身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2012年6月1日〜6月30日

●紙面私物化する読売の異様●うれしい悲鳴●なぜこの時期にオウム●自民党と大差ない野田政権●原発容認する野田亡国内閣●「冤罪と裁判」●「東電OL事件」再審決定●再稼働を明言した首相と馬鹿記者●休講●野田首相の頭こそブラックアウト●NHK世論調査の数字に驚く●政府のサボタージュ●電子書籍化●「除染」って何だろう●オウムに狂喜乱舞する異様な国●原発再稼働決定に怒り●価値判断できないメディア●授業でたっぷりと●図書館の受難●東電「最終報告書」の図太さ●東京新聞を過大評価する気持ち悪さ●東京新聞問題について追記●4コマ連続授業●「時かけ」BD●情報を吟味する意味●「コクリコ坂から展」のガリ版●個人の責任は免れない●首相官邸前の抗議デモ●現場との時差6時間●●●ほか


6月1日(金曜日) 紙面私物化する読売の異様

 読売新聞の紙面私物化は目に余る。朝日新聞が報じた「巨人選手の新人契約金報道」が、いつの間にか「元球団代表の清武氏による内部資料流出問題」にすり替えられ、朝日記者の取材源特定と清武氏糾弾に目を血走らせて邁進しているのは、異様としか思えない。常軌を逸している。

 5月27日付の読売新聞は1面で「『清武氏が流出』裏付け」などと大々的に報じ、7面では全面を使って「暴露本出版社へ大量段ボール箱」「巨人流出資料/清武氏、解任当夜送る」「朝日記者に会見翌日から電話」などと大展開。さらに社会面でも「清武氏主張は『真っ赤なウソ』」と書き立てる徹底ぶりだった。

 これが日本で最大の発行部数を誇る新聞のすることか。創価学会が学会への反逆者を、聖教新聞紙面で徹底的に罵倒し続けて叩くのとそっくりだと思った。まともじゃない。


6月2日(土曜日) うれしい悲鳴

 読みごたえのある作文が多くて、昨夜は添削するのが楽しかった。つまらない作文を読んで赤ペンを入れるのは苦痛だけど、面白い作文は添削作業が早く終わる。いつもの半分くらいの時間で完了した。先週あたりから指導の成果がしっかり反映されている。学生が着実に成長しつつある姿を見ることができてうれしい。

 よく書けている作文は印刷して毎週授業で配布し、詳しく講評している。先週までは優秀な作文が少なくて困っていたのだが、昨夜はいくつも候補があって選ぶのに苦労するほど。まさにうれしい悲鳴だ。気分がいい。

 午後から授業。きょうの講義が終わると、よそのクラスの受講生が「読んでほしい」と作文を持ってきた。僕の授業を希望しながら抽選で外れた学生だった。もちろん快諾した。

◇◇

 講義を終えて、大学の近くのラーメン屋でズズズッと太麺を勢いよく口に運んでいると、アニメ「這いよれ!ニャル子さん」のOPが店内に流れた。有線放送か。笑いをかみ殺しつつ、こっそり足でリズムを取りながらスープをすする。気分がいい(笑)。


6月3日(日曜日) なぜこの時期にオウム

 どうしてこの時期に「オウム」なんだろう。素朴な疑問。NHKが大々的にオウム特集番組を放送したのが、そもそもなぜ今なのかよく分からなかった。そしてきょう、特別手配されていた菊地直子容疑者が「情報提供によって」逮捕されたという。ちょっと出来過ぎのような気もする。


6月4日(月曜日) 自民党と大差ない野田政権

 野田内閣改造で防衛相に森本敏・拓大大学院教授。原発再稼働に前のめりの姿勢もそうだが、野田民主党政権はもはや完全に自民党政権と大差なくなった。日本にはろくでもない政党と政治家しか存在しないなあ。予想される今後の政界再編で「大阪のあの男」がのさばってくる可能性を考えると、絶望的とも言える政治状況だ。

 森本氏の防衛相起用は、民間人に政治的責任が取れるのかといった批判よりも、むしろ軍人(航空自衛隊)出身者によるシビリアンコントロール(文民統制)の是非の方が問題だろう。集団的自衛権容認などこれまでのタカ派的な発言にも不安が残る。

◇◇

 3日放送のNHK大河ドラマ「平清盛」の平均視聴率は、関西地区で9・2%。放送開始以来最低の記録で、極めて異例の低さだという(共同、時事など)。だから最初から言ってるじゃん、つまらないからだよ。

 時代考証がしっかりできていることと、ドラマとして話が面白いのとは全く別の問題だ。昨夜は特に、サッカー(W杯アジア地区最終予選)→日曜洋画劇場「宇宙戦争」という番組編成の流れが最強だった不運もあったと思われるが、しかしそもそも「平清盛」の視聴率は毎週確実によくない。NHKによると「大河ドラマの視聴率が10%を割り込むのは異例」だという。何回でも言うが、ドラマとして話が面白くないからだって。


6月5日(火曜日) 原発容認する野田亡国内閣

 駅前のスーパーで買った瓶詰めの「あじの味噌」がめっぽう美味い。「あじのほぐし身を生姜をきかせた味噌だれであえました」とのラベルのうたい文句に惹かれたのだが、ほかほかのご飯にのせて食べるとうまっ! 原材料には清酒や白ごまも。1瓶が80グラムで128円。よい買い物をした。

◇◇

 「野田首相は関係閣僚会合で、日本経済や社会の安定と発展のために原発は引き続き重要だと発言したほか、原発の運転再開の必要性について何度も訴えており、十分な説明を続けている」と藤村官房長官(NHKニュース)。原子力発電の容認を前提とし、原発再稼働は当然だと公言してはばからない野田内閣。福島第一原発の大惨事から何も学んでいないんだな。しかも原発事故はまだ何も解決していない状態だというのに。開いた口がふさがらない。まさに亡国内閣そのもの。民主党議員はなぜ怒らないんだ。


6月6日(水曜日) 「冤罪と裁判」

 多くの冤罪事件で無罪判決を勝ち取っている今村核弁護士が、著書「冤罪と裁判」(講談社現代新書)を献本して下さった。前著「冤罪弁護士」(旬報社)を普遍化し、日本の冤罪と裁判員制度を考える力作だ。自身が担当した冤罪事件を中心に、虚偽の証拠ごとに分類し、誤起訴や誤判の原因を検証。さらに裁判員裁判と裁判官裁判との違いも検討する。意欲的な一冊。


6月7日(木曜日) 「東電OL事件」再審決定

 「東電OL事件」で東京高裁が再審開始を決定した(刑の執行停止も)。この決定に対し、検察側は「到底承服しかねる」と異議申し立てをした。検察は、一審の無罪判決の時と全く同じ展開を再現するつもりなのか。まったくもって検察はストーカーそのものだ。再審開始決定に文句を言うにしても、異議申し立てじゃなく審理の中で堂々と主張しろよ。

 「東電OL事件」に限らず、「名張毒ブドウ酒事件」でも「甲山事件」でも、無罪判決や再審開始決定に対し検察は異議申し立てや控訴を繰り返し、被告人に無駄な時間を延々と強いている。検察のストーカー的行為を止めさせる(無罪判決や再審開始決定に対する上訴や異議申し立てを禁止する)ように法律を改正すべきだ。

 夕方になって、東京高検は横浜刑務所に服役していたゴビンダさんの釈放を指揮した。再審開始決定と刑の執行停止(釈放)に異議を申し立てた東京高検の主張を、異議審を担当した東京高裁の別の裁判長が即座に退けたためだ。珍しく素早く真っ当な判断をした高裁に拍手。しかし上空を飛び回るヘリの音がうるさい。

 再審開始を決定した東京高裁刑事4部の小川正持裁判長は、「別の男のDNAが検出された鑑定結果が、当時の裁判に提出されていれば有罪にはできなかった」とまで断言している。これを受けて、異議審担当の東京高裁刑事5部の裁判長も「ふざけんな、検察はもういい加減にしろ」と即断するしかなかったのだろう。検察が特別抗告もせず、裁判所の判断に素直に従ったのがむしろ意外だった。さすがにこれ以上は無理だと覚って自重したのか。

 それにしてもテレビのワイドショーの関心は、東電OL事件の再審決定よりも、AKB48とオウム高橋容疑者の逃亡劇らしい。扱い方と時間の使い方と力の入れ方が半端ない。今さら言うまでもないけど馬鹿じゃないか。AKBやオウムについて扱う必要がないなどとはもちろん思わないが、伝えるべきニュースの価値判断や基準が狂っているとしか言いようがない。メディアの姿勢と役割としておかしい。異常だ。

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 レンタル大手の「ツタヤ」が来春から佐賀県武雄市立図書館の運営を任され、ポイントのたまる「Tカード」を図書館カードとして導入することに対し、日本図書館協会が懸念を表明しているという(6日付朝日夕刊)。「利用履歴を外部に漏らさないのは公共図書館の原則」との図書館協会の批判を全面的に支持する。図書館の自由を守ることは、思想・表現の自由を守ることに直結するからだ。

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 「クレオパトラな女たち」(日テレ系)は昨夜の第8話で最終回を迎えたが、なかなか興味深く面白いドラマだった。美容整形業界のPRかと思うとさにあらず。医療行為の意味や家族関係に問題提起しつつ洒落た演出が新鮮。打ち切りとの説もあるけど、辻褄の合う形できれいに終わらせたと思う。


6月8日(金曜日) 再稼働を明言した首相と馬鹿記者

 「国民の生活を守るため」と言うのなら「大飯原発を再起動させないというのが私の判断だ」と断言すべきだろう。「次世代の子どもたちのため」と言うなら、やはり「再稼働しない」と明言すべきじゃないか。「国民の生活を守るために大飯原発を再起動すべきというのが私の判断だ」と述べた今夕の野田首相の記者会見は、いよいよもって野田民主党政権の異常さを際立たせた。

 「まず原発再稼働の結論ありき」の野田首相記者会見には、怒り心頭としか言いようがない。安全性が確認されていないものを安全だと言い切り、安全対策がろくに整っていないものを整っていると嘘八百を並べてごまかす首相会見。まるで福島で原発事故が起きる前に、時計の針をぐぐっと後戻りさせるような内容だった。

 おまけに質疑応答での記者の質問が、これまた呆れるほどのお粗末さで論外だった。一番手の読売新聞記者の質問も焦点がぼやけていたが、もっと酷かったのはその次の日本テレビ記者だ。「原発も重要だが消費税関連法案は…」ときた。馬鹿か。それはここで聞く話じゃないだろう。原発再稼働を国民に向けて説明している首相会見で、どうして原発に関係ない質問をするんだ。信じられない。せめて「安全対策が不十分だと指摘されていますが本当に大丈夫なのでしょうか」くらいのことは聞けよ。

 論点そらしに露骨に協力する読売グループに唖然呆然。たぶん読売と日テレが首相官邸記者会の幹事社なんだろうが、いくらなんでもそりゃないだろ。権力監視の役割を果たそうとする「ふり」すらできないボンクラ記者に、情けないというより背筋が寒くなる。


6月9日(土曜日) 休講

 風邪を引いたみたいなので、きょうの午後の授業は休講にした。自分の都合で休講にしたのはこれが初めてだ。まあいっか1回くらい。しかしやっぱり補講をしなきゃならないんだろうか。学生も望んでないと思うんだけどなあ。

 昨夜から頭が痛くて、徹夜で作文添削するのは無理と判断したのだが、たっぷりダラダラと休んだのでほぼ回復した。関東甲信地方が梅雨明け。


6月10日(日曜日) 野田首相の頭こそブラックアウト

 関西電力大飯原発再稼働について、野田首相「万が一、ブラックアウト(停電)が起きるようなことがあれば大変な悪影響が出る。国民生活や経済への影響を考えて、国民生活を守るという視点から判断した。精神論だけでやっていけることではない」と東京都内で講演。原発で大事故が起きたらそれこそ取り返しがつかない悪影響が出ることは念頭にないのか。「精神論」なんてレベルの問題じゃないだろ。この人の頭こそブラックアウト(機能停止)してる。

 さらに野田首相「原発事故の記憶が残っている中で、国民は複雑な思いを持っているとは思うが、私は私の責任で判断をさせていただいた」。原発で再び大事故が起きた場合、この人にいったいどんな責任が取れるというのだろう。無責任にもほどがある。

 一方、福井県原子力安全専門委員会では「地震や津波が襲っても原子炉の安全確保対策はできている」との報告書案が了承された。これを受けて、西川一誠・福井県知事は原発を視察をして運転再開を判断するという。とんでもない茶番劇に開いた口がふさがらない。防潮堤もなく、免震重要棟の建設やフィルターの付いた排気装置(ベント)の設置は3年後。それで安全だとどうして言えるのだろう。

 再稼働を明言した野田首相発言に対し、地元の時岡忍・おおい町長は「立地自治体の立場や現状について踏み込んで話し、感謝の言葉を改めて述べておりありがたい」と述べているが、「立地自治体の立場」とやらは原発利権を享受し続け、この先も延々と利権のおこぼれに預かりたいだけじゃないか。「自分たちの犠牲の上に電力の安定供給が成り立っている」といった主張は、あまりにも都合のいい一方的な言い分ではないか。全くの幻想というよりもむしろ欺瞞そのものとしか思えない。

 そもそも福島第一原発の二の舞いのような大事故が起きたら、原発立地自治体の住民が避難するだけでは済まないということが、どうしていまだに理解できないのだろう。何を根拠に大飯原発が安全だと信じて、原発事故が起きないと明言するのか。雇用さえ確保できればいいのか。安全よりも経済活動を優先させる経済界の姿勢も含めて、原発利権に群がって再稼働を推し進める連中はどいつもこいつも無責任過ぎる。


6月11日(月曜日) NHK世論調査の数字に驚く

 NHK世論調査の結果が衝撃的だ。関西電力大飯原発運転再開への賛否について。「賛成」25%、「反対」32%、「どちらともいえない」38%だった。反対が3割だけって…。電力不足キャンペーンと経済停滞宣伝の成果か、あるいは「喉もと過ぎれば」で1年前の福島第一原発の大惨事を国民はもうすっかり忘れてしまったのか、それとも世論調査の質問の仕方に問題があるのか。

 そしてNHK世論調査のもう一つの質問がこれ。野田首相が「日本の経済や社会全体の安定と発展のために、安全性が確保された原発は運転を再開させる必要がある」との考えを示したことについての受け止め方は、「賛成」31%、「反対」27%、「どちらともいえない」37%だった。賛成31%って本当かよ。いったいこの国はどうなってるんだ。

 まあ普通に考えれば、恣意的な質問によって世論調査の回答を誘導したととらえるべきだろう。「安全性が確保された原発は」ってところが、そもそも事実に反する大ウソなのだから。やはり世論調査の際の質問の仕方に問題があるように思えてならない。質問方法によって回答結果が変わってくるのは、世論調査を実施する際の常識だ。だからこそ質問の文言には細心の注意を払うべきなのだが。

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 大飯原発再稼働について「万が一、ブラックアウト(停電)が起きるようなことがあれば大変な悪影響が出る。精神論だけでやっていけることではない」と述べた野田首相。この人の頭こそブラックアウト(機能停止)してる。何回でも声を大にして言うが、野田首相はとんでもない亡国首相だ。


6月12日(火曜日) 政府のサボタージュ

 福島第一原発事故で、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)による拡散予測結果の信頼性に気付いていたにもかかわらず、文部科学省は福島県浪江町の住民に予測データを公表せず、放射線測定(モニタリング)の地域選定に利用していた(NHK、時事、東京)。これって朝日新聞が連載「プロメテウスの罠」でとっくに報じた話だ。なぜ今ごろ。

 しなくていい大量被曝をすることになってしまった浪江町民。生死に関わる必要不可欠な重要データを公表しなかった日本政府の不作為、というよりもむしろ故意にサボタージュした結果による被曝だろう。今ごろになって文科省が検証報告書を出すことも含めて、まさに国家犯罪だと言っていい。

 付け加えると「パニックを防ぐために(公表しなかった)」という言葉が、適切な情報提供(公開)をサボタージュする言い訳(方便)に都合よく使われているように思う。しかし判断する主体はあくまでも住民であるべきで、行政や政治家が情報提供の内容を吟味して取捨選択するなど、おこがましいにもほどがある。

 公表すべき判断材料を出さずに住民をみすみす被曝させてしまった結果は、いったいだれがどのように責任を取るのだろう。組織の無責任体制という隠蔽システムによって、いつものようにうやむやにされる可能性が大きい。

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 経済危機の影響や財政悪化などから、ノーベル賞の賞金額を今年から20%削減する、とノーベル財団が発表した(朝日、読売、ロイターなど)。どこもかしこも、本当に世知辛い世の中だ。


6月13日(水曜日) 電子書籍化

 日本評論社から「電子書籍化に伴う著作権再使用許諾のお願い」が届いた。アマゾンと電子書籍配信契約を結んだので、書籍をデジタル化して販売する準備に入るという。既にやっていると思っていたので意外。ほかの複数の出版社からは随分前に連絡があった(と記憶している)。もちろん承諾する。


6月14日(木曜日) 「除染」って何だろう

 【メモ】放射性物質に汚染された土砂に苦しむ福島から悩める報告メールをいただいた。それに対する僕からの返信メール(一部加筆修正しました)。

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 梅雨に入って、じめじめした鬱陶しい日が続きますね。お元気ですか。以下、いただいたメールへの感想です。

 「除染」といっても、放射性物質が完全に除去されるわけではなく、A地点からB地点に「移動」するだけですよね。宇宙戦艦ヤマトの「コスモクリーナー」とは全く違うのですから、「除染」という言葉自体に大きな問題(誤解)があるように思います。

 そして、大量の土砂を別の場所に移動したあとも、保管場所の確保が難しいだけでなく、保管した土砂そのものの安全性に、不安が残るのも当然かと思います。

 少しでも放射性物質を少なく(薄く)するために、「除染」したい(表面を削りたい)という現地の人たちの気持ちは分かるし、汚染された土砂やガレキを「移動」してほしくないという移動先の心情も分かる。どちらも被害者であることは、間違いのない(間違えてはならない)事実です。

 無駄な論争やいがみ合いや押し付け合いをする必要など本来はないはずなのに、被害者同士がまさに「分断」されてしまっている現実。そのことが本当にやりきれないですね。原発を推進してきた政府と電力会社と経済界の罪の大きさを改めて感じます。

 だったらいったいどうしたらいいのか、と言われると名案はないのですが…。とりあえず、汚染物質の拡散はできるだけしないことが、まず重要ではないかと思います。その上で、近場のどこかに集積地を設ける必要はやはりあるでしょう。もちろんそのための費用は責任集団(政府と電力会社)にしっかり負担させるべきですし、新たな利権構造を生じさせないために、かかる費用の金の流れには透明性を持たせなければいけません。本当に難しい問題です。


6月15日(金曜日) オウムに狂喜乱舞する異様な国

 「原発40年で廃炉」の最低限の制限を撤廃し、自民党の求めに応じて20年の延長を認める(民自公の3党合意)ってどういうことだよ。20年の延長って…。とても正気の沙汰とは思えない。そもそも原発の耐用年数は30年だったはずじゃないか。もうなんでもありなんだな、この国って。

◇◇

 深夜(15日未明)の川崎市内の街角に、ケータイやiPhoneやデジカメを片手にかざした野次馬が、わらわらと山のように群がってくる気持ち悪さ。それをインターネットで中継しツイートするおぞましさ。なんなんだろうこの国って。<逃走中のオウム真理教元信者・高橋克也容疑者逮捕の噂に連動する人々>

◇◇

 午前10時過ぎに東京・蒲田の漫画喫茶でオウム高橋克也容疑者逮捕。世紀の大ニュースとばかりに、定時ニュースの5分枠を拡大して「高橋容疑者逮捕」を延々と20分以上も流し続けるNHK。もっと伝えるべきニュースはほかにあるだろう。大飯原発再稼働についてそれくらい報道しろよ、と思う。

 結局、午前10時の定時ニュースを5分枠から30分まで拡大して、高橋容疑者逮捕を延々と繰り返し流し続けたNHK。この国はどうかしてる。この後の11時や正午のニュースもこの話で一色になり、民放も大騒ぎを続けるのは容易に想像できる(→その通りになった)。なんておめでたい国なんだ。

 フジテレビの高橋容疑者逮捕の現場中継。テレビ記者「たくさんの人でにぎわっている様子が見られます」だってさ。「にぎわってる」って…。馬鹿じゃないか。お祭りでもあるまいし。でも野次馬やテレビ局スタッフにとっては、お祭り騒ぎか。さすがフジテレビだ、本音がポロリ。正直過ぎる。

 NHKに続いて、TBSが「報道特別番組」と銘打って、オウム高橋容疑者逮捕のニュースを延々と流し続ける。予想通りの展開に苦笑するばかり。

 正午のニュース(全国版)でも、トップ項目で「オウム高橋容疑者逮捕」に25分以上を費やしたNHK。どうしてほかのニュースをすっ飛ばしてここまで力を入れるんだろう。オウム関連のNHKのはしゃぎぶりは異様としか言いようがない。オウム特集番組を何回も流すなど、力の入れ方が尋常ではない。

 テレビ朝日の午前11時45分からのANNニュースでは、オウム高橋容疑者逮捕を5分ほど伝えた後に「ゴビンダさん午後に出国へ」と伝えていたが、NHKはスルーだった。東電OL事件で再審開始決定が出て、15年ぶりに釈放されたゴビンダさんのネパール帰国が、NHKニュースでは霞んでしまったことになる。ニュースの価値判断がこれでいいのかと疑問視せざるを得ない。

 夕方と夜のニュース番組で、毅然とトップ項目で「大飯原発再稼働」問題を取り上げるテレビ局はないものかと思う。まず間違いなくないだろうけど(→自民党総裁の宣伝番組同然だった「NW9」を除いて予想に間違いはなかった)。

 大学の授業で学生に話すネタがまた増えてしまった。メディアの情けない実態を伝えるのは本意ではないし悲しいが、本来のジャーナリズムとかけ離れた現実が多いので、ネタにせざるを得ない。高橋容疑者逮捕での大はしゃぎぶりといい原発再稼働報道のサボタージュといい、特にテレビはあまりにも酷過ぎる。


6月16日(土曜日) 原発再稼働決定に怒り

 オウムの高橋容疑者逮捕の見物に1000人近くの野次馬が群がる様子は、ヘリを飛ばして中継し大々的に実況するのに、原発再稼働に抗議して首相官邸前に集まる1万人の群衆はスルーする。日本のテレビ局のこの醜態は、どう考えても異常としか思えない。

 午後から授業。2クラスの講義で原発再稼働とメディアについて30分ほど話をした。「オウム容疑者逮捕でテレビ各局が特番を流し続ける一方で、原発再稼働に向けた手続きが着々と進み、再稼働に抗議する群衆の姿は電波に乗せない。この現実をよく考えてほしい」。教室は私語一つなく真剣な眼差しで聴き入ってくれた。授業が終わってから、メディアの有り様に対し疑問を訴える質問もあった。授業時間を割いて、あえて横道にそれた話をしてよかった。

◇◇

 それにしても、野田内閣が大飯原発再稼働を正式決定した後で、首相官邸前で抗議する人たちの姿を映像で伝えるNHKニュースには、ただただあきれるばかりだ。遅いよ。流すなら昨日のうちに流すべきだろう。オウムや自民党総裁の宣伝まがいの番組作りにかまけているうちに、安全対策を無視した原発再稼働が着々と進められるこの国の異常さ。

 野田首相も福島県知事もおおい町長も、大飯原発のある若狭湾に東日本大震災級の地震や津波はないと思って、再稼働に突き進んでいるのだろうが、それは実に危険なギャンブルだと言うほかない。福島と同じ過ちを繰り返そうとしている。やはりあの大惨事をもう一度経験しないと、原発事故に恐怖して心から震撼することはないということなのか。浅はか過ぎる。

 福島県の西川知事「主な電力消費地である関西の生活と産業の安定に資するため、同意する決意を伝えたい」。野田首相「知事の決断に深く感謝したい」。三流役者のとんだ茶番劇に怒りが込み上げる。史上最低の首相だと心の底から思う。もはやそんな言葉しか浮かんでこない。


6月17日(日曜日) 価値判断できないメディア

 原発再稼働に抗議して首相官邸前に集まった1万人の群衆を、テレビ各局をはじめ日本のマスメディアがスルーしたのは、報道規制があったからでもなく、あふれかえるニュースの洪水の中で記者やデスクが身動きできなかったからでもない。オウム容疑者逮捕が最重要ニュースだと考え、原発再稼働よりオウムの方が重要だと位置付けている記者やデスク、ディレクターが多いのが原因です。つまり、伝えるべき伝えなければならない大事なニュースは何か、という価値判断がおかしい(まともにできない)記者が多数派だ(全部ではない)ということです。<読者の質問に対する回答から>

◇◇

 野田という男を国会に送り出した選挙区の千葉県民は、自らの不明を深く恥じ、その上で怒りの声を結集すべきだ。安全性が何ら確保されていない原発を安全だと言い募り、事実をねじ曲げて国民の生命と財産を危険にさらす野田という政治家を、千葉県民(千葉4区の船橋市民)は責任を持って落選させてほしい。

 野田豚首相も西川ぬらりひょん知事も、根拠のない希望的観測に基づいて大飯原発は安全だと思い込んでいるに過ぎない。でもそんなものは幻想であることは、福島原発の大惨事が証明している。わずか1年ほど前に経験したばかりなのに、地震も津波も起きないから原発も安全だなんてあり得ない。神経を疑う。


6月18日(月曜日) 授業でたっぷりと

 午後から授業。先週土曜日の講義(1年生対象の文章講座)と違い、きょうはメディアのあり方が講義のテーマなので90分間たっぷりと、権力監視機能を果たしていないテレビの現状と原発再稼働について話をした。もちろん、オウム容疑者逮捕に群がる野次馬を延々と中継する一方、首相官邸前で再稼働に抗議する群衆はスルーした問題も取り上げた。

 きょうの授業は2〜4年生対象。僕の別の講義を昨年受講したという学生も。授業終了後の学生たちの感想から。「高橋容疑者の逮捕を朝から晩まで流していたテレビを、私もおかしいと思いながら見ていました」「私も原発再稼働の方が重要なニュースだと思いますが、首相官邸に抗議の人が1万人も集まっていたなんて知りませんでした」「オウムの逮捕は知っていたけど、原発再稼働が決定したことは授業で聞くまで知らなかった」

 学生の感想続き。「私たちが正しく判断するためにメディアリテラシーが必要だと思う」「これまでずっと情報が隠されていて気付かなかったと考えると怖い」「もやもやした感じがずっと胸に引っかかっていたが、先生の話を聞いてすっきりした」「とても勉強になった。来週も楽しみです」。手前味噌だがうれしい。

 メディアが原発再稼働への抗議をスルーしたのは、ニュースの価値判断がまともにできないボンクラの記者やデスクやディレクターが、圧倒的多数を占めているから。業界自身の情けなさが最大の問題なのだが、その辺のことも今日の授業では解説した。私語も居眠りもほとんどなかったので、それなりに意味のある授業だったように思う(自画自賛?)。

◇◇

 TOHOシネマズで、7月14日に公開される映画「ヘルタースケルター」の原作コミック試し読みブックをもらった。芸能界の頂点に君臨するトップスターりりこは全身整形。しかし手術の後遺症がりりこを蝕み始める…といったちょっと怖くてスリリングな内容だが、お試し漫画、なかなか面白いじゃないか。さすが岡崎京子の原作漫画だけある。そして映画の主演は沢尻エリカ。これはもう見るしかないな(映画はR15+指定作品)。公開日の14日(土曜日)は1000円均一料金なので、授業が終わったら速攻で見に行かなくては。


6月19日(火曜日) 図書館の受難

 台風4号が首都圏直撃。午後9時過ぎに風雨が強くなって、午後10時ごろから暴風雨状態になった横浜の自宅。家が揺れるかのような荒れ具合だった。天気予報ぴったりのタイムテーブルに驚く。風の吹き荒れるゴゴーッという音が怖いくらいの大きさで、テレビの音声が聞き取りにくい。映像に乱れはなかった。

 午前1時を過ぎると暴風雨がピタッと止んだ。文字通りピタッと停止。「ハヤテのごとく!」を見ている間ずっと静かだったのでとても助かる。何事もなかったかのように静まり返っているのがなんとも不思議だ。猛スピードで駆け抜けていった台風4号。もう吹き返しも来ないのかなと思っていたら、午前2時半過ぎに再び強い風が…。しつこい。

◇◇

 大阪の橋下市長と松井知事が、大阪市北区の中之島図書館を廃止し、別施設として活用する方針を表明。橋下市長「あんなところに図書館を置く必要はない」。集客施設などに活用する意向だという(共同)。「あんなところ」って…。橋下というのは本当に貧相でかわいそうな人物だな。幼いころから図書館を利用して本と戯れるとか、文化的空間に慣れ親しむといった経験がないのだろう。

 実用書や法律関係の実務書以外は、まともに本など読んでなさそうな橋下市長だが、薄っぺらくて声だけが大きい存在は最悪だ。図書館廃止後は、公募(入札?)による商業施設誘致を想定しているらしい大阪維新コンビ。中之島のような一等地に図書館があるのは無駄で、金儲けの施設こそふさわしいという発想らしい。一等地のあの場所に公共図書館が存在してこそ、幅広く市民に利用する機会が提供されて社会的意味が大きいのに。

 大阪市の中之島図書館廃止の方針にしても、レンタル大手ツタヤによる佐賀県武雄市立図書館の運営とポイントカード導入(6月7日付「身辺雑記」参照)にしても、そもそも公共図書館の存在理念を全く理解していないことが問題の根底にある。公共図書館は表現の自由と民主主義の基本だ。だからこそ「社会教育」として位置付られている。利潤優先の運営や企業経営的な発想は馴染まない。


6月20日(水曜日) 東電「最終報告書」の図太さ

 横浜駅前の居酒屋で、毎日と共同と神奈川の元記者の先輩方3人と飲んだ。楽しい酒宴で3時間があっという間に過ぎた。それにしても駅前の一等地なのに客が少ない。静かで落ち着いて飲めるからいいけど、ガラガラじゃないか。世の中の不景気ぶりを如実に表している。タクシー業界も同様。利用客がさらに少なくなって青息吐息だそうだ。

◇◇

 東電事故調が福島原発事故の最終報告書を公表。事故当時の菅直人首相が東電本店で「激昂して激しく糾弾、撤退を許さないことを明言した」発言について、東電の報告書は「職員の多くが憤慨や戸惑い、意気消沈もしくは著しい虚脱感を感じた」と記述する。いやいや、むしろ東電の無責任な態度に対してこそ、日本国民の多くが憤慨し、戸惑いや著しい虚脱感を感じたと思うが…。

 そして報告書は、全面撤退する考えは全くなかったとした上で、「原子力プラントが危機的状況にあっても、当社社員は身の危険を感じながら発電所に残って対応する覚悟を持ち、対応を続けた」と続ける。よくヌケヌケとこんなことを書いて公表できるなあ。神経の図太さに心底びっくりした。


6月21日(木曜日) 東京新聞を過大評価する気持ち悪さ

 原子力基本法と原子力規制委員会設置法に「我が国の安全保障に資する」の文言が盛り込まれた。論外だと思う。自民党が主導し、自民党の要求をあっさり受け入れ、すべて丸飲みする民主党政権によって、どさくさに紛れて原子力の軍事利用への道を認めることになってしまった。いったいだれのための何のための原子力か、それが明白になったことだけは確かだ。

 ところでこのニュースについてもそうだが、「取り上げたのは東京新聞だけ」「さすが東京新聞」などと手放しで東京新聞を絶賛する人が多過ぎて気持ち悪い。朝日新聞も1面と4面で報じているのに、事実確認もせずに思い込む。自分にとって都合のいい期待通りの事象しか目に入らない(目に入れない)というのは怖い。

 東京新聞絶賛の声への違和感をもう一つ。東京新聞が「応答室だより」のコーナーに、「再稼働抗議デモの不掲載について」と題する47行のコメントを出した。これまた多くの人から「さすが東京新聞」と評価されているが、そうかなあ。

 「取材を担当する部署内の連絡ミスで現場に出向いた記者がいなかったのです」と東京新聞の読者応答室長は説明するが、現場は首相官邸のすぐ前で国会記者会館の目の前だ。出向くとか出向かないといったレベルの話ではないだろう。何が行われているか目を向ければだれでもすぐに分かるし、大きな声も聞こえてくる。完全にスルーして、ニュースとして取り上げる発想すらなかったのだ。オウムの高橋容疑者逮捕に全力を傾注し、ニュースの価値判断ができなかったのが最大の原因で、そもそも記者やデスクの感性と問題意識欠如の問題ではないのか。読者応答室長のコメントには「オウム」の「オ」の字も出てこなかった。

 東京新聞を過大に評価し、やたらと持ち上げる人々には以前から違和感があった。しかし読者も自分に都合のいいことしか見ようとせず聞こうともしないし、伝えるメディアの側も都合のいいことしか言わないのだから、どっちもどっちか。まあ双方が構わないと考えているのなら、それはそれで幸せかもしれない。他人がとやかく口を差し挟む話ではないとも言える。

 ただし、事実に基づかない話をもっともらしく吹聴する行為は、やはり看過することができないので、気付けば地道に指摘する必要はあるだろう。いちいち指摘するのは面倒だし嫌われそうだけど、ウソも100回繰り返せば本当になるというから。

◇◇

 馬鹿過ぎる「SAPIO」の記事。<橋下氏が独裁者のようになる可能性はない。なぜなら彼は弁護士だからだ。弁護士は「ひとの話を聞き」「ひとの利益を考え」それを実行するための「法律的手段を考える」のが仕事で、橋下氏もそれをやってきた。議論をせず独断で法律を定めていくのが独裁だが、ひとの話を聞くのが仕事の弁護士は、いちばんそうした独裁者になりにくい>

 どこのだれだろう、こんな頭の悪い記事を書いたのは。詭弁を通り越して完全にイカレてる。びっくりする。

【SAPIOの記事】→ http://www.news-postseven.com/archives/20120617_118171.html

 おめでたい頭にしてもほどがあるが、しかしコメントした教授も記事にまとめた記者も、こんな原稿を通して掲載したデスクも、どいつもこいつもまともじゃない。


6月22日(金曜日) 東京新聞問題について追記

 政局について官邸からレポートするNHK記者の中継で、背後からデモのシュプレヒコールが小さく聞こえていました。中継だったので背景の音声までは消せなかったようですが、それくらい目と鼻の先ということですよね。あの一帯には各社各局の記者が何人も詰めているので、原発再稼働に抗議する1万人のデモが目に留まらない(耳に入ってこない)訳がありません。東京新聞の「再稼働抗議デモの不掲載について」という「釈明記事」は「言い訳」だと思います。

 むしろ、恥の上塗りをした醜悪な酷い釈明記事だと僕は思いました。「私たちの問題意識が希薄で薄っぺらだったのでスルーしました。オウムの方が大事だと判断しました」とはっきり認めたら、それこそ「さすが」と評価されたのに。

 東京新聞が「原子力基本法の改正問題」について詳しく書いたのはいいと思うんです。僕もそれは高く評価しています。しかし、事実確認もせずに「東京新聞だけが書いた」「ほかはどこも書いていない」「朝日を止めて東京を購読しよう」などと持ち上げて、都合のいい思い込みを拡散するのは危ういと思うんですよね。

 ネット上で広まっている「マスゴミはデモを一切報道しない」といったデマにしても同様です。報じられる際の扱いの大小はあるけれども、「デモを一切取り上げていない」というのは事実に反します。再稼働に抗議して首相官邸前に1万人が集まったデモについて言えば、テレビ各局や東京新聞など大半のメディアは全く伝えませんでしたが、朝日は小さいながらも記事にしていました。

 朝日の宣伝をするつもりは毛頭ありませんが、しかし事実確認をせずに都合のいいように思い込み、事実に反することを吹聴して回るのは実に危険です。それだと、政府や東京電力や御用学者が「原発は絶対安全だ」「原発事故は絶対に起きない」「放射能汚染は心配ないから安心しろ」とウソ八百を並べ立ててきたのと何ら変わらないではありませんか。事実に基づいて批判し議論しなければ、ものごとは前に進みません。味方であるはずの仲間を混乱させ分断させるばかりか、味方を敵に回してしまうことにもなりかねないでしょう。(以上、フェイスブックへの書き込みに一部加筆修正)


6月23日(土曜日) 4コマ連続授業

 きょうは通常講義に加えて補講もやったので、朝から夕方まで4コマぶっ続けで授業をした。4講時連続なんて初めての経験だけどこりゃ疲れるわ。こんなの毎日やってる先生は大変だなあ。それにしても大学講師はあくまでアルバイトなのに、働かせ過ぎだっつーの(苦笑)。

 徹夜明けで、90分授業を4回連続はさすがにぐったり。でも学生の成長ぶりがうかがえたので、そういうのを目の当たりにするとほんの少しだけど疲れも吹き飛ぶ(ような気がする)。

 もちろんすべての学生・生徒に伝えたい事実や思いが伝わるわけではないし、そんなことはそもそも無理な話だ。それは授業だけでなく、自分が書いた記事の読者についても同じことが言える。しかしそれでも、自身の信じることを事実に基づいて、できるだけ分かりやすく伝えるという作業は続けていきたいと考えている。遅々とした歩みで微々たる力かもしれないが、期待外れにならないように努力したい。


6月24日(日曜日) 「時かけ」BD

 ブルーレイ再生装置がないのに、アニメの<時をかける少女【期間数量限定生産版】Blu-ray>をAmazonで予約してしまった。時かけは大好きな作品だからDVD版はもちろん持っている。それでもやっぱりBD(ブルーレイディスク)も買ってしまう。たぶん来月発売のトトロのBDも買うだろう。再生装置かあ…思案中。

 ちなみに、大林宣彦監督の原田知世版「時かけ」は映画館やテレビで何回も見ている。仲里依紗版は先日、ヨドバシカメラに完全生産限定版DVDがなぜか1つだけあったので、迷わず速攻で購入した。忙しくてまだ見ていないのだが(涙)。言うまでもないが、原作小説は中学時代からの愛読書の一冊で、NHK少年ドラマシリーズ「タイムトラベラー」も大好きな作品だ。


6月25日(月曜日) 情報を吟味する意味

 午後から授業。きょうの講義のテーマは「情報操作とジャーナリズム」。最初は私語もあったが、すぐに静まり返って興味深そうに話を聞いていた。権力からの圧力に毅然とした態度が取れず、自主規制してしまうNHKの体質を紹介。内外からの圧力や自主規制に加えて、記者の問題意識の欠如が絡み合うことで、伝えるべき事実を伝えないメディアの現実を解説した。

 「記者クラブをなくせば問題はすべて解決する」という主張に、僕はくみしない。権力と癒着する記者はもちろん論外だが、団結して権力に対峙して情報公開を迫るべきメディアが、本来の職責を果たしていないことが問題の本質だと考える。講義ではそんなことも話し、情報を鵜呑みにせず吟味する意味を強調した。できるだけ分かりやすく、対立する論点についても公平に紹介しながら進めた。

 受講した学生たちの感想から。「今回の授業で、やはり主権者である私たちが無知では社会はよくならないことが分かりました。テレビ・ネット・新聞など情報を受け取る手段はたくさんあって、何が正しくて何が間違っているか判断が難しいが、自分で考え判断できるようにならないといけないと感じました」

 学生の感想続き。「この講義を受けていると、しみじみうなづけることが多く勉強になる。高校まではメディアが発信することはすべて事実で正しいと思っていたが、この講義を受けて、報道機関にも表と裏があることを知った。政治家から圧力を受けて自主規制している放送局もあるのには驚いた」

 「きょうの講義を聞いて、自分たちが情報をしっかり見分けなければならないと感じた。だれのために、何のために、何を伝えるのかということを、すべてのメディアが考えて報道してほしいと強く望む」「自主・独立・自立の3つが報道機関の真の姿として成立していれば、どんなに自由な取材と報道ができるだろう。圧力や自主規制によって、政府や企業にとって都合のいい情報しか入ってこない現状の中で、私たちが知らなければならない情報が数多くあるんだろうなと思った」

 「記者クラブの存在意義はよく分かった。しかし記者クラブに所属する記者が情報の命運を握っている。この人たちが権力と癒着して真実を書かなくなってしまった時の恐ろしさを想像してしまい、ぞっとした」「ツイッターのデマ情報拡散は私も体験した。あまりに馬鹿げた内容だったので見抜くことができたが、ネットの世界は自由過ぎるので、あいまいな部分に注意して情報を取捨選択していきたい」

 中国人留学生からはこんな感想があった。「NHKや民放など放送に政治介入があるのは中国も同じだと思う。中国のCCTVは中国の国営テレビです。中国の政治課題に関する一切の放送は禁止されています。地元の放送も同じです」。講義では中国や北朝鮮のメディアについても少し触れたが、この学生も帰国したら日本と違った生活に戻ることになって大変だろうなと思う。心が痛む。

◇◇

 素朴な疑問なんだけど、小沢派の国会議員たちは、消費増税にこれだけ必死に反対し抵抗している情熱とエネルギーを、どうして野田首相が原発再稼働を決定した際に示さなかったのだろう。というよりも今からでも遅くないと思うのだが。消費税問題は重要だが、原発再稼働があっさりなのは納得できない。

 政局のニュースばかりでうんざりする。ガラガラポンで遅かれ早かれ政界再編されるだろうが、民主党政権には心底がっかりだし、野田亡国内閣には怒りを覚えるし、原発(核開発)推進政党の自民党は論外で…。宗教政党や現実感のない一点突破の政党は全く話にならない。いざ総選挙になっても投票すべき(したい)政党がないのが最大の不幸だ。どうしたらいいんだよ。

◇◇

 東急沿線ライフスタイルマガジン「田園都市生活」夏号(vol.45)の特集が、「中目黒・池尻大橋」だったので思わず買ってしまった。高3まで住んでいたので懐かしくて。もちろん街並みはすっかり変貌し見る影もないのだが、名店カフェ紹介や厳選ランチガイドなどの記事を眺めていると、久しぶりに足を運んで散策してみたくなった。

 よし決めたっ! 夏休みに入って授業が終わって、原稿の締め切りもクリアして、雑用も全部片付いたら、池尻大橋〜東山〜中目黒を一眼レフカメラを片手に散策しよう(たぶん)。あのころの店と街並みを探す旅に出るのだ(たぶん)。


6月26日(火曜日) 「コクリコ坂から展」のガリ版

 ぶち壊してめちゃくちゃにして、引っ掻き回すのが生き甲斐なんだな小沢さん。いつでもどこでも同じことの繰り返し。小沢さんと何かやろうと一緒になった時点で、民主党がこうなる結末は見えていたと言える。もはや民主党は分裂というよりも、崩壊に向かって秒読みに入っている状態だ。

 個人的に消費増税には反対だが、震災復興や原発事故の対応で国に金がないのは事実で、事情が変われば公約変更もあり得るだろうとは思う。しかし、安全性を無視して平然と原発を推進する野田亡国内閣も自民党も論外。そして、大飯原発再稼働決定の際にダンマリだった小沢一派も全く信用できない。そんなこんなで、投票先がなくて困っている有権者は多いはず。

 「謝罪なければ審議拒否…民主の大量造反で自公」(テレビ朝日系ANN)。余計なお世話だろう。難癖つけて最初から民主党を追い込む気満々じゃないか。まあどっちもどっちだから、さっさと分裂して解散してほしいけど、本当はこの国にそんな余裕などないはずだと思うのだが。

http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20120626-00000069-ann-pol

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 横浜赤レンガ倉庫で開催中の「コクリコ坂から展」を見てきた。宮崎駿や息子の吾朗のほか、「コクリコ」のキャラクターデザインを手がけた近藤勝也によるイメージボード、スケッチ、背景画などがずらりと並ぶ。ジブリの水彩画はやはり心が和む。平日ということもあって結構空いていた。あす27日午後6時まで。入場料は一般500円(高校生以下無料)。

 「コクリコ坂から展」には、作品に登場する「カルチェラタン新聞」と謄写版(ガリ版)印刷機の展示も。僕も高校時代にガリ版で新聞を作っていたので懐かしい。ただし展示されているのは1枚ずつ手で謄写する旧式で、僕が使っていたのは当時では最新式の自動印刷機。学校の備品を新聞部で使わせてもらって、毎号1200部(月刊)を印刷した。

 ちなみに新聞部の予算は年間わずか3万円。わら半紙の費用だけで済むから、活版印刷ではなくガリ版だったのだ。僕が部長になって読売新聞から賞をもらったこともあって、次年度予算は少しアップして5万円になった(苦笑)。ワープロの登場はそれから10年後で、パソコンが普及するのはさらに数年後だ。時代だよなあ。


6月27日(水曜日) 個人の責任は免れない

 陸山会事件をめぐる虚偽捜査報告書問題で検察当局は、報告書を作成した元東京地検特捜部の田代政弘検事を不起訴処分にした。いかにもお手盛りの軽い処分で幕引き。こういう事件こそ検察審査会で審査すればいい。「組織防衛のトカゲの尻尾切り」「個人責任にするな」などとコメントする輩がいるが、たとえ組織ぐるみだとしても個人の責任は免れない。しっかりと徹底的に個人の責任も追及すべきだ。個人の責任が問われずにうやむやにされてしまうから、懲りずに同じことが繰り返されるのだ。原発問題と同じ。

◇◇

 福島第一原発1号機の建屋内で、毎時1万300ミリシーベルトの放射線量を検出。放射性物質を含む水が漏れているのが原因とみられる。1000ミリシーベルトを全身に浴びると吐き気などが生じ、1万ミリシーベルトは致死量に当たる(毎日)。原発再稼働なんてとんでもない。電力各社は理性的に判断してほしい。

 沖縄を除く全国9つの電力会社の株主総会も、つつがなく切り抜けたみたいだが、福島のこうした事態を放置して原発を再稼働しようとする神経が理解できない。事故対応や廃棄物処理など費用対効果(経済効率)から判断しても、どう考えても原発は割に合わないと思うのだが…。


6月28日(木曜日) 添削終わらず

 学生の作文をしこしこと添削する。本日中に終わらせようと思ったがやはり無理だった。あすに持ち越し。


6月29日(金曜日) 首相官邸前の抗議デモ

 徹夜明けで朝から東京地裁立川支部。冤罪事件の公判を傍聴取材し、今村核弁護士の弁論に耳を傾ける。検察官の被告人質問があまりにあっさりだったので拍子抜け。検察官の自信の現れか、本人のキャラクターか、それとも立証をあきらめたかと、今村弁護士も戸惑った表情だった。今村弁護士が主任弁護人になってから、裁判官の対応は明らかに変化している。立川市中央図書館で少しだけ仮眠したり、四谷駅前の喫茶店で作文添削したりしながら時間調整し、夕方から首相官邸前の原発再稼働抗議デモを取材。

◇◇

 首相官邸前の原発再稼働抗議デモ。地下鉄の国会議事堂前駅から地上に出ると路上は群衆で埋め尽くされ、「再稼働反対」の叫び声が響き渡る。身動きできないどころか立錐の余地もない。次々に参加者が増えるので警備の警察官は次第に押され、午後7時過ぎには歩道だけでなく車道も人波で覆われた。

 抗議デモの人波は、首相官邸前から経済産業省前のテント村まで続いた。主催者発表によると、この日の参加者数は20万人だという。うーん、それは多過ぎじゃないかなあ。友人の週刊誌編集長の見立ては12万人、共同通信記者は7〜8万人との見積もり。僕の大ざっぱな計算では官邸前が5000人で、そこから類推して全体では5万人くらいかな。警察発表は2万人弱(1万7000人)。いずれにしても、これだけ多くの人が首相官邸前に自然発生的に集まって、抗議の声を上げている事実はとてつもなく大きい。

◇◇

 道路を挟んで首相官邸のすぐ前にある国会記者会館。路上は原発再稼働の抗議デモ参加者であふれ返った=写真。ここに詰めている政治記者が、毎週行われている再稼働抗議デモを知らないわけがない。記者会館の窓から眼下のデモを「興味深そうに」のぞいている記者が何人かいた(苦笑)。屋上にも数人の記者がいるが、こちらは全体像を把握するために俯瞰し撮影していたと思われる。

 それぞれの思いやメッセージを書いたプラカードを手にしたデモ参加者の人波。「原発再稼働反対」のシュプレヒコールが鳴り止まない=写真。首相官邸前の道路はついに群集で占拠され、官邸のすぐ前まで迫った。

 官邸前の人並みの中で注目を集めていたのは、反原発ガールズの皆さん=写真。元気いっぱいに再稼働反対を訴え続け、抗議デモに華を添えていた。

 官邸上空をチャーターしたへりで飛んでデモの様子を見た後、午後7時半ごろに官邸前に駆け付けたという俳優の山本太郎さん=写真。「みんなのこの声を粘り強く伝えていかなければ」。気さくな笑顔で答えてくれた。


6月30日(土曜日) 現場との時差6時間

 昨夜の首相官邸前デモの写真は、帰宅して自宅のパソコンからツイッターやフェイスブックにアップした。デジカメのデータをパソコンに取り込む作業も必要なので、現場からスマホなどモバイル端末で投稿する人たちとの時差は6時間以上ある。スマホなんてそんな文明の利器は持ってないし、たぶん使いこなせません(汗)。

 午後から授業。きょうの横浜は暑かった。節電実施中とやらで教室のエアコンの設定温度は28度。全館自動制御だから勝手に設定温度を下げることは不可能。学生は我慢強いなあと感心してたら、ちゃっかり窓を開けて外気を取り入れていた。さすがだ(笑)。廊下や外の方が涼しいんだよね。


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