身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2014年1月1日〜1月31日

●あけましておめでとうございます●やっと印刷完了●根っからの極右●細川氏出馬したら面白いのに●「愛国心教育」の危うさ●国が支配する教育●「脱原発」争点は当然●反省のない安倍政権●極右政権に一撃与える候補●「忘れられた皇軍」と怒りと共感●ひたすらレジュメとシラバス作成●原発ゼロは重大な争点だ●アリバイづくり●睡魔に耐えてお疲れ様●心に響かなければ勝てない●原発も五輪も要らない●NHKと名護市長選の当確速報●本質に切り込まない記事●想像力に欠ける日テレドラマ●安直な脚本と安っすい視聴者●学生の授業の感想から●日本国民の奴隷根性●史上最低のNHK会長●分断される学校現場●NHK会長と経営委員は即刻辞任を●なぜNHKは会長発言を伝えない●批判されるべきは記者でなくNHK会長だ●タイムリーな「ごちそうさん」●赤でも白でも同じ●●●ほか


1月1日(水曜日) あけましておめでとうございます

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。横浜の天気は快晴。やや風が強い感じです。年賀状の版下作成はとりあえず完了しました。これから印刷に取りかかります。相変わらずの新年です。とほほ。

◆(以下追記)◆

 どっさり届いた年賀状を前に、まだ書いてもいない自分を恥じつつ印象に残った言葉。「年々減少する『怒れる若者たち』は国の宝です」。全く同感。怒れる高校生や大学生は貴重な存在だ。高校生や大学生こそもっと怒ってほしい。私利私欲にとらわれずに憤ることができるのは若者ならでは。事実をしっかり学んで調べて、しっかり発言してほしい。心からそう思う。

◇◇

 元日付の朝日新聞で心に残った記事3本。1)テレビラジオ別刷り「伝えるこの国のいま」(大越健介、膳場貴子、古舘伊知郎の3キャスターの姿勢の違いが鮮明になって興味深い)。2)オピニオン・2014もう一つの生き方「3畳の店ちょうどいい幸せ/宇田智子さん・那覇の古書店ウララ店主」(小さいなりに幸せな社会、という言葉が印象的)。3)横浜版・教育2014変わるまなびや「授業任せて、全校で児童が司会、学力ぐんぐん」(子どもが主体的に授業に取り組む学校全体の試みが新鮮で刺激的)。スカスカ気味の紙面の中でも考えさせられる記事だった。

◇◇

 元日スペシャルの「相棒」は相変わらず面白かった。骨太で社会性のあるテーマをがっちり折り込んで、情報とはだれのものかを問いかけ、「国益」を振りかざす権力者にも切り込み、ジャーナリズムの使命にまできっちり踏み込んでいる。問題意識がなければこういうドラマは作れないだろう。さすが。直前番組の「芸能人格付けチェック」も面白かったけど、テレ朝は絶好調だな。

◇◇

 新藤義孝総務相が靖国参拝。ニュースで政治家の言い分を伝えるのは、公人が何を発言したかを検証し、主権者たる国民に判断材料を提供することなので必要だが、しかし「どこの国でも国のために命を捧げた方々に対し、同じような行為がされている」との新藤総務相の言葉は事実に反しているのだから、発言を紹介した後できちんと事実と問題点を指摘すべきだ。

 そうでないと、ウソがどこまでも一人歩きして拡散することになる。事実に反する発言だけを何のフォローもなく繰り返しニュースで流すから、「新藤氏の靖国参拝はごく普通のこと」「中国と韓国を除いた全世界の国は称賛している」などといったとんでもない言説を振りまく馬鹿が、増殖してのさばるのだ。

 戦没者に手を合わせることは問題ないが、靖国神社に手を合わせることが問題なのだ。靖国神社はまともな宗教ではないという事実と歴史的背景を、政治家の靖国参拝のニュースのたびに繰り返し伝えなければ、ウソ八百が際限なく広がっていく。そのことをメディア(特にテレビ関係者)は自覚すべし。あまりにも無自覚で薄っぺらな記者が多過ぎる。


1月4日(土曜日) やっと印刷完了

 ようやく年賀状の印刷が両面とも終わった。版下作成に手間取って、さらに土壇場で住所録の整理が不完全だったことも判明し、なかなかプリンターが稼働させられず作業が遅れに遅れた。いい加減で杜撰な自分を恥じるばかりだ。あす投函かなあ。とほほ。ちなみに挨拶の文面は、拙著の新刊案内と極右政権への危機感表明など。190字ほどで近況報告や抱負を簡潔にまとめるのは難しい。


1月5日(日曜日) 根っからの極右

 もはや失言とか言葉足らずといったレベルではなく、根っからの極右そのものと言っていい。事実をねじ曲げ詭弁を弄して戦争賛美する背景がよく分かる。どうして安倍晋三がこの作家をNHK経営委員にしたのかもよく分かるまとめ。

百田尚樹のトンデモツイート集/NAVER まとめ

http://matome.naver.jp/odai/2138403790714522501?&page=1


1月6日(月曜日) 細川氏出馬したら面白いのに

 もしもこれが本当だとすれば、確かに脱原発のアピールに期待は集まるだろうし、知名度と経験と安定感もあるので、ぶっちぎる可能性は大きいかも。少なくとも舛添ナントカやそのまんまナントカよりはるかにいい。

都知事選「舛添優勢」覆す仰天情報「細川元首相」急浮上(日刊ゲンダイ)

http://gendai.net/articles/view/news/147008

 日刊ゲンダイの記事だけだと信憑性が薄そうだが、共同通信も伝えた。ただ細川元首相は固辞しているという。出馬したら面白いのに。勝てる可能性はかなり高い。

→民主、細川元首相に立候補打診、都知事選、固辞か(共同)

http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014010601001941.html


1月7日(火曜日) 「愛国心教育」の危うさ

 愛国心教育について、「国家統制が色濃く、個人の思想・信条に踏み込む危うさが消えない」と沖タイの社説。まったくもって指摘の通り。安倍政権が次々に繰り出す国家主義的政策の問題点が、分かりやすく書かれている。

→沖縄タイムス社説[愛国心教育]国家統制への道を危惧

http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=60163


1月8日(水曜日) 国が支配する教育

 「国が決めたルール通りに教師が教えないのはおかしい」といった感想を持つ学生が、今年は例年よりも多い気がする。教育委員会や文部科学省が教員を管理統制し、授業内容にまで踏み込むことの問題について、きょうの講義の中で触れたのだが…。国が教育を支配することに対して、どうしてもっと危機感を持たないのだろう。僕の説明の仕方が不十分だったのかなあ。

 もちろん、国家権力や政治が教育やメディアを支配して、政府にとって都合のいい情報しか教えず知らせないことの危険性を、戦前の歴史も踏まえてきちんと理解している学生も少なくないし、問題意識を持って、批判的に国家統制を見ている学生もたくさんいるのだけど。だんだん不安になってきた。どうしたものかと深く考え込んでいる。新年最初の講義でガツンとやられた感じだ。


1月9日(木曜日) 「脱原発」争点は当然

 全国紙やテレビキー局も細川氏出馬の動きを報じ始めた。東京都は東京電力の大株主なのだから、「脱原発」が都知事選の争点の一つになるのは何も問題ない。むしろ当然のことだ。原発の再稼働や海外輸出に積極的な安倍政権を批判し、脱原発を訴えている細川護熙元首相の都知事選出馬は、選択肢が広がるという意味からも望ましいと思う。

 ちなみにテレビ東京は「細川元総理、出馬意向固める」として、「すでに脱原発などを柱とした政策の取りまとめに入った」などと一歩踏み込んだニュースを伝えている。

http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/mplus/news/post_57740/

◇◇

 そうか、まだ勾留決定が出る前の段階で容疑者が逃走したから、集団強姦や強盗などの容疑で逮捕された時の同じ容疑で、今回改めて逮捕したということなのか。今後は、横浜地検の検事が容疑者から弁解録取した上で裁判所に勾留請求するという。なるほど。逃走したこと自体は何の罪に問われなくても、犯人隠避などの教唆の可能性はあるし、情状面で不利益となるのは間違いない。

→横浜地検川崎支部から逃走の容疑者を横浜市泉区で逮捕

◇◇

 読売新聞西部本社の経済部記者だというのだが、これまでにどんな取材をして、どんな記事を書いてきた記者なのかぜひ知りたい。

児童買春容疑で読売記者逮捕=女子高校生にわいせつ行為、警視庁(時事)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140109-00000054-jij-soci


1月10日(金曜日) 反省のない安倍政権

 週刊文春にしては冷静で的確な論評だと思う。天皇のギリギリのメッセージを足蹴にし続け、改憲を目指す安倍政権に、しかし反省の姿勢はない。

→「天皇の憲法発言に秘められた安倍政権への強いメッセージ」(週刊文春)

http://shukan.bunshun.jp/articles/-/3525


1月11日(土曜日) 極右政権に一撃与える候補

 「原発ゼロを掲げる〈細川─小泉連合〉は、都知事選がスタートしたら、安倍首相の『原発推進』を徹底的に批判し、安倍政権と真っ向から対決するつもりでいる」「脱原発が争点になる都知事選で(自民党候補が)敗退したら、再稼働は諦めるしかない」「都知事選が安倍政権の終わりの始まりになるのではないか」と日刊ゲンダイの記事。ぜひそうなってほしい。

 小泉内閣時代の政策の多くに僕は賛成ではないが、小泉氏の原発即ゼロの主張には説得力があり全く同意見だ。原発の再稼働や輸出を推進する極右の安倍政権に対し、確実に一撃を与える(少なくとも原発再稼働をさせない)という観点から、細川─小泉の連携はとても興味深い動きだと思う。

→都知事選「小泉─細川共闘」は「原発推進」安倍首相潰しだ(日刊ゲンダイ)

http://gendai.net/articles/view/news/147163


1月12日(日曜日) 「忘れられた皇軍」と怒りと共感

 洋画シネマチャンネルで「カプリコン・1」(1977年、米、ノーカット字幕)を久しぶりに見た。何回見ても面白い。利権とメンツを守るためなら人命など何とも思わない権力の傲慢さと、名誉と誇りを守るために屈しない宇宙飛行士の気概と、命懸けで真実に迫ろうとする記者魂と。ハラハラドキドキするアクションシーンも満載のエンターテインメント。名作だ。

◇◇

 いろんな意味で刺激的で意欲的だった、NNNドキュメント「反骨のドキュメンタリスト大島渚『忘れられた皇軍』という衝撃」(日本テレビ)。被害者意識ばかりで、加害者であることに自覚のない日本人に激しく怒りを向けた大島渚。「Nドキュ」はそれだけでなく、今のテレビ自身の「自覚のなさ」にも深く切り込んでいたのが秀逸だった。

 戦争責任にしても原発にしても、国家による管理統制の動きにしても、伝えるべき事実を伝えようとしない(伝えるだけの知識も問題意識もない)ことによる加害性について、テレビ・メディア関係者の無自覚ぶりは度し難いものがある。「伝えない」ことで加害者になっている事実に、まるで気付いていないのだ。その罪と責任は大きい。この日の「Nドキュ」の番組は、数少ない良心的なテレビマンが同業者に向けて鳴らした痛烈な警鐘であり、自らの番組製作に対する覚悟のメッセージでもあった。

 久しぶりの「忘れられた皇軍」は、学生時代に東京の三百人劇場で見て以来。ナレーションでも触れられていたように、大島渚の社会への怒りと取材対象に対する共感が、画面いっぱいにあふれ、前面に押し出されて作られた作品だ。「怒りと共感」こそが取材する者の基本だと改めて痛感する。


1月13日(月曜日) ひたすらレジュメとシラバス作成

 来年度のシラバス(授業計画)を書くために、担当している3つの講義のレジュメ(下書き)を一気にまとめた。レジュメなんて授業の直前に作ればいいのだが、シラバスの記入様式が大幅に変わった(やけに細かい記載まで求めて面倒くさい)こともあって、講義内容と全体構成も見直した。我ながら頑張ったと思う。

 大学によるとシラバス記載事項の見直しは、「学生に適切な授業情報の提供を図る」「学生に主体的な取り組みを促す」ためだという。それはもっともだと思うけど、シラバスに目を通したこともないという学生や、全く読まずに履修届を出す学生は、残念ながらかなりの割合にのぼるんだよなあ。もちろん隅から隅までしっかりシラバスを読んで、授業に出席してくれている学生もたくさんいるのだけど。

 そんなわけで、今回から記載しなければならないことが山のように増えたシラバスについても、大学のシラバス登録サイトにちまちまとひたすら書き込んで、とりあえず仮登録を済ませた。もうぐったりだ。やっぱりちゃんと読んで履修してほしいなあ。


1月14日(火曜日) 原発ゼロは重大な争点だ

 細川護熙元首相が脱原発を主張して都知事選出馬を表明。さっそく自民党や読売など一部メディアによるネガティブキャンペーンが始まった。「原発は国の問題」「東京都だけで決める政策課題ではない」「争点にすらならない」といった具合だ。しかしそもそも原発にどう向き合うかは、東京都の重大な政策課題でもあるはず。これからどのような生活スタイルを築いていくのかということも含めて、むしろ積極的に争点にして議論するべきであって、政府の原発推進政策に危機感を持つのは当然だろう。

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 細川氏や小泉氏が首相在任中に原発推進だったかどうかなんて、問題じゃないんだよ。そんなことはどうだっていい。現在何を考えてこれから何をするかが重要なんだよ。過去の失敗や過ちを悔い改めて、その反省に基づいてどうするかが大事なんだ。過去の侵略の事実を認めた上で、国際社会でどのように振る舞うかが問われる戦争責任の問題と同じだ。

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 つまるところ、「特定秘密保護法の施行に向けて、都合のいい意見を伺うため、経験や実績などを参考に最終的に判断した」ということだろう。それにしてもなんとも露骨な人選であることか。国民もメディアも、安倍政権に完全に馬鹿にされている。選ぶ方も選ぶ方なら、受ける方も受ける方。まあいずれも同じ穴のムジナだからね。心底呆れた。

情報保全諮問会議に読売新聞・渡辺恒雄氏ら(NHK)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140114/k10014479331000.html


1月15日(水曜日) アリバイづくり

 新聞社にいた時に、一度だけ記者クラブの持ち回りで某県のとある審議会の委員になったことがあるが、いくら意見を述べてもすべて「承りました」といった感じだった。会議をまとめて仕切るのも答申案を書くのも事務局職員。結局、答申案は最初に結論ありきの筋書き通り。虚しさだけが残ったが、個人的にはとてもいい取材経験になった。

 諮問会議や審議会というものは、為政者が都合のいい意見を集めるか、話をうかがったという形を整えるアリバイづくりのための組織だ。だいたいは名誉職と心得て、形だけの委員」を引き受けている人が多い。積極的に発言する人は少数派。期待された(与えられた)役割を演じている委員に、多くを望むだけ無駄だろう。

◇◇

 きょうの授業は準備した時間配分通りで、過不足ない講義ができた(と思う)。学生の反応も悪くなかったし。今年度はあと1回授業があるが、学生には再来週の期末試験でぜひ出来のいい答案を書いてもらいたい。こっちだってなるべく単位をあげたいし、できればSやAの評価を与えたいんだから。


1月16日(木曜日) 睡魔に耐えてお疲れ様

 午後から県立高校で「法学入門」の出張授業をした。冤罪事件と司法、原発とメディア、特定秘密保護法など、2・3年生向けにできるだけ分かりやすく話した(つもり)。少なくとも関心は持ってくれたと思う。昼食後の眠い時間なのに睡魔に耐えて、頑張って聞いてくれた高校生に感謝。

 この高校で授業をするのは3年目。以前はもっと男子が多かった気がするが、今年は圧倒的に女子が多い。8割は女子だという。共学なのに女子校で教えているみたいな感じだ。「女子が多いとやりにくい?」と聞いたら、女子は「そうでもないかな」、男子は「入学して驚いたけど淡々と過ごしてる」。頑張れ男子。

◇◇

 東京電力の広瀬直己社長と新潟県の泉田裕彦知事が会談。柏崎刈羽原発の再稼働を前提とした東電の新たな事業計画について、泉田知事は「原発の安全性について、これで会社が変わったと受け止めるには難しい計画」(毎日)、「事故の検証が不十分で、安全を二の次にした計画だ」「東京電力には原発を動かす資格はない」(NHK)などと厳しく批判した。全くその通りだと思う。頑張れ泉田知事。


1月17日(金曜日) 心に響かなければ勝てない

 ずっと案じていた通り、やっぱりこういうことになったか。都知事選の宇都宮健児候補批判を理由に、原稿執筆依頼を撤回した憲法会議(憲法改悪阻止各会連絡会議)事務局。「批判の言論」に不寛容な人々に未来はない。「運動の世界で生きていけなくなるからよく考えろ」との言葉に、この問題の本質が象徴されている。

 「私は宇都宮君を批判する言論の自由にこだわる」「批判の言論に寛容でなくてはならない」「憲法の理念など弁えぬ人々に担がれている。そのような人々に支えられた君が、憲法を守る公約を掲げること自体おこがましい」と指摘する澤藤統一郎弁護士の訴えが痛烈で、あまりにも本質を突いて的を射ているだけに、暗澹たる気持ちになる。

「澤藤統一郎の憲法日記/宇都宮健児君、立候補はおやめなさいーその26」

http://article9.jp/wordpress/?p=1926

◇◇

 仲間うちだけでしか通じない旧態依然たる「運動」が、幅広く支持されて広がるわけがないよなあと改めて思う。前回の都知事選の時から勝てるわけがないと感じていたし、実際に大惨敗だった結果(現実)に対する反省もないまま再度選挙戦に臨んで、いったいどんな展望があるのだろうと疑問を抱いていた。水を差すのもどうかと考えてあえて沈黙を守ってきたが、しかし、もはや根本的なところで破綻しているように思う。

 そもそも選挙は勝たなければ意味がないし、何よりも今回の都知事選では安倍政権に確実に一撃を与えなければならないはずだ。原発再稼働をさせないためにも、ウルトラ極右政権にダメージを与えるためにも、自民党候補に負けることは絶対に許されないのではないか。何はともあれ、一刻も早く「原発ゼロ」を実現させる必要がある。そのためにはよりマシな候補で勝つしかないだろうと思う。残念ながら心に響かない候補者では、訴えは広がらない。


1月18日(土曜日) 原発も五輪も要らない

 神奈川県高等学校教職員組合の平塚支部教研(教育研究集会)で講演を頼まれ、大学で担当している文章講座(作文指導)の実践などを報告。学生の文章表現力低下に対する大学側の危機感について話した。

 少し余った時間を使って、安倍政権が登場してから事実上国営放送のようになっているNHKの実態と背景についても解説した。時事問題にも触れてほしいと事前にリクエストがあったので取り上げたのだが、やっぱりこれは余計だったと思う。文章講座の話だけに絞るべきだったかも。

◇◇

 「原発即時ゼロなら五輪を返上するしかなくなる。世界に対して迷惑をかける」と批判する森元首相。五輪を人質にした脅し「細川落選キャンペーン」じゃないか。だったら五輪返上でいいよ。福島第一原発事故の放射能漏れや汚染水漏れで、既に世界中に迷惑をかけてるんだし、原発ゼロだと開催できないような五輪なら要らないんじゃないかな。そもそも、日本オリンピック委員会がIOCに提出した資料では、原発なしでも十分対応できると明記されているのだが。

「原発ゼロ」なら五輪返上しかない…森元首相(読売)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140118-00000775-yom-pol


1月19日(日曜日) NHKと名護市長選の当確速報

 沖縄の名護市長選で、辺野古移設に反対する現職の稲嶺進氏が、移設推進を訴えた前自民県議の末松文信氏を破り再選。沖縄タイムスは、投票が閉め切られた直後の20時02分に当確を出したが、これは出口調査で相当の票差がついていた、ということだろう(開票開始は21時00分)。

 それなのに、NHKが当確をテロップで流したのは21時30分。Nスペ直前の20時45分のニュースでは、出口調査の結果を「稲嶺氏が末松氏を引き離して優勢」と伝えたにもかかわらずだ。出口調査の結果が大差であれば、通常は投票締め切り直後に当確を出す。これまでどの選挙でも、NHKはこういう場合は得意満面で当確を速報してきた。NHKの名護市長選の報道には、ものすごく不自然さを感じる。

 もしも「期日前投票をした有権者が3割以上いて、出口調査の対象になっていないので慎重を期した」というのであれば、それはそれでNHKの取材力不足が問われることになるだろう。しかし過去の選挙報道でも、期日前投票を加味した上で情勢分析しているはずだから、やはり違和感は払拭し難い。


1月20日(月曜日) 本質に切り込まない記事

 とある取材先で出会ったとある高校教師の言葉。「◯◯大学なんて成績がオール1の生徒でも入れる」「△△高校の教師は勉強など全くしない馬鹿ばっかり。どこにも行くところがないからずっとこの学校にいる」「生活指導として、板書された黒板を消す係を授業ごとに生徒に割り振った」。差別意識と偏見にあふれた内容に衝撃を受ける。返す言葉が見つからず、しばし絶句した。

 最後の「黒板を消す係」なんて、授業が終わった時に板書した教師自身が自分で消せばいいし、消すべき話じゃないか(そもそもそれが普通じゃないの?)。わざわざ生徒に消させる意味が分からない。世の中いろんな人がいるんだなとは思うものの、暗澹たる気分になった。なんだかなあ。

◇◇

 20日付の朝日新聞のテレビ欄コラム「フォーカスオン」はまれに見る酷い記事だった。「NHK解説委員の討論番組を見て/多様な意見、鋭い発言も」の見出しで、安倍首相の靖国参拝を解説委員が論じるNHKの討論番組を取り上げた。「丸山ひかり」の署名入り。靖国神社が果たした国民支配の役割・本質に何も触れない討論番組で「多様な意見」って何だ。

 肝心かなめの「国家神道カルト」としての靖国神社の経緯や本質に切り込んで、問題点を指摘するNHK解説委員が全くいないのだから、「番組全体としては権力への配慮が生み出す息苦しさは感じなかった」のは当たり前じゃないか。オメデタイにもほどがある。もちろんコラムの本文でも、靖国神社の本質については切り込んでいない。こんな薄っぺらい記事を通した朝日新聞のデスクにはがっかりだよ。


1月21日(火曜日) 想像力に欠ける日テレドラマ

 日本テレビ系ドラマ「明日、ママがいない」に対して、「現実とかけ離れた場面が多過ぎる」「養護施設の子どもや職員への偏見や差別を生みかねない」「誤解偏見を与えて子どもたちを傷つける人権侵害だ」など、施設関係者らから抗議や放送中止を求める声が相次いでいる。

 表現の自由は最大限に尊重されるべきだし、フィクションならフィクションでいいだろう。しかし日テレのこのドラマが、国内唯一の赤ちゃんポスト「こうのとりのゆりかご」を題材にしているのは明白だ。しかも主役の女の子(芦田愛菜)のあだ名をわざわざ「ポスト」としている。だとすれば「創作ドラマ」で済む話とは次元が違う。ドラマの内容が視聴者にどんな影響を及ぼすか、児童や関係者に対する想像力の問題だ。

 あえて「赤ちゃんポスト」を題材にして、その上で現実と異なる内容で関係者を傷つける内容のドラマにしていることを考えると、日テレのドラマスタッフは、問題意識も人権感覚も取材能力も倫理観も想像力も、いずれも全く持ち合わせていないと言わざるを得ない。お粗末過ぎる。

 「赤ちゃんポスト」を設置する熊本市の慈恵病院に対して日本テレビは、放送中止や謝罪には応じないと回答したという。なんと居丈高で傲慢不遜で不誠実な対応であることか。そういう感覚の人たちが作ったドラマだとすれば、ある意味納得できる。さもありなんと思った。

 【追記】「赤ちゃんポスト」を題材として昨年11月にTBSで放送された2つの番組は、心にストレートに響いて考えさせる素晴らしい出来だった。それだけに、日テレのドラマがあまりにもエキセントリックかつ不誠実で、TBSの制作姿勢とは対極の存在に見えてしまう。(TBSの番組は、1つは「テレビ未来遺産」ドラマ特別企画「こうのとりのゆりかご〜『赤ちゃんポスト』の6年間と救われた92の命の未来〜」。もう1つは同番組宣伝企画として、ドラマのモデルとなった病院を特集した「テレビ未来遺産」特別編「『赤ちゃんポストの6年』〜命を救え!挑戦の記録〜」)

◇◇

 親しくしていただいている弁護士さんの一人から電話をもらう。2時間ほどの長電話だったが、何人もの裁判官の面白い裏話やエピソードをあれこれ聞かせてくれた。とても面白かったし大変参考になった2時間だった。なんとか記事にしたいなあ。どんな切り口がいいかなあと思案中。


1月22日(水曜日) 安直な脚本と安っすい視聴者

 芦田愛菜の演技はいいんだよ。文句なしに上手い。迫真の演技力だと思う。問題なのは何のひねりもない定型通りでありきたりな脚本のつまらなさと、差別や偏見を招きかねない設定だ。養護施設や里親制度に無知過ぎる。フィクションだと言い切るのなら、わざわざ「ポスト」なんて名前にしなければいいのに。わざとやって関係者に喧嘩を売っているとしか思えない。第2回もそんな感じだった日本テレビのドラマ「明日、ママがいない」。

 それにしてもこんな安直なストーリーに感動してくれるのだとすれば、日本のお茶の間のテレビ視聴者は、なんておめでたくてハードルが低いんだろう、と思わざるを得ない。甘過ぎるよ。テレビドラマ全体のレベルアップにもマイナスなんじゃないかな。「安っすい視聴者やで」と、どこかの映画監督に罵倒されそう。

 きょうの授業で「明日、ママがいない」の話題に触れた。表現の自由の問題とフィクションの描き方と赤ちゃんポストの背景について説明しながら、ほんのちょっとだけ。ドラマを見ていた学生は5%くらい。そもそも最近の大学生はテレビを見ないのだが、学生の反応は大半が無関心で、残りは賛否半々だった。

 まあそんなもんかな。とりあえず問題提起だけはしたので、あとは学生が自分自身で問題点を理解して考えてくれたらそれでいい。そんなに時間を割いて吟味するような大層なドラマではないし(脚本とストーリー展開が陳腐過ぎる)、もっと大事な問題はたくさんあるから。学生たちもきっと、ドラマの安直で雑なストーリーをそのまま鵜呑みにして見たりはしないだろう(と思う)。


1月23日(木曜日) 学生の授業の感想から

 今年度最後の授業の際に、学生が出席カード(リアクションペーパー)に書いてくれた感想から一部抜粋。講義を通して伝えたかったことのいくつかを、学生の多くはしっかり受け止めてくれているようで、成長が感じられてうれしい。

◆あっという間の半年間でしたが、この講義から得られたものは大きかったと思います。単位とかそういう小さな問題じゃなくて、今後生きていく上で考え方を変える大きな要因の一つをこの講義から受け取りました。

◆「現代ジャーナリズム」の授業を受けて、メディアについていろいろ知ることができました。新聞やテレビの見方が以前とは違っています。記事や報道をすぐに信じず、何が正しくて何が間違っているのかを自分で考えるようになりました。

◆「現代ジャーナリズム」の講義を受けて、自分の考えは変わりました。以前の自分はニュースをすべて鵜呑みにしていました。発信される情報を自分の思考で一度止め、そこから改めて情報を受け入れることができるようになった気がします。また権力者がさまざまな圧力をかけている問題を知り、世の中の問題がどうなろうとしているのかしっかり意識していかなければと、危機感を持つことができました。

◆授業全体を通して、今の日本における問題をしっかり知ることができた。なぜ問題なのかということや、きちんと伝えることができていない日本のメディアの実態を知り、情報を識別する必要があると感じた。中でも原発の問題は印象深く、放射能汚染がこれ以上深刻になることのない未来を望みたい。

◆この授業を受ける前と後では、自分の考え方やメディアへのイメージが全く違っている。それほどこの授業は自分にとって衝撃的でした。

◆「現代ジャーナリズム」の授業を受けて、1つの情報源を信じるのではなく、自分でさまざまな方向に目を向け耳を傾けながら情報を知ることが大切であると実感した。自分で情報を集めるのは簡単ではないし大変だと思うけど、面倒くさがらず周りに目を向けられるよう日々意識していきたい。

◆「メディア」に興味があったのでこの授業を受けました。授業内容は想像していたよりも面白く、考えさせられるものばかりでした。自分なりのモノサシ、アンテナの磨き方が、少しですが分かった気がします。その大切さを実感しました。自分の身になる授業でした。

◆「現代ジャーナリズム」を受講して、ものごとの視野が広がりました。書かれている記事をただ鵜呑みにするのではなく、さまざまな面から見て考えて、自分なりの考えや意見を持つことが大切なのだなということを学びました。さまざまな材料を比較することで本質が見えてくるのだと思います。

◆「伝える」「受け取る」という情報のやり取りが、こんなにも複雑なものかととても勉強になりました。正直ほかに面白そうな授業がなかったので、間に合わせに取った授業でしたが、受講して意識が変わりました。日々の生活に密着して、これほど身のある授業はそうないと感じます。大学に入学してさまざまな考えや境遇の人を理解したつもりでしたが、この授業でよりいっそう深まりました。意識しなくても情報が手に入る時代に、ただ受け手にならず、自ら情報を選別していくことの必要を感じました。とても有意義な授業をありがとうございました。

◆この授業を通して、いかに人々が情報に踊らされ支配されているのかが、改めて理解できた。情報を鵜呑みにせず取捨選択し、正しい知識と自分の意思・考えを持つことが非常に重要だとつくづく思う。マスコミ側も、視聴率などの数字や圧力に負けずに、本当に大切な情報は何なのかを今一度考えてもらいたいと思う。

◆私は3年の後期から、「単位を取るため」ではなく「学ぶため」という意識に変わり、自分が学びたいと思った講義を履修するようにしてきました。「現代ジャーナリズム」もその一つです。現場の記者である池添さんの話や考えはとてもリアルで、とても貴重な時間だったと思います。今までの講義で教えてくれたことをすべて理解はできていないかもしれませんが、実際に今も動いている「秘密保護法」など、黙ってニュースを見ているだけではなく、しっかり考えなければならないと思いました。


1月24日(金曜日) 日本国民の奴隷根性

 何回聞いても安倍晋三の「積極的平和主義」ほど酷い言葉はないと思う。「積極的国粋主義(国家主義)」とはっきり言えよ。詭弁や歪曲を重ねて日本語を愚弄するにもほどがある。世界中に喧嘩を売って原発輸出に邁進する安倍内閣。にもかかわらず、こんな政権を圧倒的に支持する日本国民の奴隷根性には、ほとほと呆れるばかりだ。

◇◇

 「あんたたちはそれでいいのか」「これがこの町の摂理なんですよ。私たちのような無能で無価値な人間はそうやって生きていくしかない」「外に出たいなら僕が連れてってあげる」「よしてくれ。われわれは現状に満足してるんだよ」(アニメ「マギ-MAGI-」第14話から)。家畜や奴隷扱いされていることに無自覚な人間は、支配統制に疑問を感じないし批判も抵抗もしない。


1月25日(土曜日) 史上最低のNHK会長

 NHK新会長の籾井勝人氏は、やはり史上最低の会長だった。さすが極右の安倍首相の子分だけのことはある。「明確に日本の立場を主張するのは当然。政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」だとさ。「独立した報道機関」の責任者の発言としてあり得ない。論外だ。

 NHK会長が「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」などと、記者会見の場で平然と述べるなんて正気の沙汰じゃない。だったら今すぐ「報道機関」や「公共放送」の看板なんか下ろして、「国営放送」を名乗るべきだ。ちょっと信じ難い知性のなさと理念の欠如ぶりに呆れる。

 政府の意のままに伝え、政府にとって都合の悪いことを伝えない放送局は報道機関ではない。そういうのは宣伝機関や広報であり国営放送と言うのだ。中学生でも知ってる。報道のイロハも理解していない、こんな人物がNHK会長だなんて。無知・無教養で見識がないにもほどがある。

 さらに、「従軍慰安婦は戦争しているどこの国にもあった。ドイツにもフランスにもあった」と持論を展開するNHK籾井会長は、品性のなさと歴史認識のお粗末さを世界に発信した。国際的に信頼され尊敬される公共放送の地位を、NHKは完全に失ってしまった。もはや即刻辞任しかないんじゃないかな。

 NHK会長が「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」と発言したことは、看過できない大問題だ。報道機関・公共放送のトップとしての資格に重大な疑義がある。この問題発言の部分をきちんと伝えないメディアもまた、NHK会長と同じように報道機関としての資質が厳しく問われるべきだろう。

NHK籾井新会長「従軍慰安婦、どこの国にもあった」(朝日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140125-00000028-asahi-soci


1月26日(日曜日) 分断される学校現場

 横浜市内で開かれた教育問題を考える集会で、ショッキングな話を2つ聞いた。1つは教員と生徒との関係の変化だ。最近の学校では、教員と教員の間が分断されているだけでなく、教員と生徒も分断されているという。

 学校現場では余計で無意味な仕事ばかり増やされて、教員は過度に多忙だ。情報交換や議論もできず、教材研究さえできない忙しさが続く。考える暇や団結する隙を与えないという話はよく聞く。しかし最近は教員の間だけでなく、教員と生徒との関係も分断されているというのだ。

 教員の自由裁量がどんどんはぎ取られている。教科書通りに教えろ、校長や教育委員会に言われたように書類を出せと命じられる。そして生徒と親は「お客様」と位置付けられ、教員はサービス業に徹するようにとの認識が広がっていく。

 成績が悪ければ教員のせいだとされ、少しでもミスがあれば謝罪に出向くことを強いられ、生徒は「授業評価」で教員を理不尽に罵倒し糾弾する。教員と生徒との信頼関係が崩れつつある。こうした教育現場への圧力に萎縮し震え上がるだけでなく、「もう耐えられない。早く辞めたい」と訴える教員が増えているそうだ。だれも幸せになれない、こんな学校はまともじゃない。

 もう一つのショッキングな話は、横浜市や藤沢市の高校で、「ヘイトスピーチ」のような差別的な意見や感想を口にする生徒が出始めているという報告だった。両市内の公立中学校では、国家主義的な内容で知られる育鵬社の歴史・公民教科書を使っているが、その影響ではないかと心配されているという。

 「ヘイトスピーチ」に加担するのは、経済的に差別されている子どもたちが多い。「国家主義的な煽動に乗せられて、外に敵を見つけて攻撃しているのかもしれない。そんな危険を感じている」と現場の教員は話していた。この先生によると、「教員の意見を押し付けるのではなく、生徒と一緒に考えて丁寧な議論をするようにしている」とのことだった。教員と生徒が分断されてしまう前に、しっかり意思疎通を図って信頼関係を築くべきだ。それこそが今まさに教育現場で求められていることだと痛切に感じる。


1月27日(月曜日) NHK会長と経営委員は即刻辞任を

 NHKの籾井勝人会長の発言で何よりも問題なのは、「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」という部分だ。独立した報道機関・公共放送のトップとしておよそあり得ないし、耳を疑うばかりの信じられない発言だ。籾井会長は即刻辞任するべきだろう。

 従軍慰安婦問題について「どこの国にもあった」と発言したことも、「政府が右ということを左というわけにはいかない」との発言も、「非常に不適当だった」「個人的意見として申し上げた」「不徳の致すところ」で済む話ではない。発言を撤回し謝罪すればそれでいい、といった問題では断じてない。

 国営放送や政府広報の責任者ならいざ知らず、権力を監視する立場の報道機関のトップとしての資質は、NHKの籾井勝人会長には全くない。こんな男を会長に選んだNHK経営委員会の責任も、同様に厳しく問われなければならない。籾井会長とともに、経営委員も全員辞職すべきだ。

 このNHK会長発言問題を放置すれば、NHKは視聴者の信頼を完全に失うことになるだろう。国内だけの話ではない。世界的に信頼され尊敬される報道機関の地位を確立したいなど、夢のまた夢になる。そればかりか、日本という国全体の見識や信頼性を大きく損ねることにもなりかねない。

 NHKは、籾井会長が記者会見で何をどう発言したのか、事実をしっかり伝え、そしてこの問題をNHKは報道機関・公共放送としてどのように受け止めているのか、ニュースと特集番組で包み隠さず詳細に検証すべきだろう。NHKにはその責任と義務がある。事態の深刻さをNHKは自覚した方がいい。

 それにしてもNHK籾井会長発言について、「不偏不党や公平をうたった放送法の順守に努める考えを示した」と伝えたきり、その後のニュースで全く取り上げようとしないNHKは、明らかに異様で異常だ。視聴者にどう説明するつもりなのだろう。報道機関としてあり得ない態度だと思う。

◇◇

 NHK籾井会長の発言によって現場の士気が低下するのは間違いのない事実だが、「NHKの番組制作が権力寄りだと誤解される」などと、民放でコメンテーターが解説しているのは事実に反する。もともとNHKのニュース部門は、露骨に安倍政権の意向を忖度し権力べったりだったのだから。秘密保護法の国会中継をせず、天皇陛下の憲法擁護発言を伝えなかった過去からも明白だ。誤解されるどころの話ではない。

 籾井会長発言を機会に、NHKの幹部とニュース部門(特に政治部)スタッフは、報道と政治権力との距離感をしっかり見極めて、権力に毅然とした態度を取るように心がけるべきだ。公共放送の先輩であるBBCの英国政府に対する毅然とした態度を、見習った方がいい。報道機関としての矜持があるならば。


1月28日(火曜日) なぜNHKは会長発言を伝えない

 NHKは衆院代表質問に対する安倍首相の答弁を伝えるニュースの中で、NHK籾井会長の発言をまるで人ごとのようにしれっと取り上げた。安倍首相は「新会長をはじめNHKの職員には、いかなる政治的な圧力にも屈することなく中立・公平な放送を続けてほしいと願う」と答弁。こちらもまるで人ごとのような口ぶりだった。これまでずっとNHKに政治的な圧力をかけ続けてきたのは、安倍晋三あんたじゃないか。よくヌケヌケとこんな答弁ができるなあ。空いた口がふさがらない。

 それにしてもNHKがニュースで触れたのはたったこれだけか。籾井会長発言について「放送法の順守に努める考えを示した」と伝えたきり、その後ニュースで全く取り上げようとしないNHKの異様な姿勢には驚かされる。従軍慰安婦発言だけが問題なのではない。秘密保護法報道についての発言も、「政府が右と言うことを左と言うわけにはいかない」との発言もすべてがあり得ない。

 政治権力との距離感も含めて、籾井会長の会見は何から何まで問題だらけの発言のオンパレードなのに、どうしてNHKはきちんとニュースで取り上げないのだ。取り上げられないのか、取り上げようがないのか、取り上げたくないのか。ジャーナリズムの世界にいる人間の一人として、これはどうしても看過できない重大問題だ。

 NHKはもはや事実上の「国営放送」だが、しかし組織的にも完全な「国営放送」にしたくないからこそ、あえて繰り返し苦言を呈している。何回でも言うが、NHKの幹部とニュース部門(特に政治部)スタッフは、報道と政治権力との距離感をしっかり見極めて、毅然とした態度を取ってほしい。

◇◇

 NHK経営委員会の浜田健一郎経営委員長が、籾井会長を厳重注意。辞任は求めなかったという。いい加減にしてほしい。「会見に臨む姿勢が甘かった」「会見で個人的見解を話した」ことが不適切だったのではない。報道機関・公共放送のトップとしての見識不足と無知、とんでもない歴史観そのものが、そもそも論外なのだ。勘違いしてもらっては困る。さらに、こういう人物を全会一致で会長に選んだ経営委員会の責任も、同時に問われていることを自覚すべし(無理だろうけど)。

NHK経営委が籾井会長厳重注意、辞任求めず(毎日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140128-00000089-mai-soci

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 小林カツ代の料理番組は、あの語り口を聞いて手際を見てるだけで心が和んだ。そして思わず御飯を作ろうという気にさせてくれた。「きょうの料理」を見て実際にレシピ通りに何回も作ったことがあるが、本当に簡単で美味しいんだよなあ。しばらく見かけないと思っていたら…。料理研究家の小林カツ代さん死去。合掌。


1月29日(水曜日) 批判されるべきは記者でなくNHK会長だ

 籾井勝人NHK会長の就任記者会見の際に、記者がしつこく食い下がって質問するのは当たり前じゃないか。相手は公共放送トップの公人なんだから。取材対象に本音を言わせる、相手の本性を露呈させるという取材の基本を遂行しただけ。批判されるべきは質問した記者ではない。批判されなければならないのは、「政府と一体となった報道姿勢」を公然と口にし、従軍慰安婦について独自の歴史観を開陳し、秘密保護法を「国会でもう決まったこと」などと片付けたNHK会長だ。

 NHK会長を必死に擁護している連中は、あまりにも無知蒙昧過ぎる。常日ごろから権力を監視して、市民に判断材料となる情報を打ち返すのが、メディアの最も重要な役割であり責任だ。そのことを理解しているなら、NHK会長の発言がどれくらいあり得ない非常識なことか、よく分かるはずだが、残念ながら彼らにそんな理解力はないか。

 NHKはもともと時の政府の意向を忖度し、政治権力にすり寄ることに長けた組織だ。これまでもNHKは十分過ぎると言っていいほど、自民党政権に沿ったニュース番組を流してきた。にもかかわらず極右の安倍政権やその支持者のネトウヨ連中が、「NHKは偏向している」と執拗にNHKを批判し攻撃するのは、事実上の国営放送では足りず、名実ともに宣伝機関として支配下に置きたい(完全に国営放送化したい)からだろう。

 教育委員会が本来の機能を果たしていないことに付け込んで、政治から独立した形の組織を解体して首長の支配下に置こうとするのも、外交問題のこじれに乗じて教科書に政府見解を書かせようとするのも、道徳の正式教科化を推進するのも、NHKを支配しようとするのもすべて同じ発想だ。

 戦前回帰の道を突き進む安倍政権。国家を頂点とした国民支配・管理・統制の思考パターンと、傲慢不遜な手法に恐怖を覚える。彼らを草の根で支える「無邪気な国民」にも、戦前の「国防婦人会」や「隣組」のような気持ち悪さを感じる。そんな国はちっとも美しくない。


1月30日(木曜日) タイムリーな「ごちそうさん」

 政権政党の意向を忖度し伝えるべきニュースを伝えないNHKの番組の中で、戦時統制に対する違和感を淡々と描く朝ドラ「ごちそうさん」がとても新鮮に映る。赤紙で幼馴染みが徴兵され、苺が姿を消し、砂糖が配給制になって、「大切なものが次々に取り上げられる」と嘆くめ以子に、近い将来の日本社会を見るようだ。

 何の問題意識もなく「御国のために」を連発していたヒロインめ以子が、幼馴染みが召集されて砂糖が配給になって、初めて危機感と疑問を持ち始める。自分の身に火の粉が降り掛かってこないと、なかなか反応できないのが世の常だということが、実によく分かるエピソードでもあった。「新たな戦前」に向かって突き進みつつある最近の政治状況と考え合わせて、なんともタイムリーな「ごちそうさん」だ。


1月31日(金曜日) 赤でも白でも同じ

 NHKの籾井勝人会長が、衆院予算委員会に参考人として出席。「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と就任会見で述べたことについて、籾井会長は「赤と白で置き換えていただければ。右とか左とか若干誤解を招く表現になった」と答弁。アホちゃうか。赤と白で置き換えても同じだろう。

 「政府が赤と言うものを白と言うわけにはいかない」と言い換えたとしても、「政府の意のままに放送します」と同義なのは小学生でも分かる。政府と距離を取り政治権力を監視する報道機関、政治的中立を維持する公共放送の役割を全く理解していないことを、改めて露呈した。NHK会長の資格は皆無だ。

 特定秘密保護法について「国会を通ったのでもうしょうがない」との発言も、報道機関のトップとしてあり得ないが、これについて籾井会長は「私的なコメントだ」と答弁。私的な見解であっても公的なコメントであっても、いずれにせよそんなことを口走ること自体、NHK会長としての資質はゼロだよ。正真正銘の馬鹿なんじゃないかな。

 しゃべればしゃべるほど墓穴を掘るNHKの籾井勝人会長。何回でも繰り返すが、籾井会長はすべての視聴者に謝罪してさっさと辞任すべきだ。もちろん資質ゼロの男を会長に選んだ経営委員会も同罪だ。全員引責辞任した方がいい。

◇◇

 東京・丸の内の日本料理店で、毎日、共同、神奈川の大先輩記者の方々と飲んだ。かなり遅い新年会という感じ。酒も肴もすごく美味しい。生ビールは驚くほどクリーミーで喉越しさっぱり。日本酒もすっきり飲みやすい。しかも安くて、東京駅の至近距離という立地。楽しかった。

 京急ウイング号に初めて乗った。わずか200円の出費で必ず座れるなんて。おまけに途中駅はノンストップという快適さ。どうして今まで利用しなかったのだろう。今度から取材や飲み会でぐったり疲れてヘロヘロ状態の時は、迷わずウイング号に乗って帰ろうと決意。


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