「となりのトトロ」
それにしても言ってみるもんだなあ。「サードインパクト」の「お薦めLinks」でも紹介している「銀輪のんびり散歩」の森田徹さんに、「トトロの森散策ツアー」をやりましょうよと声をかけたら実現することになった。狭山丘陵の近くで育ったという森田さんの案内で「となりのトトロ」の舞台になった狭山丘陵の自然や風景を見て歩く企画である。というわけで、曇り空だが風薫る1998年5月24日に狭山丘陵を歩いた。◆ふう〜福生は遠いなあ◆
会社で同僚に「トトロの森散策ツアー」の計画を話すと、大のトトロファンのH記者もぜひ参加したいと言うので一緒に現地へ向かうことになる。H記者とは東急東横線の桜木町駅で待ち合わせ。東横線に乗って武蔵小杉でJR南武線に乗り換え、終点の立川でさらにJR青梅線に乗り換える。ふう〜。さすがに遠いなあ…。予定の午前11時を大幅に過ぎて青梅線の牛浜駅に着くと、案内役の森田さんが、友人の八木さんとともに車で迎えに来てくださっていた。今回の散策ツアー参加者はこの4人である。まあ、これくらいの人数が散策にはちょうどいいかもしれない。「はじめまして」と自己紹介。インターネットで知り合った人と実際にお会いするのは今回が初めての経験だ。
◆狭山丘陵全体を一望!◆
牛浜駅のある東京都福生市は米軍横田基地のすぐそばにあって、まさに基地の町という感じである。基地を囲むフェンスが延々と続いて日米両国をしっかり分けている。ここから森田さんの車で数十分走って、まずは東京都瑞穂町の六道山公園の展望台へ。防災備蓄庫のような造りの展望台の屋上に上ると、埼玉と東京にまたがる狭山丘陵全体が一望できる。とても広大で豊かな緑が確保されていることがよく分かるなあ。はるか遠くの左手に西武球場のドームが小さく見える。丘陵を横切るように送電線の鉄塔が建っている。「ネコバスがあの送電線の上を走って行くんだよなあ」などと想像すると心がわくわくしてくる。
続いて埼玉県入間市の「さいたま緑の森博物館」へ移動する。博物館といっても、森に生息する動植物などの写真を展示した資料室と案内事務所があるだけで、森全体が博物館となっているのである。このあたりで、心配していた天気がとうとう崩れて雨が本格的に降り出す。週間天気予報ではきょうは晴れるはずだったのだが、きのうの段階の予報では午後から雨になると言っていた。う〜ん、その通りになってしまったなあ。取りあえず、コンビニで買ったおにぎりや弁当を案内所のベンチで食べる。天気がよければ、緑の中にいくつか置かれているベンチなどに弁当を広げて、ピクニック気分にも浸れたのだが…。資料室の裏手には小さな沼が広がる。この沼のたたずまいが、メイが行方不明になった時に出てきた「サンダル池」の感じに似ているということで4人の意見が一致した(笑)。
◆風情ある雨の農村風景◆
傘をさして森を散策する。森を抜けると茶畑などの農地を縫って小道が続く。斜面になっている農地で農作業をしている人の姿が、ちょっと高い位置にある道から見えたりする。小さな墓地やお地蔵さんがぽつんとあったりもする。「トトロの丘」などと呼んでもよさそうなそんな風景の中を傘を手にてくてく歩いて行くのだが、雨の中を歩くのもまた風情があっていい。「となりのトトロ」にも雨の場面はいっぱい出てきたしね。サツキとメイが学校からの帰り道に雨に降られて、お地蔵さまのお堂で雨宿りするシーンは印象的だった。雨にけぶる農村の風景があますところなく描かれていたが、まさにあの情景である。傘を差し出すカンタとサツキの心がつながる重要な場面でもあった。しか〜し、だれかは知らんが森の中に壊れた冷蔵庫や自転車、石油缶など大量のごみを不法投棄するんじゃねえ〜(怒)。雰囲気ぶち壊しじゃんか〜。もちろん、そういう個人的感傷のレベルの問題だけじゃないんだけど。でも本当に廃棄物の不法投棄が多い。困ったもんだ。ちなみに近くにねぐらがあるのか、カラスが多い。
◆これぞ「トトロ神社」だ◆
小道の先にある雑木林の中をしばらく進むと突然、なんともみすぼらしい神社が現われる。しばらく手入れなんかしてないんじゃないかと思える古びた小さな社殿。古ぼけた赤い小さな鳥居。境内と表現するのもはばかられるほど狭い敷地は、木に覆われていて昼間でも薄暗い。神社の名前などはどこにも書かれておらず、何を祭っているのかさえ不明だ。な〜んにもないのだ。裸電球がいくつか申し訳なさそうに灯っていることで、人が訪れていることがかろうじて分かる。う〜む。大クスの木こそなかったが、これぞ「トトロ神社」と呼んでも差し支えないと思える感じである。サツキとメイとお父さんが3人で挨拶に出かけた、あの水天宮のたたずまいである。「となりのトトロ」に出てくる神社について、宮崎駿監督は「最低に粗末な神社にしたんです、意図的に。立派な社で碑が立っているとかってうれしくないでしょう」とインタビューに答えている。国家神道にならないように気を配ったのだという。そういえば、登場人物たちはお地蔵さまや大クスの木には拝んでも、社には拝んでいない。それが監督のこだわりなのだそうだ。うんうん、納得だなあ。鳥居をくぐって竹やぶに囲まれたつづら折りの坂道をずっと下りていくと、民家が見えてきて舗装した道路に出る。道端に小さくて目立たない傾いた石柱がぽつんとあって「山之神…」(その後は判読不明)と彫られていた。神社の名前は「山之神神社」で、ここがその入り口だということである。
◆開発の危機と隣り合う◆
さらに車で移動して、狭山湖のわきに広がる「トトロの森」を散策する。ここには狭山丘陵ナショナルトラスト「トトロのふるさと基金」によって買い取られた森や雑木林がある。狭山湖周辺の森のほんの一部だが、コナラヤクヌギなどが主体の山林の面積は約1182平方メートルあるという。手作りの「トトロの森1号地」の看板が立てられている。ススワタリ(マックロクロスケ)やトトロ、ドングリ、クワガタなどの絵が描かれていて味わい深い。森の中を歩いていると、西武球場の方から風に乗って歓声が聞こえてくる。野球の試合が行われているのだろう。森のすぐそばには町が広がっているのだ。開発の危機と隣り合わせの環境にある地域なんだなあ。で、狭山湖と「トトロの森」に接して、なんとも巨大な一般廃棄物最終処分場がど〜んと設けられているのには驚いた。狭山湖の水は飲料水として取水されていて、この廃棄物最終処分場のすぐ隣には浄水場があるのである。化学物質や汚水などの処分場からの漏れが各地で問題になっているが、大丈夫なのだろうかと心配になった…。いやいや、それにしてもいっぱい歩き回った。いい運動になりました(笑)。
◆「七国山病院」見つけた◆
最後に東京都東村山市(&埼玉県所沢市)の八国山緑地まで足を延ばしたのだが、何とここでわれわれは、サツキとメイのお母さんが入院していた「七国山病院」のモデルであろうと思われる(と勝手に断定した)病院を発見したのだあ〜(拍手)。八国山通りを八国山緑地の方へ向かったところにある「新山手病院」(旧保生園病院)である。サツキとメイが並んで座って病室の両親を眺めていた松の木もあったし、コンクリート製ながらもそれらしい病棟もあった。「トトロ」のエンディングテーマが流れてきそうな、不思議な風景が目の前に広がっていたのだった。それぐらい雰囲気が出ていたのである。「うん、絶対にここだ」と全員の見解が一致したのであった。4人ともしばし、病院のたたずまいに見とれてしまう。案内役の森田さんもこの病院の存在は「思わぬ発見だ」と感想を話していた。(注:ただし、ここには現に入院や通院している患者さんたちが大勢いらっしゃるわけだから、むやみやたらに敷地内を歩き回るなど、常識外の行動は厳に慎まなければならないのは言うまでもない。)
森田さんに立川駅まで車で送っていただく。午後5時に立川駅で解散。「となりのトトロ」の背景や場面設定などイメージの一端を体験できて、とても楽しい散策ツアーだった。「またぜひ、この次は紅葉の秋にでも…」との声も出た。森田さん、八木さん、今回は本当にお世話になりました。ありがとうございました。
(参考文献:「トトロのふるさと/狭山丘陵見て歩き」トトロのふるさと基金編、幹書房)
【参考/ツアー前に掲載した案内記事です】●トトロの森散策ツアーのお知らせ●1998/5/3 「となりのトトロ」の舞台になった埼玉県の狭山丘陵を訪ねてみよう!という「トトロの森散策ツアー」がこのたび、企画されました。
主催&案内してくださるのは、「サードインパクト」の「お薦めLinks」のページで紹介している「銀輪のんびり散歩」の森田徹さんです。地元で育ち、自転車でトトロの森を走り回っているという森田さんの案内とは心強いですね〜。電車と徒歩と森田さんの車を使って、トトロの森などドラマの舞台や、自然でいっぱいの懐かしい風景などを見て歩こう。そんなとっても楽しい企画です。もちろん、僕ととろぺんも参加する予定です。
日にちは、1998年5月24日(日曜日)。トトロが好きで、森を歩くのが好きな方ならだれでも参加できます。JR青梅線(JR中央線の立川駅で乗り換え)の駅が集合場所になるかと思います。詳しい時間や集合場所などのお問い合わせ、参加希望される方は「銀輪のんびり散歩」の森田徹さんまで。
◆HP「銀輪のんびり散歩」(http://village.infoweb.ne.jp/~fwii6637/index.html)
◆森田徹さんの電子メールアドレス(fwii6637@mb.infoweb.ne.jp)