「となりのトトロ」
■どちらも「五月」■トトロに出てくる「サツキ」と「メイ」の名前について、「どちらも『五月』なのは偶然なの?」という疑問のメールをもらいました。そうなんですよね、確かに2人とも「五月」なんですよね。意図的なのか、偶然なのか…。手元にある資料を見た範囲では、宮崎駿監督はそのことについては何も言及していません。
でも、宮崎監督の設定資料をよく見てみると、メイのキャラクターデザインのイラストの上に、「メイ(五月)→サツキ」(原文通り)というなぐり書きがあります。このことから、宮崎監督はきっと「五月」を意識して、「メイ」と「サツキ」という2人のキャラクターの名前を考えたのだろうと思われます。
サツキとメイが、お父さんと郊外の一軒家に引っ越して来たのは、よく晴れた五月の日曜日ということになっています。陽の光をいっぱいに浴びた五月の日曜日は、これから始まる新しい生活にふさわしい設定ですよね。小川にかけられた橋を渡って、小さな切り通しを駆け登ると、お化け屋敷のようなボロ屋が建っています。「わーっ、ボロ!」と歓声を上げるサツキとメイ。草がいっぱい繁る広い庭。そのすぐ隣には塚森の緑があって、目の前に広がる田んぼでは田植えが始まっています。やっぱり「五月」はこの作品のキーワードなのです。
ちなみに、宮崎監督のもともとの構想では、トトロに出会うのは幼い女の子1人だったのですが、「1人でバス停までお父さんを迎えに行くのは不自然だ」ということになって、悩んだ末に「女の子2人」になったということですから、「メイ(五月)→サツキ」とキャラクターのネーミングがふくらんでいった可能性は高いでしょうね。