身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2013年10月1日〜10月31日

●消費増税8%雑感●小泉元首相の脱原発に期待●的外れな「国民目線」●どっちがジャーナリズムか●教組支部教研で講演●「降りる人が先でしょ」●当たり前の判断●月刊「創」に教科書介入問題を執筆●NHKの不思議●土肥裁判の最高裁要請行動に同席●ニュース番組の自覚なし●何だこのラノベドラマ●追加原稿を送信●大型の台風26号●休講●新刊の初校ゲラ●市民にできること●もっと聴きたい●良貨が悪貨を駆逐する●再びペンタックス●サンデー毎日に「三鷹バス事件」●裁判官の処分なぜ匿名●「あとがき」出稿●NHK経営委員の露骨な人事案●手帳とカレンダー●少数意見を発掘●「三鷹バス痴漢冤罪事件」控訴審●恥知らずな原発輸出●何が「皇室の政治利用」か●●●ほか


10月1日(火曜日) 消費増税8%雑感

 ある地方都市の市議会議員と、横浜市内の蕎麦屋で2時間近く話す機会があった。人権問題や教育問題についての筋の通った考え方に共感する。狭い範囲の同じ仲間と同じような話を繰り返すのではなく、関心のない幅広い層に訴えるにはどうすればと悩む姿勢にも共感。僕にできることがあれば協力したいと伝えた(大したことはできないけど)。

◇◇

 安倍首相の消費増税8%の記者会見で思ったこと。「長州」って何回言えば気が済むんだよ。そもそも明治維新から百年以上も経って、いまだに「長州」もへったくれもないだろう。どこまでも徹底して時代錯誤な人だ。

 「消費税8%だと計算が面倒だよね」と知人。そういうのが厄介だから、「もう10%にしてくれていいよ」となってしまうのではという話になった。街の声でも「買い物の計算がややこしい」「価格表示が分かりにくくなる」との声は多い。消費増税分の使われ方よりも、まずは目先のことに気持ちが向く庶民。残念ながらそんなものかもしれんね…。


10月2日(水曜日) 小泉元首相の脱原発に期待

 3・11以降は考え方を改めて、脱原発の主張を続けている小泉元首相。あれだけの大惨事を経験したら当然だと思うが、そもそも放射性廃棄物(核廃棄物)の処分ができないのだから、論理的にも経済的にも感覚的にも原発は破綻していると考えるのが自然ではないか。小泉元首相の主張は至極もっともで筋が通っている。今後の影響力行使に大いに期待したい(ほかに期待できる人はいないのかという意味では、これはこれで情けないが)。

◇◇

 きょうはいい授業ができた。学生の反応もよかったし、もちろん居眠りや私語も皆無で、時間ぴったりに話すべきことをすべて話し終えることができた。満足。いつもこんなふうに完璧な講義ができればいいのだけど。

 講義を終えて控室に戻ると、「こんなきれいな虹を見るのは久しぶりだよ」と話題沸騰。台風一過で雲の隙間から青空が見える大空に、鮮明な虹が見事なアーチを描く。多くの先生が窓際に集まって飽きずに眺めていた。あっという間に消えてしまったが、それもまた風情があってよい。

 シャッターチャンスを逃してしまって、キャンパスから見えた鮮明で大きな虹の写真は残念ながらなし。肝心な時にシャッターを切らずに、まったく何やってんだかなあ。


10月3日(木曜日) 的外れな「国民目線」

 「国民目線」で記者会見するために首相官邸の記者席を1メートル後ろに下げるって、どれだけ的外れで本質からズレたパフォーマンスだよ。だったら後ろの席に座っている記者を指名して、それに答えればいいじゃないか。その方がカメラ目線に近付くだろうよ。そもそもそれより国民目線の話をしろ。全く馬鹿馬鹿しい。本末転倒にもほどがある。

 「産経新聞の投書が官房長官を動かす」だって? そんなことを勝ち誇ったように「国民目線」だとは。本当に馬鹿げてる。いかにも産経らしいし官邸らしい「国民目線」だとは思うけど。


10月4日(金曜日) どっちがジャーナリズムか

 みずほ銀行の副頭取らが頭を下げて謝罪する場面だけを流して、もっともらしいニュース番組を構成するNHK(NW9)と、記者の質問や対する銀行側の回答をきっちり流して、銀行の杜撰で不誠実な姿勢を浮き彫りにするテレビ朝日(報道ステーション)と。どちらがジャーナリズムの職責を果たそうとしているかは、一目瞭然だろう。公共放送が聞いて呆れる。

 【おことわり】9月30日付から10月4日付の「身辺雑記」をまとめて更新しました。


10月5日(土曜日) 教組支部教研で講演

 昼過ぎから横須賀。神奈川県高等学校教職員組合の支部教研全体会で講演。大学で担当している文章講座の指導経験を基に、学生の文章力が向上した成果などを話した。大事なのは文法やテクニックではなく、何を伝えたいのかを明確にすることだと強調する。

 全国の国公私立大学関係者の多くは、学生の文章力低下を危惧している。小中学校・高校でも日本語教育をしっかりやってほしい、文章指導できるだけのスキルを教員自身も身につけてほしいと要望して話を締めくくった。反応はかなりよく、有意義で面白い話だったとえらく感謝されたので、ちょっと気分がいい。ほっとした。

 【追記】記者として学んだものを、社会に還元するのも大事な役割だろうと思って、学生に文章指導しています。今回のような実践報告もその一環です。自立した市民(主権者)であるために、自分の考えをしっかり表現できるようになろう、というのが僕の講座の基本姿勢で、シラバスにもそのように明記しています。意思表示のためのデモや集会も大事かもしれませんが、理不尽な政治に対抗する「武器」である表現力を磨くことの方が意味があり、そのための教育実践こそが何より重要だと感じています。(2013/10/07)


10月6日(日曜日) 「降りる人が先でしょ」

 デパートのエレベーターを降りようとしたら、若い父親が6歳くらいの幼女に「ダメだよ待ってなさい。降りる人が先でしょ」と叱っていた。珍しく真っ当な親を見てちょっぴり感動した。こういう親に育てられた子どもはしっかり成長するに違いない。電車でもエレベーターでも降りる人など無視して、われ先に乗り込んでくる傍若無人で非常識な大人を数多く目にするだけに。


10月7日(月曜日) 当たり前の判断

 「言論・表現の自由」と「言葉の暴力」(威力業務妨害や侮辱など)は全然違う。全く別物だ。中学生でも分かる理屈が分からない在特会の構成員に対し、裁判所がごくごく当たり前の判断を示したに過ぎない。そう、これが本来あるべき司法なのだ。こういう当たり前であるはずの判決が「画期的」などと評されること自体、日本の司法(裁判官)のお寒い現状と情けない実態を象徴している。

→「ヘイトスピーチ」は人種差別、地裁が在特会に禁止命令(朝日)

http://www.asahi.com/national/update/1007/OSK201310070002.html

 現行の憲法と法律に基づいてまともな司法判断が示され得るのだから、わざわざ新たに法律で「ヘイトスピーチ」を規制する必要はないだろう。そもそも言論・表現の自由と言葉の暴力は根本的に違うものなのだから、さらにお上に規制の枠を決めてもらうなど、表現の自由の観点からむしろ危険極まりない。

→「表現の自由」割れる賛否、ヘイトスピーチ規制(京都)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131007-00000019-kyt-l26


10月8日(火曜日) 月刊「創」に教科書介入問題を執筆

 10月7日発売の月刊「創」11月号で、教科書採択への政治介入をめぐる経緯や背景、教育現場の声などを詳しくレポートしました。現場教師が希望している実教出版の「高校日本史」教科書を、教育委員会事務局が一方的に「不適切だ」と覆し、選定に介入する動きが東京・神奈川・大阪などで相次いでいます。ご一読を。

◇◇

 「高裁が裁判員裁判の厳罰化に歯止めをかけた形だ」と説明した読売の記事の書き方が、最も適切だと感じた。見出しは「裁判員裁判の死刑破棄」とすべきだったと思うけど。

→千葉大生強殺、1審死刑判決を破棄し無期懲役(読売)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131008-00000347-yom-soci


10月9日(水曜日) NHKの不思議

 JR北海道の問題を伝えるNHK(ニュースウオッチ9)は、どんなことがあっても「国鉄分割民営化」には絶対に触れたくないんだなあ。現場の人員が半減し、JR東海と比べていかに過酷な労働現場かは伝えても、その背景には踏み込もうとしない。分割民営化の「ぶ」の字も言わない。なんで?


10月10日(木曜日) 土肥裁判の最高裁要請行動に同席

 午後から最高裁判所。都教委の管理統制を告発した元都立高校校長の土肥信雄さんの上告審について、最高裁書記官に面談して陳情する「要請行動」に同席した=写真。最高裁の判決や弁論の傍聴取材、最高裁裁判官室での最高裁判事の取材などは経験があるが、最高裁要請行動に同席したのは今回が初めてだ。

 かつては最高裁への要請行動や代理人弁護士の面談には、最高裁調査官(エリート裁判官の登竜門で、実質的に最高裁判決の基礎的判断は調査官がすると言われている)が応じたそうだが、ここ最近は調査官が出てくることはまずないという。この日は訴廷首席書記官補佐が対応した。

 「土肥校長は生徒からも保護者からも同僚教師からも慕われていた」「(都教委のウソを鵜呑みにした)一審、二審の判決は事実誤認している」「最高裁は事実を基に公正な憲法判断を」と訴える土肥さんの教え子やPTA役員、代理人弁護士らの言葉は、いずれも実に説得力があって心に響く内容だった。

 書記官の表情や態度の端々から、こうした訴えは先方の心に確実に届いたと思われる。ただそれが、この場にいない調査官や判事にどれだけ届くかが問題だ。書記官は「担当書記官と調査官には必ず伝える」と約束したが、「裁判官に伝えるかどうかは調査官が判断するので約束できない」とのことだった。正直な人だ。要塞のような建物の外観と同じく、最高裁判所の壁はやはり限りなく高い。

 一方、土肥さんに対し書記官は、「支援者から裁判所に送られてきたはがきの文面の大半が手書きだったのは、土肥さんの裁判が初めてですね。ほかの裁判では印刷された同一内容の文面がほとんどでしたから」と語ったという。

 裁判所宛に「公正な判断を」などと訴える「要請はがき」も、関係者や支援者にとっては大きな意味を持つ。原審判決を取り消すなど、よほどのことがなければ、最高裁の審理では弁論のための法廷が開かれないからだ。しかし型通りの「要請はがき」でなく、一枚一枚にそれぞれの思いが綴られているのは、いかにも土肥裁判らしい。大勢の教え子や保護者が法廷や集会に駆け付け、支援の輪が広がる土肥裁判と、なかなか支援が広がらない旧態依然とした「市民運動」との大きな違いかもしれないと思った。

【写真】最高裁に入る前からリラックスムードの土肥元校長(右から2人目)と代理人弁護士、支援者ら=10月10日午後2時40分ごろ、最高裁判所東門


10月11日(金曜日) ニュース番組の自覚なし

 ニュース番組のはずなのに、番組の冒頭で季節外れの桜の花をわざわざモザイクにする昨晩のNHK「ニュースウオッチ9」。意味不明。ワイドショーやクイズ番組じゃあるまいし。「ニュースを伝える」という自覚がないのか。秘密保護法案の危険性についても全く伝えないし。報道ステーションはしっかり伝えていたぞ。


10月12日(土曜日) 原稿執筆

 終日、原稿執筆。


10月13日(日曜日) 何だこのラノベドラマ

 キムタク主演のTBSドラマ「安堂ロイド」。荒唐無稽で訳が分からん。続けて見るのが辛いから初回だけでもういいかな。少なくとも初回を見た限りは、出来の悪い中二病的なラノベみたいな内容だったが、まさかこのあと面白くなったりしないだろうな。ほんの少しでも期待した自分が間抜けだったのかも。


10月14日(月曜日) 追加原稿を送信

 新刊単行本の追加原稿をようやく書き上げて、担当編集者に送信した。遅くなって本当に申し訳ないです。まだあれこれ作業がたくさん残っているけど、とりあえず大きな山は一つ越えたかな。ぐったり。いやいやぐったりしている暇などない(キリッ)。

 【おことわり】10月9日付から10月14日付までの「身辺雑記」を、まとめて更新しました。


10月15日(火曜日) 大型の台風26号

 夕方、大学の教務課から電話連絡。大型の台風26号の接近のため、あす午前中の授業はすべて休講に。午後の講義を休講にするかどうかについての判断は、午前11時の時点で決定し公式サイトで発表するので、それを見た上で出講して下さいとのことだった。本日午後5時過ぎの時点で既に風雨が結構強くなりつつあるが、教務課の職員のみなさんは教員全員に連絡してくれているのか。感謝。お疲れさまです。


10月16日(水曜日) 休講

 午前中だけでなく午後の授業も休講決定。雨風も止んで空も明るくなってきたので、個人的には出講する心積もりだったんだけどなあ。それに補講はいろいろと面倒だから、きょう授業をした方がよかったんだよなあ。まあそんなこと今さら言っても仕方ないか。

 ちなみに大学の公式サイトはスムーズにアクセスできて、休講決定のアナウンスはすぐに確認できたのだが、外部に非公開の内部サイトは、たぶんアクセス殺到のためにものすごく重い。なかなか休講の確認ができない学生もいるんじゃないかと、それが心配だ(公式サイトを見ない、存在すら知らない学生もいるらしい)。

◇◇

 甘利さん、むしろあなたの方が桁違いに無知で短絡的だと思うよ。長期的視野と洞察力に欠けているとしか思えない。まず核のゴミをどうするつもりか説明した上で発言してほしい。

→小泉元首相の原発ゼロ発言は「短絡的」甘利氏(読売)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131015-00001033-yom-pol


10月17日(木曜日) 新刊の初校ゲラ

 新刊単行本の初校ゲラのチェックがようやく終わった。完徹。マジでぐったり。シャワーを浴びて頭をシャキッとさせてから、横浜駅前で待ち合わせて担当編集者に著者校の済んだゲラを渡す。僕がグズグズと手間取ったせいで、こんなに遅くなってしまって、本当にすみません(平身低頭)。さすがにきついので、いったん帰宅して2時間ほど仮眠。夕方から別件で再び出撃。

◇◇

 ブラウザSafari(6.0.5)のフェイスブックの表示がおかしい。フェイスブックのページだけまともに見られないし、書き込みもできないのだが、どうしちゃったんだろ。仕方ないので、あまり好きではないFirefox(24.0)に切り替えて見る。うーん、謎だ。

 【追記】再起動したら正常に閲覧できるようになった。Safariはたまに不安定になるので困る。


10月18日(金曜日) 市民にできること

 みずほ銀行の預金をすべて引き上げた知人から、窓口で理由を聞かれて「暴力団とつきあいのある銀行には預けられない」と説明したとのメールが届いた。給料の受け取りや公共料金の引き落としなども、徐々に別の金融機関に移す予定だという。「私たち市民にできるのはそれくらいしかない」と書かれていた。よく分かるけど金融機関を変更するのっていろいろ面倒なんだよね。それでも敢然と実行したのは偉い。行動力に敬意を表したい。

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 「法律で定められている」「このままでは違法な状態が3年にわたって続くおそれがある」と言うが(NHKニュースもそのように伝えているが)、そもそも教科書採択は現場の意向を尊重するのが基本であり、しかも地教行法と広域採択を定めた教科書無償措置法は矛盾している。広域協議会が選んだ特定教科書を使えと、政府がここまで執拗に自治体に迫るのは異常としか言いようがない。

→文科相、竹富町の教科書で是正要求を指示(NHK)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131018/k10015377361000.html


10月19日(土曜日) もっと聴きたい

 東京・永田町で開かれた市民集会で、名古屋大学大学院教授の中嶋哲彦さん(元愛知県犬山市教育委員)の「憲法と教育」に関する講演を聴いた。話は上手くて要領を得て分かりやすい。それなのに講演時間はわずか30分。何ともったいない。運動家の演説やデモンストレーションはもっと圧縮していい。主催者のセンスに喝だ。

 こういう旧態依然の集会の進め方をしてるから、仲間内だけの狭い世界で完結してしまって、外に向かって運動が広がらないんじゃないかな。運動家の宣伝演説には一般人はドン引きするだけだ。パフォーマンスも同様。いくら正しいことを主張しても、共感が集まらなければ意味はない。もったいないよなあと思う。

 憲法や教育に関する集会や学習会で、だれを呼ぼうかと思案している市民運動の関係者は、ぜひ名古屋大学大学院教授の中嶋哲彦さん(教育行政・教育法)に話をしてもらったらどうだろう。オススメだ。少なくとも僕は30分の短縮版でなく、1時間バージョンの講演が聴きたいと思った。


10月20日(日曜日) 良貨が悪貨を駆逐する

 新聞社に勤めていた10年以上前、同僚記者7人と一緒に毎月1回、新聞休刊日に秘密の勉強会を主宰していたことがある。自分の書いた記事や連載企画をそれぞれ持ち寄って、取材過程や反省点を報告し議論する自主ゼミのような集まりだ。

 当時の勤務先は、ごく当たり前の勉強会も秘密裏にしなければならない、そんな息苦しさに包まれていた。自由にものも言えず、無能で横暴な管理職が幅を利かせ、行政や企業の太鼓持ちみたいな紙面を平気で作っていた。僕も大袈裟ではなく何十本もの原稿を握りつぶされた。

 信じがたい重苦しい職場環境だったが、見どころがあると思った後輩記者3人にこっそり声をかけると、彼らは二つ返事で仲間に加わり、毎回欠かさず出席してくれた。勉強会は充実していたし、その後の飲み会も楽しかった。僕が会社を辞めるまで、勉強会は1年以上続いた。

 古巣の新聞社は10年前と違って、ここ数年はかなり問題意識のある紙面を展開するようになったようだ。実際に評判も悪くない。最近目にした企画記事も、これまでの紙面や他紙と比べて視点や切り口が鋭かった。かつての職場なら間違いなく紙面化されなかったに違いない。

 記事の署名を見ると、やはりあの後輩記者だった。自分の人を見る目を誇らしく思うと同時に、後輩の成長ぶりを心からうれしく思った。どんなに酷い職場環境であっても、問題意識や意欲を持って頑張る記者は少なからずいる。それが証明された格好だ。

 取材力もなく、だれのために何を伝えるのかということさえ理解していない残念な記者は、いまだに何人も残っている。しかし程度の差はあるかもしれないが、たぶんどこの新聞社も似たようなものだろう。それでも、良貨が存在する限り悪貨を駆逐する。そう信じて後輩記者にエールを送りたい。


10月21日(月曜日) 再びペンタックス

 自分へのご褒美として、超小型のデジタル一眼レフカメラ(PENTAX「Q」02ズームレンズキット/ホワイト)を買った。新しい道具を入手すると、分厚いマニュアルを読んで、しっかり使いこなせるように操作を習得するのが面倒なんだよなあ。でも、取材現場で使いこなせず手間取って、シャッターチャンスを逃したら元も子もないし。

 新聞記者になって初めて買ったカメラがペンタックスだったので、古巣に戻ったような感じがしてちょっと感慨深い。フィルムカメラはニコンがダントツだが、ニコンのデジカメは使いにくい。そんなわけで、現在メインで愛用しているのはパナソニックの「LUMIX」。予備機またはメモ代わりとして、コンパクトデジカメのカシオの「EXILIM」と、今回購入したペンタックスの「Q」を使う予定だ。

 商売柄、カメラはいろいろ持っておいて損はない、などと言い訳しながら、カッコよくて使いやすい新機種はないかなと物色する今日このごろ。記者は記事を書くだけでなく、カメラを構えて写真も撮らなければならないのだから。


10月22日(火曜日) サンデー毎日に「三鷹バス事件」

 本日22日発売の「サンデー毎日」11月3日号に、「三鷹バス痴漢冤罪事件」のレポートを書きました。右手に携帯電話を持ち、左手は吊り革をつかんでいたのに有罪とされた中学教諭の男性は、一貫して無実を訴えています。来週には東京高裁で控訴審が始まります。ご一読を。


10月23日(水曜日) 裁判官の処分なぜ匿名?

 なぜ朝日が裁判官を匿名で伝えるのか理由が全く分からない。公人中の公人が懲戒処分されて依願退官した事実は、それこそ国民の知る権利の対象ではないか。どうして実名で報じないのか。「高橋信慶判事」と明記して伝えた読売の対応を支持する。

→司法修習生にセクハラ、男性裁判官が戒告処分、福岡地裁(朝日)

http://www.asahi.com/national/update/1022/SEB201310220055.html

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 きょうは授業中に寝ている学生が多かった。前回は居眠りなんて皆無だったのに。そんなに今回の講義は面白くなかったかなあ。ところが講義についての感想や質問を書かせたら、きちんとポイント押さえていて的を外していない鋭い内容が多い。なんだよ、ちゃんと聞いてたのかよ。狸寝入りなのか?


10月24日(木曜日) 「あとがき」出稿

 新刊単行本の「あとがき」をようやく書き上げた。なんだか、やけに苦戦して手間取ってしまったが、とりあえず無事に出稿。これで出すべき原稿はすべて出したことになるのかな。


10月25日(金曜日) NHK経営委員の露骨な人事案

 なんとまあ露骨な人事案であることか。さすが「権力の代弁者」と言われる「みなさまのNHK」らしい人選だ。産経は「偏向報道打ち消しに躍起」「安倍政権の意向がどれだけ反映されるか」と書いていたが、その通りになった。

→NHK経営委員に小説家・百田直樹氏など提示(毎日)

http://mainichi.jp/select/news/20131025k0000e010202000c.html

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 安倍内閣が本日、特定秘密保護法案を国会に提出した。文芸評論家の斎藤美奈子さんの話「最悪の法案だと思います。国民にも企業にも精神的な圧力がかかり、自主的言論統制が進んで相互監視の力が働く。戦時中の国家総動員体制と同じ。戦闘のない戦時国家ですよね。安倍首相の国家主義的な趣味になぜ振り回されなきゃいけないのか」(朝日夕刊から抜粋)。


10月26日(土曜日) 手帳とカレンダー

 2014年の手帳と「となりのトトロ」カレンダーを購入する。いつもの商品選択。デパートのダイアリーセンターに手帳やカレンダーが並ぶ季節になった。今年も残すところ2カ月ちょっとしかないのか。あっという間に時間が過ぎていくのが恐ろしい。しかもそのスピードが毎年確実に加速している気がする。ため息。


10月27日(日曜日) 少数意見を発掘

 都内でジャーナリズム関係者の勉強会に参加し、元共同通信編集主幹の原寿雄さんの話を久しぶりに聞いた。僕にとって原さんは、新聞記者としての師匠のような存在だと勝手に思っている。88歳とは思えない意気軒昂ぶりで、話の一つ一つがとても参考になり改めて刺激を受けた。

 原寿雄さんの話の中で、特に印象に残ったのは次の言葉だった。「記者は少数意見を積極的に拾い上げて伝えていくべきだ。真実・本当のことを知るために少数者の意見を聞け。多数派を取材する5倍の時間とエネルギーをかけて少数者を取材しろ。すべての記者は取材する際の対応を変えて、少数意見を見つけて発掘すべきだ」

 これまでも可能な限りそのように意識して、少数派への取材を実践してきたつもりだが、ともすれば忘れがちになり疎かになってしまう。自戒しなければと思った。原さんの著作を読んだり話を聞いたりすると、いつも必ず記者としての初心・原点に立ち返ることができる。

 勉強会が終わって、全国紙の先輩記者らと居酒屋で原寿雄さんを囲んだ。40代のベテラン・中堅記者の問題意識のなさが、今のメディアの危機的状況の大きな原因の一つではないか、「デスク論」を大いに語ろうという話になった。同感。原さんに「池添を叱って励まそうと俺はここにいる」と言われた。ありがたいが恐縮するばかりだ。

 全国紙の先輩記者から提案があったので、近いうちに若手記者や中堅記者を対象に、原寿雄さんの話を聞く機会を設けたいと思っている。みんな大いに刺激を受けるはずだ。何のためにだれのために取材し伝えるのか、といった「記者の原点」を見つめ直す機会になればと期待している。


10月28日(月曜日) ようやく秋

 雲一つない真っ青な空が広がる気持ちのいい一日。日中は汗ばむほどの陽気だが、日が落ちるとちょっと肌寒い。ようやく秋らしい季節の空気を感じる。


10月29日(火曜日) 「三鷹バス痴漢冤罪事件」控訴審

 「三鷹バス痴漢冤罪事件」控訴審の初公判が29日、東京高裁で開かれた。冷たい雨の中、傍聴券42枚を求めて168人が列をつくった。一審に比べてはるかに多い傍聴希望者。事実認定のおかしさが際立った理不尽な東京地裁立川支部の有罪判決が批判を呼んだせいか、関心の広がりがうかがえる。

 事件は三鷹市内の路線バス車内で発生。公立中学教諭の津山正義さんが女子高生の尻を触ったとして逮捕・起訴された。痴漢行為をしたとされる時間に、津山さんは右手で携帯電話を操作して恋人とメールを送受信し、左手は吊り革をつかんでいたと訴え一貫して無実を主張。その様子はバス車載カメラに記録されていた。

 ところが一審の東京地裁立川支部の倉澤千巖裁判官は、「被害者供述の信用性は高い」と繰り返して弁護側主張をすべて退け、「痴漢行為をすることは容易とは言えないが、不可能とか著しく困難とまでは言えない」との理屈を並べて、求刑通り罰金40万円の判決を言い渡したのだった。事件と裁判の詳しい経緯は、僕が書いた先週発売の「サンデー毎日」の記事を参照してほしい。

 この日の控訴審初公判で弁護側は、控訴趣意書の要旨を約40分かけて陳述。「被告人は無実で、原判決(一審判決)は事実誤認である。無辜(罪のない人)を処罰した原判決は破棄されなければならない」と述べ、「女子高生の供述証拠よりも証明力が高い極めて有力な非供述証拠が存在する。バス車載カメラに残された画像だ」と訴えた。

 さらに弁護側は、「原判決の認定は単なる想像によるものに過ぎない。メールをしながら、揺れれるバス車内で倒れないように姿勢を保ち、尻を触ることなどできない。原判決は想像から神業を被告人に押し付けたものである」「女子高生の供述の核心的部分が車載カメラの画像と決定的に矛盾している。にもかかわらず原判決は、女子高生の証言の信用性は高いと早々と結論を出し、非供述証拠を一切検討しないまま結論を出している」と一審判決を厳しく批判した。

 その上で、「女子高生が被害を訴えたのは、被告人が抱えていたリュックが尻に当たったのを痴漢と勘違いしたからだ。女子高生は目視しておらず、触感だけで痴漢と判断した。識別困難とする鑑定書を原判決は排斥した。原判決は机上で想像した空論であり徹底的に誤っている」と主張し、一審判決を見事に喝破した。どこからどう考えても、弁護側の主張を聞けば無罪判決しかないように思うのだが。たぶん傍聴人の大多数もそう感じたに違いない。

 弁護側による控訴趣意書の要旨陳述の途中、検察官が「女子高生と呼ぶのは被害者を特定することになる。被害者と言え」と異議を申し立てる一幕があった。これに対し弁護側は「弁護人は被害者と考えていない。被害は存在していないと考えている」と反論。河合健司裁判長は「そのまま続けて下さい」と弁護側主張を認めた。至極当然の対応だと思う。

 河合裁判長はこの日、バス車載カメラの画像解析をした研究者の証人尋問を認めた。一方、繊維微物の付着実験、刺激識別の心理学鑑定をした研究者の証人尋問請求は判断を留保した。次回は来年1月になりそうで、そのまま結審する可能性もあるという。裁判所の公正な事実認定と判断に期待したい。(以上、「三鷹バス痴漢冤罪事件」控訴審初公判の傍聴取材メモ)


10月30日(水曜日) 恥知らずな原発輸出

 日本企業がトルコで原発4基の建設受注に合意。トルコ訪問中の安倍首相は「原発事故の経験と教訓を共有することで、世界の原子力安全の向上を図ることは日本の責務」と強調したそうだ。福島第一原発のメルトダウン事故はいまだに収拾がつかず、全く手に負えない状態だというのに。いったいどういう神経なんだ。恥知らずにもほどがある。金もうけのために世界有数の親日国トルコの人々を危険にさらすとは、真の友好関係に反する行為ではないか。


10月31日(木曜日) 何が「皇室の政治利用」か

 なぜ今ごろなのか。それだったら順番から言って、横浜線の踏切救助で亡くなった女性の前に、まずこの中国人青年に褒章授与すべきだったのではないか。それよりも何よりも、「善意の救助活動」をまたもや美談仕立てで政治利用するのか、との気持ち悪さがどうしても拭いきれない。

→淀川で男児救助、中国人男性に紅綬褒章、菅官房長官が表明(朝日)

http://www.asahi.com/articles/TKY201310310038.html

◇◇

 山本太郎議員が園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した。これに対する反応が全くもって意味不明だ。宮内庁幹部「異例なことで、あってはならないこと」。自民党幹部「ばかものだ。世が世なら大変な刑だ」。天皇陛下に手紙を渡すのが、どうして「あってはならないこと」なのだろう。「世が世なら」ってどれだけ時代錯誤なんだろう。訳が分からん。

→山本太郎氏の陛下への手紙渡し「議員の品位おとしめる」参院自民の脇幹事長(産経)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131031-00000568-san-pol

 「皇室の政治利用」と言うのであるならば、宮内庁の抵抗を押し切ってIOC総会に皇族を登壇させ、事実上の東京招致演説を強行した安倍内閣の責任こそ、まっ先に問われるべきではないか。「主権回復の日」などという虚構の式典を強引に開催し、天皇を引っ張り出したのも安倍政権だった。

 だいたい天皇陛下にお招きいただいた園遊会で、本人に手紙を直接手渡すことのいったいどこが政治利用で、そもそも何がいけないのかさっぱり分からん。天皇自身が受け取りを拒否したわけでもあるまいし(笑)。「国旗国歌を強制するのが私の仕事です」などと園遊会で面と向かって述べて、天皇にたしなめられた棋士がかつていたが、それこそがまさに政治利用そのものだろうに(棋士の思惑は大きく外れたわけだが)。

 自分たちの「政治利用」は棚に上げて、手紙を渡しただけの山本太郎議員を、必死にバッシングする人たちの気持ち悪さと不気味さにぞっとする。なんて醜悪なんだろう。「善意の救助活動」を美談に仕立て上げる動きにも、同様に違和感がある。

→山本太郎議員、「皇室政治利用」で処分も=参院、1日に対応協議(時事)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131031-00000125-jij-pol

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 「特定秘密保護法案」を審議している衆院国家安全保障特別委員会を、どういうわけかNHKは全く中継しようとしない。「特定秘密に当たらない」「対象とならない」「該当しない」と繰り返す政府答弁を国民に見せたくないのか。国会でいくら答弁しても、秘密の範囲は後から際限なく広がるからな。政府の恣意的判断の危険性が追及される様子を、知らしめたくないということなのか。

 さすがは「権力者の番犬」たるNHKだよ。公共放送が聞いて呆れる。もはやジャーナリズムでもなんでもない。事実上の国営放送と変わらないじゃないか。

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【身辺雑記フェイスブック版】=こっちの方がすっきりしてるな

 山本太郎・参院議員が園遊会で天皇陛下に手紙を手渡したことへの反応が全くもって意味不明だ。宮内庁幹部「異例なことで、あってはならないこと」。自民党幹部「ばかものだ。世が世なら大変な刑だ」。天皇陛下に手紙を渡すのが、どうして「あってはならないこと」なのだろう。「世が世なら」ってどれだけ時代錯誤なんだろう。訳が分からん。

 「皇室の政治利用」と言うのであるならば、宮内庁の抵抗を押し切ってIOC総会に皇族を登壇させ、事実上の東京招致演説を強行した安倍内閣の責任こそ、まっ先に問われるべきではないか。「主権回復の日」などという虚構の式典を強引に開催し、天皇を引っ張り出したのも安倍政権だった。

 だいたい天皇陛下にお招きいただいた園遊会で、本人に手紙を直接手渡すことのいったいどこが政治利用で、そもそも何がいけないのかさっぱり分からん。天皇自身が受け取りを拒否したわけでもあるまいし(笑)。「国旗国歌を強制するのが私の仕事です」などと園遊会で面と向かって述べて、天皇にたしなめられた棋士がかつていたが、それこそがまさに政治利用そのものだろうに(棋士の思惑は大きく外れたわけだが)。

 自分たちの「政治利用」は棚に上げて、手紙を渡しただけの山本太郎議員を、必死にバッシングする人たちの気持ち悪さと不気味さにぞっとする。なんて醜悪なんだろう。

 「善意の救助活動」を美談に仕立て上げる動きにも、同様に違和感がある。淀川で男児救助、中国人男性に紅綬褒章、菅官房長官が表明(朝日)。なぜ今ごろなのか。それだったら順番から言って、横浜線の踏切救助で亡くなった女性の前に、まずこの中国人青年に褒章授与すべきだったのではないか。それよりも何よりも、「善意の救助活動」をまたもや美談仕立てで政治利用するのか、との気持ち悪さがどうしても拭いきれない。(10月31日付「身辺雑記」)


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