもほんの少し高い。「よく考えて明日また来ます」と返答し、ひとまず留保して引き取った。

 で、きょうである。念のため最初の店に出かけて、店員に「××さん(家電量販店の名前)をのぞいたら、△△円にしますと言われたんですけど」と告げてみた。しばし考え込む店員。するとそれよりもさらに安く、しかも個人的な想定ラインをかなり下回る価格を示してくれた。「衝撃価格だと思います。どうですか」。おおっ、これなら文句なしだ。「はい、それでお願いします」と即答して商談成立である。聞いてよかった。値段交渉してみるもんだなあ。

 本格的な一眼レフのデジカメを持ち出すほどでもなく、かと言ってメモ代わりに使っているコンパクト・デジカメだと物足りず、といった場合に手ごろな感じで重宝しそうだ。しかし何よりもデザインがすごく気に入った。愛らしくて落ち着きと気品がある。とにかくそこが一番の決め手だなあ。タッチパネルでピント合わせや設定ができるのも便利そうだし、一眼レフでありながら軽量なのもうれしい。いやあ、いい買い物ができてよかった。満足じゃ。


11月30日(火曜日) 喪中はがき

 喪中はがきを作成して印刷する。見出しの文面は「年末年始のご挨拶をご遠慮申し上げます」ではなく、「新年のご挨拶を失礼させていただきます」とした。こちらからご挨拶するのは失礼させていただくけれども、先方からのご挨拶を頂戴することまであえて遠慮するつもりはないからだ。「相手は喪中なので控えておこう」と判断される方はそれも一つの考え方だと思うし、もしいただけるのであれば、それはそれでありがたく頂戴しようと思う。でもまあ、たぶん来年の年賀状は激減するんだろうなあ。ちょっと寂しい。ちなみに僕は、喪中はがきをいただいた方にはいつも、年賀状ではなく寒中見舞いを作成してお送りしている。タイトルやイラストは年賀状と全く違うデザインだが、近況報告などのメッセージは年賀状も寒中見舞いも共通だ。いずれにしてもこのところ毎年のように、年が明けてから年賀状を作成して郵送していたが、喪中のおかげで珍しく早々と挨拶状を出すことになった。


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