身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2016年11月1日〜11月30日

●アニメ映画「聲の形」●権力とメディアと市民●真の「反日」はだれか●TPPよりも「パリ協定」だろ●原発はあり得ない発電システムだ●同じ長時間労働であっても●新聞とテレビは職責を果たせ●「トランプ勝利」だけに●港南中央の味噌ラーメン●反発のベクトルが的外れ●熱狂的支持者こそ恐ろしい●早々に忘年会の日程が●宮崎駿監督がクズを一喝●Nドキュ「いのちいただくシゴト」●「御用達の超保守派」揃い踏み●メディアと有権者との断絶学生に「主権者」の自覚が●老朽原発また延長●天皇の下に国会を置けと?●やはり手塚治虫先生は神●「トランプ王朝」謁見に違和感●頓珍漢な安倍外交●また鶴保大臣か●地震列島で原発は自殺行為●やっぱり支離滅裂な安倍外交●日本の四季が壊れていく●豊洲問題の都の処分は軽すぎる●うっかり本当のことを●人の文章に手を入れるということ●廃炉費用はもっと膨らむ●百田尚樹を重用するメディアの責任●NHK「ブレイブ・えん罪弁護士」●税金を食い物にするな●新たに高速炉?馬鹿なの?●●●ほか


11月1日(火曜日) アニメ映画「聲の形」

 横浜市内の映画館で、アニメ映画「聲の形」を観た。最初の30分ほどは(原作もそうだと思うけど)見るのが辛いシーンが続いたが、教育や人間関係や聾唖者について深く考えさせてくれるとてもいい作品だった。京都アニメーションの作品らしく作画が非常にていねいなのはもちろん、内容や情景や背景や心理描写も実にしっかりと作られていた。

 実際にはこんなふうにハッピーエンドでは終わらないことが多いだろうけど、でもこのアニメ映画がハッピーエンドで終わってくれたことに救われた思いがしたし、大団円を迎える結末に心底ほっとするとともに、少し涙が出た。登場人物の多くが「自分のことが嫌い」だと感じて生きている。しかしそれでもそこから前向きに歩いていこうと、それぞれの形で必死にもがく姿に共感する。

 これだけていねいに作るためには、いやだからこそ、「聲の形」の映画化には129分という上映時間は欠かせなかったのだろうと思った。声優の早見沙織が、これほどの難しい役(ヒロインの西宮硝子)を見事に演じきったことにも感動した。


11月2日(水曜日) 権力とメディアと市民

 午後から授業。だれのために何のためにメディアが存在しているのか、について説明。その一環として、国家権力とメディアと市民の関係を解説したのだが、大半の学生が自分自身は主権者であるということを自覚した上で、講義内容をしっかり理解してくれたようで安心した。


11月3日(木曜日) 真の「反日」はだれか

 来日する外国人観光客が増加する一方で、中国人の「爆買い」に陰り──。などとテレビがしきりに伝えているが、しかし外国人観光客の増加は、目先の売り上げ(経済効果)だけに注目する話ではないはずだ。訪日外国人に日本の社会や文化を知ってもらって、親しみを感じて日本ファンになってもらうことこそが、長期的には計り知れない「国益」や「平和外交」につながる。

 それなのに排外主義の恥ずかしい街宣活動を繰り広げたり、人種差別的な態度で外国人を出迎えたりするなんてあり得ない。この国の民主主義の未成熟さや人権意識の低さを広く喧伝するだけだ。そんな情けないことを平然とするような輩こそ、真の意味で「反日」「売国奴」と呼ばれて然るべき存在だろう。そういう視点で、外国人観光客増加のニュースを伝えるべきだと思うけどなあ。


11月4日(金曜日) TPPよりも「パリ協定」だろ

 協定内容そのものが不透明だから、どこがどう問題なのかそれさえ意味不明で、しかも審議も不十分なTPP(環太平洋経済連携協定)承認案・関連法案が、衆院特別委で強行採決。自民・公明・維新の賛成多数で可決された。「わが党は結党以来、強行採決をしようと考えたことはない」(安倍晋三首相)はずなのに? そもそもTPPよりも先に、米・中・EUなど90以上の国と地域が締結して既に発効した地球温暖化対策の「パリ協定」を、まず国会で承認しろよ。恥ずかしい国だな。

 そしてもちろんいつものように、NHKは衆院特別委での強行採決を生中継しなかった。秘密保護法や安保法制(戦争法)の時と同じだ。いったい何のための、だれのための「公共放送」だというのだ。

 権力を監視して主権者たる国民(視聴者)に判断材料を伝えるというジャーナリズムの職責を果たさず、政府与党に都合の悪い情報はなるべく伝えない姿勢が終始貫徹されているのだから、NHKは事実上の国営放送(政権の広報宣伝機関)であることを自認している(否定しない)に等しい。NHKは報道機関でも公共放送でも何でもない。北朝鮮や中国の国営テレビ局と大差ない。


11月6日(日曜日) 原発はあり得ない発電システムだ

 今夜放送されたNHKスペシャル「廃炉への道2016/調査報告・膨らむコスト〜誰がどう負担していくか」は力作だった。事実上の国営放送(政権の広報宣伝機関)と化しているニュース部門とは違って、ドキュメンタリー班の番組にはまだ権力を監視する記者の志が残っているようで、ジャーナリズム精神が発揮されていた。安倍晋三首相の「福島はアンダーコントロールされている」発言にも触れた上で、東電の事故負担責任を回避させようとする「国と財界の原発政策」の矛盾や今後の課題をしっかり掘り下げていた。

 これまで原発を容認してきた国民にも責任がある、だから税金や電気料金の形で、福島原発事故の賠償・除染・廃炉にかかる莫大な費用を国民に負担させる──、という考え方には確かに一理あると番組を見て思った。しかしそうであるならば、これからはどうするのか。どんどん増え続ける廃炉などの費用を負担しながら、それでもまだ原発再稼働を認めるのか。

 今後、再稼働を認める国民からは、税金も電気料金も2倍・3倍あるいはそれ以上を徴収するようにしてもらいたい。原発再稼働を認めるか認めないかの意思表示をさせて、それに応じて廃炉費用などのコストを負担するようにすべきだ。果たしてそれでも原発再稼働を国民は容認するだろうか。

 原発はちっとも経済的ではない。原発の経済効率が絶望的なまでに悪いのは明白だ。しかも国民にのしかかる負担は、福島原発事故の処理費用だけではない。現在運転を停止している全国各地の原発の廃炉にも、当然これから莫大な費用が費やされる。再稼働している原発にしても同じだ。そして放射性廃棄物の処理と管理費用も。原発が「あり得ない発電システム」なのは間違いない。

 Nスペ「廃炉への道2016」の再放送は、11月12日(土)午前0時10分〜午前1時04分(11日深夜)。


11月7日(月曜日) 同じ長時間労働であっても

 自分の意思で意欲や志を抱いて、喜びや意義や必要性を感じ進んで仕事をすることと、何の喜びも感動も価値も見いだせず、意思に反して一方的に命じられた仕事をこなすこととは、仕事に対する思いが天と地ほどの差がある。同じように1日に16時間以上働いて徹夜が続いたとしても、前者と後者では「労働」の意味が全く違ってくる。

 職場環境や同僚らとの人間関係、上司の対応によっても、そうした状況は一変する。同じ長時間労働をするにしても、納得できるかできないか、自分自身にとっても必要な仕事だと思えるか思えないか、前向きに受け止められるか受け止められないか、本人の精神状態は大きく左右される。教師でも記者でも編集者でもアニメーターでも、どんな職業でもそれは同じだと思うよ。


11月8日(火曜日) 新聞とテレビは職責を果たせ

 大阪府警の機動隊員の「土人発言問題」について、鶴保庸介・沖縄北方担当相が「土人であると言うことが差別であるとは断定できない」と参院内閣委で答弁。「言論の自由はどなたにもある」とも述べた。「言論の自由」をはき違えた詭弁。というよりも暴言そのものではないか。閣僚のこんなふざけた発言が許されるのは、新聞やテレビなどマスメディアが大々的に厳しく批判しないからだ。

 首相や閣僚らの嘘や詭弁や暴言やはぐらかしや開き直りが何回も繰り返されても、辞任もせず内閣総辞職にもつながらないのは、メディアが権力監視の職責を果たしていないからにほかならない。彼らが懲りずに何回も暴言を繰り返すのは、つまり主権者がなめられているということだ。安倍政権の発足前なら、まずあり得なかった異常事態だ。メディアの責任は何よりも大きい。

 伝えるべき事実を(一部メディアが)報道しないのは論外だが、報道したとしてもただ伝えればいいという話ではない。問題を起こした公人が辞任するまで、大々的に厳しく批判し続けなければならない。それこそが権力監視の役割を果たし、主権者たる国民の代弁者として機能するということだろう。

 憲法も人権も公然と無視し愚弄し蹂躙する、そんな頭のおかしな政治家と政権をのさばらせている最大の原因と責任は、マスメディアにこそある。

沖縄「土人」発言:鶴保担当相「差別とは断定できない」(毎日)

http://mainichi.jp/articles/20161108/k00/00e/010/265000c

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 博多駅前の道路陥没は実に恐ろしい光景だけど、陥没現場の映像を見ると、建物の基礎工事の重要さが改めてよく分かる。むき出しになった地下の基礎部分の杭にしっかり支えられているから、かろうじてビルは倒壊せずに建っている。基礎工事がいい加減だったら即座に崩れ落ちるだろう。どこかのマンションのように、地盤まで杭が届いていない手抜きの欠陥工事でなくて本当によかった。

 道路や信号機や土砂が次々と穴の中に飲み込まれていく映像からは、円谷プロの特撮かと思うほど「リアルな怖さ」が伝わってきてぞっとする。福岡市交通局の地下鉄工事の工法とチェック体制が、不適切でいい加減だったのが最大の原因と言っていい。地上でも地下でも事故に巻き込まれて多数の死傷者が出なかったのが、不幸中の幸いとしか言いようがない。


11月9日(水曜日) 「トランプ勝利」だけに

 米大統領選挙。開票開始の時点からずっと、選挙人の獲得数とは別に、クリントンとトランプの獲得票数は50万票差、100万票差、そして200万票差(日本時間午後1時半ごろ)と広がる一方だったもんなあ。オハイオ州とフロリダ州をトランプが制したところで勝負が決まった感じだ。

 午後から講義のために大学に出かけたら、米大統領選の話題で持ち切りだった。財政学や経済学の先生は、株価急落や為替相場、今後の世界経済がどうなるかを論じている。一方、教室では後ろの席の学生が、机の上にトランプのカードを広げていた。トランプ勝利だけに。いやマジで(苦笑)。

 そんなわけで、きょうも先週に引き続き、主権者たる国民と国家権力と、そしてメディアの果たすべき本来の役割に関しての講義。とても反応や食いつきがよい。リアクションペーパーの書き込みも上々だった。主権者としての意思表示と情報の取捨選択の重要性について、理解はかなり深まったはず。もちろんタイムリーな話題として、米大統領選の話もした。その上で、自由でもなく民主主義の国でもない、「アメリカ合州国」(合衆国ではない)の差別社会の現実についても触れる。

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 夕方、横浜・港南中央の札幌らーめん・親(しん)で食べた味噌ラーメン=写真。うまっっっ。札幌ラーメン特有の縮れ麺にほんのり甘い味噌が絶妙に絡む。タマネギやモヤシなど野菜のシャキシャキ感がたまらない。でっかいチャーシューと海苔も存在感を誇示。有名店ではないけれど、横浜では数少ない美味しい味噌ラーメンの一つだと思う。やっぱり味噌ラーメンは最高だなあ。


11月10日(木曜日) 反発のベクトルが的外れ

 支配層や既得権層に怒って反発する人々が、疎外されていると感じて、米大統領選で既成政治に対し反乱を起こしたという背景はなんとなく分かる。しかし抗議や抵抗のベクトルが的外れだ。トランプ支持者の多くが当然のように、迷いなく、移民や女性や異教徒、異民族、そして弱者(「自分」よりも下層と見ている人たち)を排斥し差別し侮蔑する光景にぞっとする。それが米国社会だけの風潮ではないところに、なおさら不安と恐怖が募る。

 無知で無教養で知性も品性も謙虚さのかけらも持ち合わせていないのは、アジア最果て島国のこの国の首相や政治家も同じだ。もっと深刻で残念かもしれない。しかも理解力がない上に傲慢不遜で思い込みだけがやたら強いから、まったくもって始末に負えない。


11月11日(金曜日) 熱狂的支持者こそ恐ろしい

 トランプ本人はもちろんだけどそれよりも、トランプを熱狂的に支持している周囲の人たちの方が怖いんだけど。一方的な情報を鵜呑みにして、思い込みが激しくて、憎悪や攻撃の対象となるものをつくり出して一斉に非難し排除する。古今東西まるで変わらない。良識と知識と知性の欠如した人々には、残念ながら道理や普遍的真理は通じない。もちろん米国だけの話ではない。日本でも状況は大して変わらない。むしろもっと酷いかもしれない。

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 大阪府警機動隊員による「土人」発言の擁護を繰り返し、「差別であると断定できない」との姿勢を変えない鶴保庸介・沖縄北方担当相について、夕方のニュースでも夜のNEWS23でも、しつこく詳しく大々的に伝え続けるTBSの報道姿勢を断固支持する。公然と差別を擁護し助長するこういう頭のおかしな「公人」は、徹底的に追及しなければならない。公権力を監視するメディアが果たすべき当然の職責だ。

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 日印首脳が、インドへの原発技術の移転や輸出に道を開く原子力協定に署名。現在もこれから先もずっと事故処理が続く福島原発の大惨事から何も学ばず、日本国内で原発再稼働を目論むだけでは足りず、核不拡散条約(NPT)非加盟の核兵器保有国のインドにも拡散するとは、正気の沙汰ではない。安倍晋三と自民党(それと財界と電力会社も)は狂ってる。

 日印原子力協定に対し、インドの反核団体などから失望の声が上がっているという。「戦時の原爆被害と原発事故をともに経験した世界で唯一の国の政府が、協定署名を決断するとは思わなかった」(朝日)。至極もっともな感想だと思う。日本国民はもっと怒るべきだ。安倍政権と心中なんて御免蒙る。この期に及んで、それでもなお「原発は経済的でクリーンで安全なエネルギーだからこの国に必要だ」などと主張している連中は、申し訳ないけどマジで頭がおかしいとしか思えない。


11月12日(土曜日) 早々に忘年会の日程が

 午後から都内。新宿区内の弁護士事務所で、都教委を相手取って不当処分の損害賠償を求める裁判の弁護団会議に参加。原告の都立高校教諭に対し、時期外れの人事異動が発令された。第1回口頭弁論の当日付の発令だったが、思ったほど酷い嫌がらせのような異動ではなく、本人への不利益は(現時点では)なさそうで、教諭自身も特段の不満はないと言うのでほっと安心した。

 まだ11月中旬だというのに、予約の都合もあるということで、早々に今年1つ目の忘年会の日程が決まる。そうか、もうそんな時期なんだなあ。今年も残すところあと1カ月半か。あっという間に時間が過ぎる感じがするので、すごく焦る。


11月13日(日曜日) 宮崎駿監督がクズを一喝

 NHKスペシャル「終わらない人・宮崎駿」は実に興味深く面白い内容だったが、中でも最も印象に残ったのは、宮崎駿監督がドワンゴ会長の川上量生を真っ向から全否定し一喝するシーンだ。番組の終盤で、ドワンゴの川上は人工知能で映像処理した画像を宮崎監督にプレゼンする。

 「痛覚がないので頭を足のように使って移動する動きが気持ち悪い」「人間が発想できない気持ち悪い動きができる」などと得意げに説明するドワンゴの川上に対し、宮崎監督は満身の怒りを込めて反論するのだ。

 「身体障害者の友人がいるんですよ。ハイタッチするだけでも大変なんです。その彼のことを思い出してね。僕はこれ(川上が得意げに見せたCG画像)を面白いと思って見ることができないんですよ」「これを作る人たちは、痛みとか何も考えないでやっているでしょう。極めて不愉快ですよね」「僕はこれを自分たちの仕事とつなげたいとは全然思いません。極めて何か生命に対する侮辱を感じます」──。

 宮崎監督は吐き捨てるように、しかし毅然と怒りと軽蔑の気持ちを込めて、ドワンゴ会長の川上量生たちの作った画像を一刀両断した。

 宮崎監督にそこまで言われても、何が逆鱗に触れたのか、自分たちのどこが問題なのかも理解できず、「これって実験なんですよ」「人間と同じように絵を描く機械を作りたい」と開き直るドワンゴ関係者たち。そんな彼らのクズっぷりに、怒りと悲しみに満ち満ちた眼差しを向ける宮崎監督の表情を、Nスペのテレビカメラはしっかりと映し出していた。

 たぶんだからこそ宮崎駿監督はもう一度、長編アニメーションを作ろうと決意したのだろう。そんなふうに思わせる、実に貴重で興味深い場面だった。

 【追記】残念ながらネット上では、むしろ、ドワンゴ川上に怒る宮崎駿監督を非難する声が少なからずあるようで、世も末だなと思うとともに問題の根深さ深刻さを感じます。そういう状況に強い危機意識を募らせた宮崎監督が、再び自ら長編アニメに取り組まなければと奮起し、それが創作のモチベーションにつながったのかもしれません。

 NHKスペシャル「終わらない人・宮崎駿」の再放送は、11月16日(水)午前0時10分〜0時59分(15日深夜)。NHK総合テレビ。(追記=2016/11/14)

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 「孤独のグルメ」の主人公・井之頭五郎は食事の際に、「いただきます」「ごちそうさま」を必ず言う。料理をしてくれた人だけでなく、食べ物となってくれた生き物すべてに感謝する言葉だ。今夜放送されたNNNドキュメント「いのちいただくシゴト〜元食肉解体作業員の誇りと痛み」(くまもと県民テレビ)を見て、「いのちをいただくありがたさ」を改めて痛感する。

 漫画「銀の匙」では北海道の農業高校の生徒が、名前を付けて育てていた豚を食肉として出荷する際に激しく葛藤するシーンが出てくる。「いのちをいただく」とはそういうことだ。だからこそ、いのちを大切に、感謝しながら美味しくいただかなくてはならない。

 もちろん今でも食肉解体や被差別部落に対する差別や偏見は依然として残っているが、それでもかつてに比べたら「いのちをいただく」こととその過程が、ずっとオープンに語れる時代になったと思う。僕が新聞社で取材して記事を書いていたころは、文字通り腫れ物に触るような扱いだったもんなあ。何本の原稿をボツにされたことか。

 今夜は素晴らしいドキュメンタリー番組を2つも見ることができて、本当によかったなあと心から思う。


11月14日(月曜日) 「御用達の超保守派」揃い踏み

 天皇の生前退位を検討する政府の有識者会議の2回目ヒアリングに、超保守派(超タカ派)が揃い踏み。安倍政権の意向を見事に体現し、「専門家」6人のうち4人が退位に反対や慎重な考えを表明したという。安倍首相と安倍政権にとっての天皇陛下は、都合よく使えればいいだけの「お飾りとしての道具」といった認識なのだろう。

 渡部昇一・上智大学名誉教授「国民の目に触れるような活動はありがたいが本当は必要ない。皇太子殿下が摂政になれば何の心配もない」。ジャーナリストの櫻井よしこ氏「譲位ではなく摂政の制度を活用するのがよい」。笠原英彦・慶應義塾大学教授「退位は認められない」。今谷明・帝京大学特任教授「現状がベスト。しばらくこの問題は塩漬けにすべきだ」(NHKなど)。

 いわゆる本物の右翼の方々は、こうした彼らの動きをどう思っているのだろう。

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 そして、それでも安倍内閣の支持率は上昇を続けているそうで、先月よりも5ポイント上がって55%なのだという(NHKの世論調査)。メディアが伝えるべきことをしっかり伝えていないのが最大の原因だとは思うけど、しかしそれにしても、いくらなんでもこりゃあんまりだ。脱力する。

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 11月13日付「身辺雑記」の「宮崎駿監督」の記事の後に、追記を掲載しました。


11月15日(火曜日) メディアと有権者との断絶

 【メモ】15日付朝日・国際面の特集記事。米大統領に選ばれたトランプ氏と有権者とメディアの関係が、日本社会と重なって見えてくる。「既得権層」と見なされたメディアと有権者との断絶・乖離・不信感。そんな市民の不満の声を上手にすくい上げて、メディア攻撃を展開するトランプ氏。考えさせられる良記事。

<既存メディア、問われる役割、トランプ氏という「怪物」を生み出し、その本人に「既得権層」と敵視された>(朝日)

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12657889.html?ref=nmail_20161115mo


11月16日(水曜日) 学生に「主権者」の自覚が

 このところ授業で「主権者」という言葉を頻繁に使う。きょうも10回以上は言ったと思う。「君たちはこの国の主人、主権者なんだよ」「権力を監視し、主権者である皆さんに判断材料を伝えることこそが記者の仕事、ジャーナリズムの最大の役割なんだから」などなど。メディアは何のためにだれのために存在するのか、情報を鵜呑みにせず取捨選択する力を養うことがなぜ必要なのか、主権者として意思表示するとはどういうことか──、といったことを少しずつ考え始めてくれている。学生の主権者としての自覚が着実に高まっているのを実感する。

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 原子力規制委員会が、運転開始から40年を迎える関西電力の美浜原発3号機(福井県)に対し、20年間の運転延期を認可した。高浜原発に続いて2例目。老朽化した原発の運転期間を原則40年とするルールが、またもやあっけなく破られた。まさに骨抜き。これのいったいどこが「例外」だというのか。ただでさえ危険な存在なのに、古くなった原発を使い回して安全なわけがないだろう。原子力規制委は、自民党政権と財界と電力会社の御用聞き・再稼働延命追認機関でしかない。


11月17日(木曜日) 天皇の下に国会を置けと?

 自民党の安藤裕・衆院議員が、衆院憲法審査会で天皇退位について、「旧憲法(明治憲法)のように国会の議決を経ずに皇室の方々でお決め頂き、国民はそれに従うという風に決めた方が日本の古来の知恵だ」「天皇の地位は日本書紀における天壌無窮に由来するものだ。日本最高の権威が国会の下に置かれている」と述べ、憲法改正を主張した。

 主権者は日本国民だという「この国の大前提」を、まったく理解していない信じ難い暴言だ。こんな国会議員が存在すること自体が犯罪的で、到底あり得ないし許されない。自民党の安藤裕・衆院議員は、即刻議員辞職すべきだ。公民権も剥奪されて然るべき重大発言だと思う。

 このような連中が憲法審査会で議論しているなんて、とんでもない。悪い冗談としか思えない。憲法は国家権力の暴走を規制し縛るための国の最高法規だ。立憲主義とはどういうものなのか、そんなことも分かっていない国会議員が憲法を変えようとするなど言語道断だ。そもそも議論すること自体が断じて認められない。

「天皇の地位は日本書紀に由来」退位巡り自民・安藤氏(朝日)

http://digital.asahi.com/articles/ASJCK3T7DJCKUTFK004.html

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 寸前まで見ていた「モニタリング」の「未来から来た妻」のコーナーの貧乳妻と、「ドクターX」の決め台詞が頭の中で一瞬混ざり合って、大門未知子(米倉涼子)の肝心の場面で「私おっぱいないので」(←私失敗しないので)と聞こえてしまったのは、ここだけの秘密だ(汗)。


11月18日(金曜日) やはり手塚治虫先生は神

 【メモ】NHK教育「100分de手塚治虫・創作の謎に迫る」(再放送)は、あれこれ考えさせられる深い考察が交錯したいい番組だった。途中から見始めたのが悔やまれる。幅広い教養、創作意欲、次々に湧き出る物語、輪廻転生、生きるということ──などなど。結論。手塚治虫先生はやはり別格だ。漫画の枠組みを超越した神の領域の存在だと改めて思う。


11月19日(土曜日) 「トランプ王朝」謁見に違和感

 トランプ次期米大統領の私邸を訪れて初会談した安倍首相。「トランプ氏はまさに信頼できる指導者だと確信した」。ありゃりゃ。恥ずかし気もなく、あっさりとそんなこと言っちゃって。そんなに簡単に確信したのかよ。しかもまるでトランプ王朝の謁見のような光景。「トランプ一家」を前にした首脳会談に違和感ありあり。


11月20日(日曜日) 頓珍漢な安倍外交

 北方領土について「2島返還で決着か」みたいなアドバルーンをしきりに上げて、これまで日本国内の世論誘導・情報操作を必死に図ってきた安倍政権。しかしここにきて、ロシアが1ミリたりとも領土を返す気などないことをようやく悟ったらしい。南米ペルーでプーチン大統領と会談した後、安倍首相は「大きな一歩を進めることはそう簡単ではない」と強調し軌道修正を始めた。

 12月に訪日するプーチン大統領を地元の山口に招いて、外交成果をぶち上げるという目算があっさり崩れた格好だが、領土問題に対して楽観的すぎるしアホすぎる。あまりにも頓珍漢で残念で間抜けな安倍外交。無駄に外遊して貴重な国民の税金をばらまくことしか、やはり安倍首相の頭にはないらしい。


11月21日(月曜日) また鶴保大臣か

 またこいつか。鶴保庸介・沖縄北方担当相の政治資金パーティー券200万円分を、山梨県のホテル経営者が他人名義で購入。その直後、この経営者が副代表を務めるNPO法人が観光庁の補助事業に選ばれたという。上限を超えたパーティー券購入も名義偽装も政治資金規正法違反だが、それよりも呆れるのがあまりにも露骨な口利き行為だ。利益誘導そのもの。これこそ大問題ではないか。「全額返金した」で済む話ではない。

 沖縄での機動隊員の土人発言擁護といい、「選挙と沖縄振興策はリンクしている」「普天間移転を早く片付けてほしい」などの暴言といい、この男は沖縄担当相として不適格なだけでなく、国会議員としても人としても問題があり過ぎる。そもそもこんなとんでもない男を大臣に任命したことが、何よりも重大問題。安倍首相の任命責任こそ厳しく問われるべきだ。

<NPO副代表>鶴保氏のパーティー券、上限超え購入(毎日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161120-00000006-mai-soci

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 【おことわり】11月18日付から21日付までの「身辺雑記」をまとめて更新しました。


11月22日(火曜日) 地震列島で原発は自殺行為

 福島第一原発と福島第二原発に津波が到達し1メートルの潮位上昇を確認。福島第二原発では使用済み燃料プールの冷却装置が一時停止(1時間40分後に冷却再開)。いずれも異常はないということだが、今後も地震の揺れによる倒壊はもちろん、津波、停電の可能性は常につきまとう。福島以外の全国の原発でも同じだ。まさに綱渡り状態ではないか。今のところ原発が無事なのは偶然でしかない。たまたま運がよかっただけだろう。再び福島原発事故のような大惨事が起きたら、いったいどうするつもりだ。

 これまでもう何回も言ってきたが繰り返し書いておく。こんな地震列島で原発を動かすなんてあり得ない。自殺行為だ。無理だし無謀でしかない。いったん原発で事故が起きれば、取り返しのつかない甚大な被害が長期間・広範囲に及ぶ。そもそも原発は安全でもクリーンでも経済的でもない。いい加減に気付けよ。

 【データメモ】22日午前5時59分ごろ、福島県沖を震源とする地震が発生。福島、茨城、栃木の各県で震度5弱の揺れ。気象庁は福島県と宮城県の太平洋側沿岸に津波警報を、青森県から伊豆諸島にかけて津波注意報を発令。小名浜で60センチ、相馬で90センチ、仙台港で1メートル40センチの津波を観測した。横浜は震度3だった。

 【発生時メモ】かなり長い横揺れが続いている。マジで長い。少なくとも1分以上揺れている@横浜南部。震源は福島県沖。震度5弱。福島県の沿岸に津波警報。NHKの男性アナウンサーが早口でやけに興奮気味なのが気になる。気持ちは分かるけど、焦りや不安を煽るような口調だと思う。まくし立てるので威圧感や圧迫感もある。もう少し落ち着いてアナウンスして。


11月23日(水曜日) やっぱり支離滅裂な安倍外交

 大統領就任前のトランプのもとに一目散に馳せ参じたのに、トランプはあっさりTPPからの離脱を明言。ロシアのプーチン大統領とは親密な関係をしきりにアピールしながら、ロシア軍は北方領土の国後・択捉の両島に最新鋭のミサイル配備を完了。必死に売り込んだ日本の原発は、ベトナム国会が福島第一原発事故を考慮して安全性を見直し、原発輸入計画を撤回。どれもこれもまるでちぐはぐで支離滅裂な安倍外交。ベトナムの原発計画撤回はあっぱれだと思うけど、当然の判断だろう。ベトナムの政治家は先見の明がある。

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 詭弁というか、これぞ屁理屈の最たるものではないか。言ってることがすべて事実に反する曲解とこじつけ。自分たちに都合のいいように事象を解釈するのは、安倍政権の十八番ではあるけど。安倍政権のオトモダチは、どれもこれもそろって度し難い。

トランプ政権「オバマ氏より期待」萩生田官房副長官(朝日)

http://digital.asahi.com/articles/ASJCR6378JCRUTFK00X.html


11月24日(木曜日) 日本の四季が壊れていく

 参院特別委員会で「何をもってトランプ氏を信頼できる指導者だと確信したのか」と問われ、安倍首相は「現職大統領への敬意をしっかりと持っている姿勢を高く評価した」と答弁。失笑。まったく意味不明。安倍首相との会談直後にトランプ氏はTPP離脱を表明した。それでも今国会でのTPP承認を目指すと言い張る安倍。頭がおかしいとしか思えない。

 そもそも安倍首相自身は、現職大統領のオバマ氏に敬意を払っていないから、就任前のトランプ氏のもとに真っ先に馳せ参じたのではないのか。安倍の言動は何から何までワケがワカラン。別に今に始まったことではないけれど。

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 石破茂・前地方創生相「『押しつけ憲法』と言う人もいるが、私はそう思っていない。形式的には大日本帝国憲法の改正手続きを踏んでいる。よしんばそうだったとしても……」。石破氏のこういうところが真摯で誠実だと感じる。政治思想的な立場の違いは別にして、人として信頼できる。知性と教養と良識のある人柄がにじみ出ていると思う。どこかの首相とは大違いだ。

 どこかの国の首相(安倍首相だよ)は人として信頼されていないから、外国首脳といくら会談を重ねても相手にされないし、内心では尊敬とはほど遠い感情しか抱かれないのだろう。はっきり言うと軽蔑され馬鹿にされている。だから安倍外交は無惨で惨憺たる結果になるのだ。諌める者がだれ一人としていない、この国の悲劇。そもそも安倍首相には聞く耳も理解力もないわけだけど。

「押しつけ憲法と私は思っていない」石破氏(朝日)

http://digital.asahi.com/articles/ASJCS6VJ2JCSUTFK01L.html

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 午前中は結構大粒の雪が激しく降り続いていたが、昼過ぎからはみぞれ混じりの雨になった横浜南部。積雪はなかった。海沿いだからかな。そんな寒い雪の中、宅配便の荷物を届けてくれた若い女性ドライバーさんに頭が下がる。本当にご苦労様です。

 東京で11月に初雪が観測されるのは1962年以来54年ぶりで、同じく積雪の観測は史上初だという。最近は春と秋がなくなってしまったようだ。過ごしやすくて穏やかな季節は、日本ならではの風情のはずなのに。日本の四季が壊れていく。

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 泉ピン子が出てこない「ドクターX」は安心して楽しめる。今夜の「ドクターX」はオーソドックスな展開で、しかしピアニストと事務所スタッフとの純愛的要素もドラマに盛り込まれていて、今シリーズの中でも抜群に面白かった。


11月25日(金曜日) 豊洲問題の都の処分は軽すぎる

 【テレビ】「ブレイブ・勇敢なる者/えん罪弁護士」(NHK総合)。11月28日(月)午後10時25分〜午後11時15分。有罪率99・9%の日本の刑事裁判で、無罪判決14件を勝ち取ってきた今村核弁護士に迫るドキュメンタリー番組。僕も微力ながら取材に協力しました。

(番組公式サイト)http://www4.nhk.or.jp/P4012/

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 衆院憲法審査会で「立憲主義」をテーマに議論。<自民党の改憲草案は国民にも尊重義務を課す内容。自民党の中谷元氏(与党筆頭幹事)は、これについても「国民も憲法を尊重すべきことは当然」と指摘した>(東京新聞)。憲法は権力者の暴走を規制して縛るための最高法規だ。憲法遵守義務は権力者の側にこそある。その憲法に基づく政治制度が立憲主義なのだが。

 立憲主義の基本をまるで理解していない頭の悪さに唖然とする。こんな連中が国会の憲法審査会で憲法を議論しているとは。この国の国会議員のレベルの低さに恐怖する。「怒り」よりも「恐怖」という言葉しか浮かんでこない。

表現の自由に制約「当然」、自民、改憲草案撤回せず(東京)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016112590070454.html

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 豊洲市場の盛り土問題で小池百合子都知事は、中央卸売市場の歴代市場長を含む幹部・OB計18人を減給とする懲戒処分を発表。最も重い処分でも減給5分の1(6カ月)。軽すぎる。有権者に虚偽の説明を続けてきた責任は重大で、都民に対する背信行為の最たるものではないか。懲戒免職に相当する。退職金もすべて自主返納させて、天下り先からも完全に追放されるべきだ。「一方的な処分だ」などと開き直って反論している元幹部は論外だ。「公僕」だったことの責務に無自覚すぎる。

 豊洲問題では小池都知事自身も「けじめをつける」として、自身の給与を5分の1(3カ月)減額することを表明したが、だとしたら石原慎太郎・猪瀬直樹・舛添要一の3人の歴代都知事の方が、なおさら「けじめ」をつけなければならないはずだ。釈然としない。最も責任を負うべきなのは石原慎太郎だろう。


11月26日(土曜日) うっかり本当のことを

 自衛官募集のビラに、「稲田防衛大臣(女性)は少々頼りないですが、頼れるあなたはぜひチャレンジを」と、ついうっかり本当のことを書いて配布しちゃった自衛隊秋田地方協力本部大館出張所。できれば「稲田防衛大臣は(頭が)少々足りないですが」と、あともう一歩踏み込んでほしかったかな。

「防衛大臣頼りないノ」自衛官募集ビラ不適切で回収(日刊スポーツ)

http://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/1743427.html

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 「駆けつけ警護を嫌がっているわけではありません。だけど、私たちは何を守るのかと思うことはある」と自衛隊幹部の一人。一方、外務省の官僚からは「自衛隊員が血を流すような国にならなければ、日本は信用されない」との声。<自衛隊員の多くは、日本が攻められた時、日本を守るためにこそ、血を流す覚悟をしている。自衛隊と外務省の間には、思いのほか深い溝があるように見える。>(25日付朝日「社説余滴」から)

社説余滴・1万2千キロ彼方の自衛隊(朝日)

http://digital.asahi.com/articles/DA3S12674642.html


11月27日(日曜日) 人の文章に手を入れるということ

 他人の文章を無造作に書き換える人が、僕は我慢できない。事実誤認や勘違いをただして、より読みやすく分かりやすく的確な文章に修正してくれるのなら、もちろん謙虚に受け入れるし心からありがたく思う。しかしこちらが助詞や句読点や動詞や形容詞、全体のリズムにいたるまで配慮しながら書いた文章を、断りもなく勝手に直した挙げ句、それが読みにくく分かりにくく改悪されていると、愕然とするのを通り越して強い憤りを感じる。

 無神経で無自覚で身のほど知らず。新聞記者時代もそういうデスクがいたし、出版社や雑誌編集部やネットメディアにもそういう編集者が少なからずいる。思い込みだけで一方的に解釈し、事実関係の確認もせずに勝手に書き換える、といった論外のことが行われることも信じ難いがたまにある。

 もちろん世の中には、自分の文章に手を入れられることにまるで無頓着な人もいる。人それぞれだから、それはそれで構わないと思うけど、少なくとも僕は自分の文章が納得できない形で勝手に書き換えられることには、ものすごく抵抗がある。それっておかしいのだろうかと、先輩記者に聞いたことがある。

 返ってきたのは、「自分の文章に誇りを持ち大切にするのは当然だろう。それが自分の文章に責任を持つということだ。手を入れられて勝手に直されても平気な方がむしろおかしいし、そんな記者は信用できない」という言葉だった。安心した。僕もそう考える記者の一人だからだ。

 署名入りの原稿ならなおさらだ。自分の名前で取材し執筆しているのだ。原稿に関してすべての責任を負っているのだから、いい加減な修正をされてはたまったものではない。納得できない修正に対しては、納得できるまで異議を申し立てる。ただし自分がさほど責任を負っていない原稿であれば、事実関係に誤りがない限り、文章を書き換えられても文句は言わない。

 文章に対するこうした姿勢は、僕自身が他人の文章に手を入れる場合も同様だ。書いた人の文章や表現を最大限尊重する。その上で誤字脱字や事実誤認を指摘し、できるだけ読みやすく分かりやすくなるように修正するようにしている。大学で学生の文章を添削する場合もそれは変わらない。

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 福島第一原発事故の廃炉や賠償の費用が、従来想定していた2倍の20兆円超になると経済産業省が試算しているという。実際にはそんなものでは済まない。もっと膨らむだろう。溶け落ちた核燃料を取り出す作業が、どれほど困難を極め危険で莫大な費用と時間と人員を要することか。東京五輪なんかやってる場合じゃないのに。

 地震列島のこの国では、取り返しがつかない大事故が再び起きる可能性が否定できない。その場合にいったいだれがどのように責任を取るというのだ。今のこの状況でも東電も政府も自民党も無責任なのに。そもそも原発は人類の手に負えるような発電システムではない。それでもまだ原発を動かすというのか。福島は「アンダーコントロール」なんてされていない。

<福島原発事故>廃炉・賠償20兆円へ、従来想定の2倍(毎日)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161127-00000068-mai-soci

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 デマと差別発言を繰り返し振りまいて、そればかりか反論や言い訳も詭弁。意見や感想や推論を述べることと、根拠のないデマを拡散することは全く違う。そもそもこんな人物をメディアが無批判・無自覚に重用していることこそ大問題だ。出版社や映画会社やテレビ局は、この男のデマと差別発言を助長し幇助しているに等しい。百田尚樹氏が小説を出版したければ、町の印刷屋で印刷して自費出版で。映画を作りたければ自主制作で。

【千葉大生集団強姦】百田尚樹氏「犯人は在日外国人ではないか」とツイートし波紋、津田大介氏「この人のアカウントを停止すべき」(ハフィントンポスト日本版)

http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/26/hyakuta-talks-about-incident_n_13261214.html


11月28日(月曜日) NHK「ブレイブ・えん罪弁護士」

 NHK総合「ブレイブ・勇敢なる者/えん罪弁護士」の放送が無事に終わった。ていねいに取材されている素晴らしい番組だった。刑事裁判のおかしさ、刑事弁護の重要さと大変さ、今村核弁護士の内面、苦悩や葛藤にもしっかり踏み込んで制作されていた。さすがだと思う。活字畑の人間としても見ていて大いに刺激になった。担当の佐々木健一ディレクターをはじめ、番組スタッフの皆さま、本当にお疲れさまでした。

 これまでにもう何回も指摘していることだけど、事実上の国営放送(安倍政権の広報・宣伝機関)と化しているNHKのニュース部門とは大違いで、同じNHKでもドキュメンタリー班の取材姿勢は半端じゃない。本当にいい仕事をしていると心から思う。「ブレイブ・勇敢なる者/えん罪弁護士」の取材スタッフに拍手。

 決して儲かることはなく、誠実に真摯に仕事をすればするほど困窮するのが刑事弁護だ。今回のNHKの番組放送によって、今村核弁護士の法律事務所内での「肩身の狭さ」が、少しでも軽減されたらいいなあと心から願っている。そもそも今村核弁護士の存在と弁護活動の成果によって、事務所の名声は以前から確実に高まっているとは思うけど。

 微力ながら僕も今回の取材に協力し、ほんの少しだけ番組にも登場した。放送直後、駆け出し記者のころお世話になった取材先の市役所の元職員の方から「テレビを見たよ」と電話をいただいたり、教え子から感想のメールをもらったりして、改めて「公共放送」の威力と影響力を痛感した。

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 覚醒剤を再び使用したとして逮捕されたASKA容疑者のニュースを、延々と流し続けるテレビ各局。ごった返す容疑者の自宅前を嬉々として映し出す狂騒ぶり。NHKは夜7時のニュースとNW9でもトップ項目で10分以上も使って伝え、さらに追加情報まで手厚く報じた。それで、福島原発の廃炉費用倍増問題や年金抑制法案は? 権力を監視し伝えるべきことを伝えないなら、それはもはや報道機関とは言えない。

 ASKA容疑者のニュースを伝えるなと言っているのではない。伝え方と時間配分を考えるべきだし、ほかにもっと大きく伝えるべきニュースがあるはずで、それをもっと大々的にしっかり伝えるべきだということだ。誤解のないように念のため。主権者たる国民に判断材料を提供するのが、ジャーナリズムの最も重要な役割なのだから。


11月29日(火曜日) 税金を食い物にするな

 五輪組織委員会や競技団体は、どうしてそこまでハコモノに固執するんだ。目先の利益からハコモノを欲しがるのだろうが、将来にわたって莫大な維持管理費(負の遺産)を抱えることになるのは必然なのに。そもそもだれの金が使われると思っているのか。怒りを覚える。既存施設を活用すればいいではないか。

 当初計画では「コンパクト五輪」だったはずが、3兆円、4兆円と膨らむ五輪開催費用。一方、福島原発の廃炉費用は20兆円でも足らない。年金はカット。医療費は負担増、教育福祉予算は削減。税金を自分たちの金だと勘違いし、国民を食い物にして私腹を肥やし無駄銭を使う連中に、はらわたが煮えくり返る。

 500億円とか600億円もの巨額の税金を使ったハコモノ(競技施設)を造らなければ「いい競技ができない」と言うのなら、そんなオリンピックなんて要らない。東京での五輪開催なんか止めちまえ。このままいくと、そういう思いを強くする人は今後さらに増えるばかりだと思うよ。


11月30日(水曜日) 新たな高速炉?馬鹿なの?

 政府は高速増殖原型炉「もんじゅ」に代わる新たな高速炉を、開発推進する方針を固めた。安倍政権は学習能力がないのか、馬鹿なのか。いや、気が狂っているとしか思えない。原発が安全でクリーンで経済的だなどという神話は既に崩壊しているのに。使用済み核燃料(核のゴミ)を再処理して利用する「核燃料サイクル」も破綻したのに。

 これまでの高速炉開発では既に1兆円もの税金をドブに捨てた。福島原発の廃炉には20兆円かかるとされている。間違いなくもっと巨額の費用が必要となるだろう。その上さらに何をどうするというのか。絶対に頭がおかしい。それでもあなたは、安倍政権と原発利権集団を支持しますか?

核燃サイクル延命、新高速炉の開発具体化、政府骨子案、工程表年明け着手(東京)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201611/CK2016113002000242.html

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 トランプの主張は、米連邦最高裁の判例だけでなく現行の法律にも反している。憲法も法律も超越して(堂々と無視して)、自身の価値観や感性や主張を他者に強要することをまるで厭わない。知性や教養や良識がまるで感じられない。安倍首相や橋下某や百田某らと同類。彼らと共通する思考回路の人間にしか見えない。まさにこれぞファシストの典型ではないか。

トランプ氏「星条旗を燃やしたら市民権剥奪も」実際は合法なのに…(ハフィントンポスト日本版)

http://www.huffingtonpost.jp/2016/11/29/trump-flag_n_13312648.html

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 歌手のASKA容疑者が逮捕前に乗ったタクシーの車内映像が、テレビ各局で繰り返し放送されている問題について「チェッカーキャブ」は、グループの加盟社がマスコミに映像を提供したと認めて謝罪した。外部に乗客の個人情報を提供したタクシー会社の行為が違法で許し難いのは言うまでもないが、しかしこんな映像を平然と垂れ流しているテレビ各局こそ大問題だろう。何を考えているのか理解に苦しむ。

 そもそもよく放送したな。というかよく平気で放送できるな。事件そのものとは直接関係ない。しかも公益性や緊急性がある必要不可欠な映像であるとは、とても考えられない。極めて個人的なプライベートな映像ではないか。信じられない。

 こんなものを繰り返し垂れ流して恥ずかしくないのだろうか。テレビ各局は現場も幹部も、もはやまともな感覚も理性も常識も倫理観も人間性さえも、完全になくしてしまっている。ワイドショーも報道局も末期症状だ。こいつらもうダメなんじゃないか、とマジで思う。

「この度のチェッカーキャブ加盟会社の車内映像がテレビ等マスコミ各局にて放送されている事態につきまして」(チェッカーキャブ)

http://www.checker-cab.co.jp/infos/view/26

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 今夜放送された日テレ系ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」第9話、ええ話やったなあ。第3話と同じくらい、それ以上に好きな話だったかも。「当たり前のことを当たり前に支えている人たちが仕事をしている」──。だからこそ、そこに当たり前の日常が存在する。まったく本当にその通りだと思う。公園や道路や橋や鉄道の保守点検管理の仕事も、そして校閲の仕事も。脚本と演出と俳優陣に最大の拍手を贈りたい。


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