●裁判員制度の論点●まず総選挙。話はそれからだ●阪神失速●「セカンド」更新●ルポ・都立高校長の反乱●「事故米」でなく「汚染米」と言え●アニメ「崖の上のポニョ」を観る●教員免許更新講習の試行●食料自給率アップが急務●巨人に3連敗って…●小泉氏引退を無批判に扱うな●「誤解」じゃない国交相発言●内部告発ライブ●伊勢海老●●●ほか
9月1日(月曜日) 裁判員制度の論点午後から東京・霞が関の弁護士会館へ。弁護士の中にも批判の声がある裁判員制度について、僕自身が自分の考えを整理したいこともあって、日弁連の担当弁護士から問題点や争点などをうかがう。改善されなければならない課題はいくつもあると思うが、職業裁判官の多くがデタラメな判決を平然と言い渡している刑事裁判の現状を考えれば、裁判員制度の導入によって刑事裁判は「よりマシ」になるのではないか、というのが僕の今のところの立場だ。賛成派と反対派の間では、なかなか議論がかみ合っていないという。現実の刑事裁判に対する共通認識があいまいで、「疑わしきは被告人の利益に」(疑わしい点があれば無罪とする)との基本原則から離れたところで議論しがちだからなのかもしれないと、説明を聞きながら感じた。
裁判員制度は、自分自身のための制度だという考え方が重要だ。裁判員となった一般市民が裁く目の前の被告人のための制度ではない。もしかして自分が被告人になった時に、「疑わしきは被告人の利益に」との前提が厳守された裁判を受けるために必要なのだ。というか、そういう制度にしなければならない。弁護士の果たすべき役割と責任はものすごく重大だ。
9月2日(火曜日) まず総選挙。話はそれからだ福田首相が辞任を表明した。一年前の安倍前首相が唐突に政権を放り出したのと似たようなパターンだが、内閣を取り巻く状況がどうにもならなくなって逃げ出した安倍前首相の後を引き継いで、何の展望もないまま政権運営せざるを得なかった福田首相は、気の毒と言えば気の毒だとも言える。それはともかく、唐突であろうがなかろうが辞任するのは首相の自由だとして、それなら衆院を解散してきちんと総選挙で国民に信を問うのが筋だろう。民意の反映も信任もなされていない内閣なんて、民主国家の政権として正統性が疑われかねない。安倍前首相も福田首相も、国民の審判を受けないまま首相をやっていたが、それがそもそもおかしかったのだ。自民党の総裁をだれにするかを決める選挙なんて、そんなものははっきり言ってどうでもいい。何はさておいても、まずはすぐさま解散・総選挙をすべきだ。すべての話はそれからだ。
◇◇ しかしめちゃめちゃ暑い。先週は急に涼しくなって、いつの間にか季節はもう秋かよという感じだった。残暑見舞いの追加はがきを投函するのが躊躇されるほどだったというのに、うって変わって猛暑が再びぶり返してきた。冷房のない屋外に出ると体がだるくて、へろへろと倒れそうになる。ただごとでない暑さだ。自動販売機で冷たい飲み物を思わず何回も買ってしまう。こりゃたまらん。
9月3日(水曜日) 阪神失速阪神は完全に「失速」してもうたなあ。首位から30ゲームも離されてぶっちぎりでダントツ最下位の横浜に、完封負けするやなんて…。開いた口がふさがらへんわ。いくらなんでもひど過ぎるんとちゃうか。横浜ベイ銀行はあくまでも貯金するために存在するのであって、そんなところから毎回のように借金してどないするんや。まあ冗談はさておいて、これで2位の巨人に5ゲーム差まで詰め寄られた。こんな調子じゃあ、マジでもうダメかもしれんね。
9月4日(木曜日) 都内で取材など午前中から東京・新宿の都庁へ。都教委の強引な教育行政を批判し、公然と反旗を翻している現職の都立高校長が都教委の事情聴取を受けたため、その様子などを取材。駅前の某大型書店をぶらぶら散策する。ここは書棚の分類も品揃えもしっかりしていて、日本国内で最優良書店の一つではないかと思う(僕の本もすべて常備されているし=笑)。ジャーナリズム関係の本を何冊か購入・注文してから、四谷の出版社に顔を出す。データベースで調べてもらった資料をもとに、編集者からいろいろと取材のアドバイスを受ける。いつもいつもお世話になりっぱなしです。深謝(最敬礼)。きょうもめちゃめちゃ暑かった。
9月7日(日曜日) 「セカンド」更新「セカンドインパクト」を更新。「新聞記者って…」のコーナーに、新着記事「高校新聞は言論報道機関だ」を掲載しました。かなり長めの論説記事(オピニオン)です。
本日発売の雑誌「世界」10月号(岩波書店)に、「都立高校長の反乱/学校現場に言論の自由と民主主義を」を書いた。東京都教育委員会に公然と反旗を翻したこの現職の都立高校長とは、4年前に最初に会ってから(2004年9月5日付「身辺雑記」参照)、これまでに何回も面談して30回以上は話を聞いている。本当はもっと早く記事が出るはずだったのだが、諸般の都合でこの時期になってしまった。即応性のある新聞やテレビと違って、月刊誌の長編ルポだからまあ仕方ないか。
ちなみに僕は、一部の市民グループや運動家がこの校長先生のことを、「たった一人で闘いを挑んだ」「勇気ある内部告発」などと持ち上げて、まるで英雄のように祭り上げるのはいかがなものかと思っている。もちろんこの校長先生の主張は間違っていないと思うし、多くの人に応援してもらえればと考えている。しかしそれと同時に、記事の中でも少し触れたが、都教委の横暴で一方的な振る舞いに対して、発言したくても我慢している(我慢せざるを得ない)良心的な校長は、実はほかにも大勢いることをぜひ知ってほしい。大切なのは、そうした校長たちを孤立させないことだ。
中にはとんでもない校長もいるだろうが、多くの校長は敵対する相手ではない。良心的な校長を孤独な存在に追いやらず、都教委に対して勇気を持って言うべきことが言える状況をつくることが、東京の異常な教育行政を変えることにつながる。そのためにも保護者と教職員はそれぞれの学校で、校長ともっとコミュニケーションを深めるべきだろう。校長と教職員と保護者が一体となって生徒のために力を尽くすのが、そもそも学校のあるべき姿なのだから。闘うべき相手は、学校現場に管理と統制を強いる都教委の小役人たちである。そんな背景を理解していただいた上で、「世界」10月号のルポを読んでもらえればありがたいと思う。
9月10日(水曜日) 「事故米」でなく「汚染米」と言え発がん性の高い殺虫剤やカビ毒に汚染された米を食用として流通させていた三笠フーズの事件で、問題の米を「事故米」と表現していることにはものすごく違和感がある。はっきりと「汚染米」と言うべきだろう。そもそも、汚染米の用途に関するチェック体制も杜撰なら、国民の健康と生命に関する危機意識もなく、すべてにいい加減でデタラメな政府(農水省)の姿勢そのものが大変な問題だ。危機意識が欠如しているからこそ、「事故米」などという極めて不明瞭な言い方がまかり通っているのだとしか思えない。
それにしても今回の食品偽装は、最悪最低の犯罪行為だと思う。食用として使うことは極めて危険だから、工業用の糊の原料などに用途が限定されているのではないか。そんなものを10年間も、人体に及ぼす危険性を認識しながら、平然と食品会社に流通させ続けてきた三笠フーズの経営者と従業員の感覚は度し難いものがある。船場吉兆やミートホープや白い恋人など、これまでに発覚したほかの食品偽装がかわいく思えてくる。
9月11日(木曜日) アニメ「崖の上のポニョ」を観る東京・新宿の新宿ピカデリーで、宮崎駿監督のアニメ「崖の上のポニョ」を遅ればせながら観た。「もののけ姫」以降のスタジオジブリ作品には、実のところほとんど期待していない。しかしそれでも、「ひょっとしたら今回こそ以前みたいに面白いかも」というほんのかすかな期待を抱いて、とりあえず劇場で観ることにはしているのだ。そういう「ジブリアニメの元ファン」は、たぶん僕だけでなく結構いるのではないかと思う。実際に僕と同じように「とりあえずは観る」という人を知っている。でもって結局のところ、残念ながらいつも期待を裏切られてしまうのだが…。
結論から言うと今回もまた、かつての「ナウシカ」「ラピュタ」「トトロ」「耳をすませば」といった名作を送り出したジブリと比べると、がっかりするほど退屈な出来だった。けれどもそうは言っても、登場人物に感情移入できなかった「ハウルの動く城」や、上映途中でマジで寝てしまうほど最低につまらなかった「ゲド戦記」よりは、はるかにマシな作品だとは思う。「もののけ姫」に象徴的な説教臭さも抑えられていた。だがそれでも、ストーリー展開があまりに単調かつ単純で、特に後半は観るのが苦痛に感じた。
ファンタジーと言えばそれまでなんだけど、人間を辞めて海の住人となったというフジモトなる人物のポジションやその背景など、この作品の世界観や設定に違和感があって、最後まで話にのめり込むことができなかったというのが率直な感想だ。魚のポニョと人間の女の子になったポニョはかわいいと思うが、半魚人のポニョはかなり気持ち悪い。あと、宗介の母親リサの声の演技が下手過ぎる。リサの立ち居振る舞いにあまり共感できなかったから、余計に下手くそに思えたのかもしれない。
9月13日(土曜日) 教員免許更新講習の試行夕方から横浜・関内。県立高校の先生たちの自主研究会に参加する。このところずっと忙しくてなかなか都合がつかなかったので、久しぶりの参加だ。今回のテーマは、来年から本格的に導入される「教員免許更新制」について。今夏に試行された更新講習をめぐって、予備講習を受けた現役の高校教員と、実際に講義を担当した国立大学教員のそれぞれの立場から体験談が報告された。
全国101カ所の大学などの機関で行われた今回の講習について、1)直前まで「モデルカリキュラム」(講習内容に関する学習指導要領のようなもの)が示されず、ドタバタ状態で講義準備が行われていたこと、2)モデルカリキュラムとして指示された内容があまりに多くて大変だったこと、3)受講者が不可(不合格)になって訴訟を起こされても文部科学省は一切関知しないとされたため、だれも不可にならないように、試験内容や採点はものすごく簡単にせざるを得なかったこと、4)本来は講義内容などを自由に決定すべき大学が、文部科学省の下請け機関のようになってしまっていること、5)受講希望者があまりに多いため、受け入れる大学側の体制(講習を担当する教員の数など)が追い付かず、本格導入された場合に対応できない不安があること、6)受講者の中には内職をしている教員や講義が理解できていないと思われるような教員もいたこと、7)夏休みの期間以外だと、多忙な学校現場で通常の職務と講習が両立できるか疑問に感じる声も多いこと──など、実に興味深い実態が生々しく語られた。
講習を実施する(実施させられる)大学側もかなり混乱しているようだ。教員免許の更新制を導入することを大前提に、ずいぶんといい加減なことを無理やりやっているんだなあと、驚きながらも面白く報告を聞かせてもらった。終了後は近くの居酒屋へ。冷えた生ビールが美味しかった。
9月20日(土曜日) 食料自給率アップが急務樹脂原料の有害化学物質メラミンを牛乳に混ぜて販売していた中国で、汚染された粉ミルクを飲んだ乳幼児の被害者は3万人以上になるという(うち死者5人)。まだまだ増えそうだともいわれている。被害は中国国内にとどまらない。中国製の牛乳を原料にした食品はアジア各国や日本国内でも流通しているとして、食の安全に対する衝撃や不安は拡大する一方だ。汚染米にも中国産の米が含まれていたが、そもそも日本国民の大切な食料を、あまりにも外国に頼り切っているのが最大の問題だろう。
TBSの「ブロードキャスター」が特集で、食料自給率アップを目指すスイスの取り組みを紹介していた。有機農業にこだわり、安心で安全な農作物を生産する環境を整備し、政府は農家にさまざまな手当てを支給する。それに呼応するかのように消費者は、価格が外国産よりも多少は高くついても、安心できる国産の農作物を購入するのが当たり前の生活をする。そんな仕組みを、スイスでは政府と消費者が一体となってつくって推進しているというのである。
食料を安定して確保する安全保障の面からも、安全な食料を国内でまかなうという意味からも、とても示唆に富む姿勢と取り組みだと思う。日本でも政治家が早急に率先して着手すべきだろう。もちろん、汚染米を平然と売りさばいていた三笠フーズの経営者のような連中は論外で、国内の生産者や流通関係者の倫理観がしっかりしているのが大前提だが、それ以上に消費者自身の意識が問われることにもなる。安全でおいしい食料を供給してくれる生産者を育てることが、自分たちの豊かで安心できる生活を守ることにつながるという意識がなければ、こうした仕組みは成り立たないからだ。
そう考えると汚染米や汚染牛乳の問題は、日本人の食生活や食料自給のあり方を問い直すとてもいいチャンスだと言える。今ここで真剣に取り組まなければ、取り返しのつかないことになってしまうのではないかという危機感さえ感じる。「ブロードキャスター」の特集は、そんなことを考えさせてくれるいい番組だった。17年間続いた「ブロードキャスター」はこの日が最終回。土曜日のこの時間には貴重な真面目な姿勢の番組だったので、終わってしまったのは実に残念でもったいないと思う。
9月21日(日曜日) 巨人に3連敗って…阪神が巨人との3連戦で3連敗。最大で13ゲーム差もあった巨人に、とうとう同率首位に並ばれてしまった。3連敗って…。いくらなんでも、頂上決戦でそれはないだろう。あーあ…。予想はしていたけど、ちょっと酷い負け方だよなあ。でもまあ、これで五分五分の振り出しに戻ったとも言えるし(たぶん)。
9月25日(木曜日) 小泉氏引退を無批判に扱うな小泉元首相が政界引退を表明。次の衆院選には出馬しないのだという。後継者として二男が地盤を引き継ぐのだそうだ。テレビを中心にさも大事件であるかのように、このニュースを大々的に取り上げているが、これってそんなに大層な話なのかね。もう既に小泉元首相の政治的な影響力なんてかげりが見えていると思うし、そもそも「小泉改革」とやらが、自民党をぶっ壊すだけでなく日本の国そのものをメチャメチャにしたわけで、そこのところをもっと批判的に伝えるのならジャーナリズムとして理解できるんだけど、そういう感じでもないんだよなあ。
参院での採決結果を理由に衆院を解散して議会制民主主義を根底からひっくり返し、小泉チルドレンなどというふざけた名前のゴミみたいな国会議員を大量に生み出し、郵便局のネットワークをずたずたに引き裂き、およそ非論理的な詭弁を弄してイラクへの自衛隊派遣を強行し、思い込みと意固地さによるかたくなな姿勢でアジア外交を停滞させ、弱者にそこそこ配慮していた社会福祉制度をぼろぼろにし、貧困層を絶望的に増大させて格差社会を驚異的に拡大させた。その結果、日本の社会でどういうことが起きているかは一目瞭然だろう。そんなあれこれにほっかむりして、なんの総括も説明もせずに政界を後にするとは、これほど無責任なことはないんじゃないだろうか。福田前首相よりもよほど無責任だと思う。
小泉氏本人は好き勝手なことをやりたい放題やって、最高権力者としての内閣総理大臣をたっぷり楽しんだのだろうから、後のことなんてもうどうでもいいかもしれないが、そのツケをすべて押し付けられた格好の国民は散々な目にあっているのが現実だ。まったくたまったもんじゃない。その挙げ句に今度は、息子に国会議員を世襲させるのですか。ちょっと酷すぎやしませんかね。首相在任中から小泉氏の言動はどれも支離滅裂だったから、無責任な政界引退も世襲も別に驚くことはないが、いまだに小泉元首相を無批判に持ち上げて、脳天気なニュースに仕立て上げるメディア(すべてではないにせよ)には、心の底から驚き呆れるばかりだ。
9月26日(金曜日) 「誤解」じゃない国交相発言麻生首相から任命されたばかりの中山国土交通相が、「成田空港反対はごね得」「日本は単一民族」「日教組が強いところは学力が低い」などと発言して問題になっている。「誤解を招く表現があった」としているが、だれがどう聞いても「誤解を招く表現」なんてものじゃないだろう。「事実と違う間違った内容」を口にしたのは明らかだ。本当に反省して撤回するなら、「誤解を招いた」などという言い方でごまかすのは卑劣きわまりない。愛国心あふれる憂国の志士(自称)であるならば、そんな卑怯な逃げ口上はご自身の信条に反するのではありませんか。
そもそも、歴史的背景や事実関係に対する認識がお粗末過ぎる。成田空港建設をめぐって、当時の政府がどれだけ不誠実で、そうしたボタンのかけ違いをただすために、住民や役所など双方の関係者がどれほど苦労を重ねてきたか、それらをきちんと理解していれば「ごね得」などという言葉を平然と口にできるわけがない。中山国土交通相の発言は、関係者の努力の積み重ねをぶち壊しにする発言でもある。バカじゃないかとしか言いようがない。あまりにも頭が悪過ぎて絶句するしかない。「日本は単一民族」という発言にしても同じことが言える。今年になって国会は、アイヌ民族は日本の先住民族だと全会一致で決議したばかりなのに。この人の頭の中にはおがくずしか詰まっていないのではないか。
「日教組が強いところは学力が低い」という発言にしても、あまりに時代錯誤な発想だろう。「日教組」という言葉一つで、日教組の組合員の先生すべてを評価できるほど単純な組織ではない。だいたい今の日教組は、(いいか悪いかという評価は別にして)文部科学省と連係し、両者はきわめて友好な関係にあるのだが、そんな基本的な事実さえこの人は知らないのだろうか。主義主張や政治思想的な意見はいろいろあっていいが、きちんとした歴史的背景や事実関係を把握せず、事実と異なるデタラメなことを平然と繰り返すのは、まともな社会人として決して許されることではない。ましてや公人である大臣が公の場でこんな発言をするなど論外である。麻生首相は、よくもまあこれほどまでにレベルの低い人物を国土交通相に任命したものだ。
それにしても、政治家のこの手の問題発言が起きると必ずといっていいほど、「マスコミは発言の一部を取り上げて批判する」「発言の前後をちゃんと聞けば問題などないことが分かる」などと、政治家を擁護する意見が出てくるのはどうしたことだろう。発言の前後を読んでも、すべてを読んでも問題でしかないのだが。
自民党総裁選の街頭演説で、麻生幹事長(当時)が愛知県などの豪雨被害をめぐって、「これが安城もしくは岡崎だったからいいけど、名古屋で同じことが起きたらこの辺全部洪水よ」と述べた発言についても、「発言をきちんと聞けば問題になるようなことは言ってない」などと主張する書き込みがインターネットの掲示板にあふれていた。読解力や理解力がないのか、擁護するためにわざと強弁しているのか分からないが、そんな独り善がりな「独自の見解」は普通の一般社会では通じない。それだけは指摘しておく。
9月27日(土曜日) 内部告発ライブ夕方から東京・吉祥寺。武蔵野公会堂で開かれた集会「学校に言論の自由を求めて/都立三鷹高校の土肥信雄校長が都教委の実態を語る」を取材する。雑誌「世界」10月号のルポでも紹介している現職の都立高校長(9月8日付「身辺雑記」参照)が、初めて一般市民の前で内部告発の発言をするライブショーだ。350席の公会堂は開場と同時に満席となり、会場前には長蛇の列ができたが300人以上が入場できなかった。
【おことわり】これまで当サイトでは土肥校長の名前を出していませんでしたが、新聞・雑誌・テレビなどの報道以外でもご本人が登壇して意見表明されたため、以後は実名を使うことにします)
土肥校長の軽妙な語り口は聴衆の心をがっちりとつかんで、深刻な内容であるにもかかわらず笑いが絶えず、最初から最後まで大いに盛り上がった。あれれ、こんなに面白いトークをする人だったんだ…とちょっと驚かされたが、取材の時はいつも真剣な話をすることの方が多かったからなあ。もともと学校ではこんな気さくな感じで、生徒や保護者にも親しまれているのだろう。その辺の人柄もたぶんストレートに会場には伝わったのではないか。もちろん面白いだけでなく、主張すべき要点は過不足なく理路整然と的確に語っていた。さすがだ。
集会の後半は、石坂啓さん(漫画家)、尾木直樹さん(教育評論家)、藤田英典さん(国際基督教大学教授)、西原博史さん(早稲田大学教授)が登壇し、土肥校長を交えてパネルディスカッションが開かれた。学者・文化人がほどよく援護射撃をする形で、土肥校長の内部告発と意見表明に説得力を持たせていた。終了後、集会スタッフに誘われて懇親会へ。土肥校長や尾木さんらと生ビールを飲みながら盛り上がる。気がつけば午前零時近くになっている。土肥校長と一緒に大慌てで居酒屋を飛び出す。スタッフの多くは武蔵野周辺に住んでいるからまだまだ余裕の時間だろうけど、神奈川県民はそうはいかないのだ。ぎりぎりで終電になんとか間に合った。冷や汗ものだったけど、無事に帰れてホッとした。
9月28日(日曜日) 伊勢海老昼過ぎから都内。都立高校の先生のお宅にお招きいただいて、ロンドンに転居する英国紙の女性記者のお別れ会に顔を出す。市民グループのお母さんや芸術家ら6人が参加。先生のご家族が手料理をたくさん用意してくださっていた。胴の部分だけで30センチ以上ある伊勢海老2尾が、テーブルの大きな皿の上で元気に動いているのを、その場で調理してくれたのにはびっくりした。まあ人間は食べないと生きていけないわけで、炭火でこんがり焼かれた伊勢海老の身はプリプリしていてすごく美味しかったんだけど。手厚いおもてなしに感謝。夜遅くまで都立高校の現状と課題などについて、あれこれと議論を交わした。