身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2008年12月1日〜12月31日

●インフルエンザ流行の兆し●ずっしり重いレポートの山●橋下知事の異様なケータイ禁止令●麻生首相の無意味な2カ月半●取材対象との距離●JRがようやく全駅禁煙●83歳の現役税理士●現金還元セール●パネル発言は難しい●学生の反応●仮説修正●筆記体は習っていない●取材は続く●忘年会●●●ほか


12月2日(火曜日) インフルエンザ流行の兆し

 健診のため近所の医院へ。インフルエンザの予防接種の予約を申し込む人たちが、子どもからお年寄りまでたくさん詰めかけていて驚いた。そんなに流行の兆しがあるのかと思っていたら、夜のテレビニュースが「今週末にも全国的流行のピークに」と伝えてワクチン接種などの対策を呼びかけていた。予防接種なんて社会人になってから一回も受けてないよ。うがいや手洗いだけじゃなく、しっかり予防接種までする人って結構多いんだなあ。そんな混雑する医院に、アジア系と思われる外国人の母親と一緒に、小学3年生くらいの女の子が来院。母親は受診方法や書類の記入の仕方がよく分からないらしい。日本語もあまり上手く話せない母親に代わって、てきぱきと窓口で対応する少女の姿に、看護婦さんも「しっかりしてるわねえ」と感心しきりだった。


12月3日(水曜日) ずっしり重いレポートの山

 午後から授業。都合のいい材料だけを集めて、意図的で一方的な結論を導く「週刊誌やワイドショー」の手法が今回のテーマ。仮説を立てて取材を始めるのはよくあることだが、取材を通じて仮説に合わない事実や証言が得られたら、仮説を修正していくのが本来の取材のあり方だ。ところが一部の週刊誌やワイドショーは、悪意と偏見に満ちあふれたストーリーを最初に設定し、それに沿った材料を都合よく編集して面白おかしく伝えている。興味本位でしかも事実に反した情報を無責任に垂れ流して、読者や視聴者を煽動・誤導する罪は大きい。冤罪事件をメディアが作り上げることにもなる。ジャーナリズムの基本理念とは対極にあるそうした手法が、まかり通っている現状や背景について具体的に解説した。

 きょうは2週間前に提示したレポートの提出日。教務課の窓口に回収をお願いしておいたら、学部・学科・学年ごとにきちんと整理して集めてくれた。ものすごく助かるなあ。大感謝である。人数が多いのでずっしり重い。少なくとも5キロはあると思われる。「自宅に郵送しますか」と教務課の人が言ってくれたのに、紙袋に入れて自分で持ち帰ったのだが、これは大失敗だった。お言葉に従って郵送してもらえばよかったなと後悔した。100人以上のレポートをこれから読んで採点するのも大変なんだけど。


12月5日(金曜日) 橋下知事の異様なケータイ禁止令

 大阪府の橋下徹知事が、小・中学生と高校生の学校へのケータイ持ち込みや使用を禁止する方針を発表し、子どもたちのケータイをめぐって賛否両論がわき起こっている。子どものケータイ使用の是非については、便利さと弊害の両面がある。さまざまな議論があって当然だと思うし、学校で一律に禁止することに対しても意見が分かれるところだろう。それはそれで大いに議論されるのはいいのだが、問題なのは、どうして行政のトップである府知事が「ケータイの持ち込みと使用を禁止する方針」などとぶち上げて、学校現場の教育の中身について口を挟むのかということだ。

 ケータイを学校で禁止するかどうかといった話は、教育委員会やそれぞれの学校で、保護者や生徒や地域の人たちも交えて議論したり提案したりしてルールを決めればいいことで、行政トップの知事がしゃしゃり出て「方針」を打ち出すのは明らかにおかしい。教育の中身に一般行政や政治が介入・干渉してはいけないという基本原則を、この橋下という大阪の知事はいまだにまったく理解していないらしい。しかも、司法試験に合格したはずの弁護士であるというのにである。独裁者にでもなったつもりなのか。知事の役割と職務を理解していないのか。身の程をわきまえるべきだろう。

 こんな異様なことがまかり通っているというのに、なぜかケータイの是非だけが大きくクローズアップされ、橋下知事の教育への干渉という重大問題について、どのメディアもほとんど指摘しようとしない。いったいどうしたことかと情けない限りだ。東京都の石原慎太郎知事は子どものケータイについて、「それぞれの家庭で親が決めればいい話だろう」と述べたというが、まさにその通りだと思う。この問題に関しては、橋下府知事よりも石原都知事の方がはるかにまともで健全だ。橋下府知事は頭を冷やして、もう一度、法律を勉強し直した方がいいのではないか。


12月8日(月曜日) 麻生首相の無意味な2カ月半

 麻生内閣の支持率が急落(急降下、激減、半減)したという世論調査結果が、きょうの朝刊各紙で出そろった。朝日22%、毎日21%、読売21%と、どの世論調査の数字も、政権発足からわずか2カ月半で「政権末期の状態」であることを示している。「経済危機だから選挙などやってる場合じゃない」との理由で、衆院の解散総選挙を先送りにしてきた麻生首相だが、結局のところ政権発足から2カ月半の間、経済対策やそのほかの重要課題についてもほとんど何もしなかったし、たぶんこれからも何もやらないしできないだろう。まったく無駄で無意味な2カ月半でした。首相に就任してすぐに解散総選挙をやればよかったのに。

 しかし首相の座にただ座っているだけって、ちょっとひど過ぎるんじゃないですかね。あ、でも、やたらと外遊を重ねて各国首脳と会ってみたり、高級料理店や一流ホテルのバーには毎晩のように飲みに出かけたりして、それはそれはとてもお忙しいお方でした。マンガもたくさん読んで、世界情勢や社会常識を学ばなければならないそうだし。時間がないかもしれないけど、せめて漢字ドリルも購入してください。…って書いてて虚しくなるだけだな。国民(主権者)を愚弄するにもほどがある。


12月9日(火曜日) 取材

 午後から横浜市内。教育委員会を取材。担当者から1時間ほど話を聞く。事実関係を確認する質問に対して、「把握していない」として答えてもらえない点がいくつかあったので、きちんと調査して回答することを約束してもらう。夕方から東京・新宿へ。今週末に都内で開かれる教育集会に、パネリストの一人として招かれているのだが、出席者らと進行などの打ち合わせ。横浜に戻ってくると強い雨と風の悪天候。タクシーを使いたかったが、もったいないから我慢した。そんな贅沢はできないよなあ。


12月10日(水曜日) 取材対象との距離

 午後から授業。「報道と政治との『距離感』」をテーマに、国営放送ではなく公共放送であるはずのNHKが、政府・与党の政治家の影響を強く受けている実態と背景を解説。さらに、読売のナベツネ氏の振る舞いを具体例に、ジャーナリズムと公権力との関係について問題提起する。

 記者は取材相手と信頼関係を築かなければ、踏み込んだ話を聞くことはできないが、しかしその一方で、取材対象とは決して一体化することがないように、ギリギリの距離と緊張感を保たなければならない。まったく矛盾する話なのだが、取材対象との関係が一線を越えてしまえば、独立した立場から公正で自由な情報発信ができなくなってしまうからだ。これは相手が政治家や役人に限らず、取材対象がだれであっても基本的には変わらない。共感し理解し心情的に寄り添うことはもちろんあるが、ギリギリのラインは越えない努力が記者には求められる。いったいどこまで踏み込んでいいのか、僕自身も常に迷いながら、こうした「微妙な関係」を意識して取材している。まともな記者はみんな悩んでいるはずだ。授業ではそんな話もして、権力監視・権力批判の使命を果たすべきジャーナリズムが、権力と一心同体になることの問題を指摘した。


12月11日(木曜日) JRがようやく全駅禁煙

 JR東日本が、来年4月から首都圏の全駅を禁煙とすることを決めたそうだ。今ごろになってやっとかよ。私鉄なんてもう何年も前から、各社とも全駅で全面禁煙を実行しているというのに、まったくもってJRの対応は遅すぎるとしか言いようがない。

 JR各駅のホームには「喫煙コーナー」なるものが設けられているが、たばこの煙は周囲に流れ放題で、喫煙エリアを通行する際に煙やにおいを避けることは、まず不可能な状態になっている。分煙もへったくれもあったもんじゃなかった。こうした受動喫煙の被害に対して、乗客から多くの苦情が寄せられていたという。これまで放置していたこと自体が、そもそも理解しがたい問題だろう。感性がニブいにもほどがあるが、しかしまあ、やらないよりはやった方が断然いい。首都圏に限らずJRのすべての駅を、ぜひとも全面禁煙にしてもらいたい。

 一方、政府・与党は、たばこ税の引き上げを見送ることにしたそうだ。なんだかなあ。前にもこのページで書いたが(今年6月1日付「身辺雑記」参照)、3円や5円の引き上げなどとケチなことを言わず、たばこ税はぐんとアップして1箱千円くらいにして、喫煙者にたっぷりと税金を納めてもらえばいいのだ。「そんなことをしたら、たばこが売れなくなるので税収の増加にはつながらない」という意見もあるが、たばこの購入を控えて喫煙者が減少するなら、それはそれでいいではないか。喫煙によって健康を害する人が少なくなれば、莫大な医療費が抑制されることになるのだから。消費税率を上げるなら、たばこ税をまず引き上げるべきだろう。それにしても、麻生内閣は本当に何も仕事をやらないなあ。


12月12日(金曜日) 83歳の現役税理士

 夕方から横浜市内。場末のスナック(?)で、市立高校の先生や税理士さんらと忘年会。83歳の税理士さんは現役バリバリの元国税マンで、とても80歳を超えているとは思えない。言語明瞭かつ立ち居振る舞いもかくしゃくとしている。しっかりと仕事をこなして活躍している人は、いくつになっても元気なんだなあと感心させられる。できればこういう年齢の重ね方をしたいものだ。スナックはこの税理士さんの行きつけの店で、ちょっと変わった飲み屋だった。客の平均年齢がものすごく高い(推定)。でもって、入れ替わり立ち替わり、プロの演歌歌手3人が「キャンペーン」と称して登場。申し訳ないけど3人ともまるで知らない人ばかりで、聞いたことのない曲を延々と熱唱してくれたが、そのうちの1人はNHK紅白歌合戦にも出演した人だという。さすがに上手い。重低音が響き渡る見事な歌唱力だった。深夜1時過ぎ帰宅。眠い。


12月13日(土曜日) 現金還元セール

 イトー◯ーカドーで買い物をした。冬物商品に対して、購入額の20%〜30%を現金還元(キャッシュバック)するというセールをやっていたが、これはありがたい企画だ。単なる割引セールの一種くらいに考えていたのだけど、商品自体の価格もかなり値下げされているので、合計するとこいつが結構お得になるのである。不景気で売り上げが落ち込んでいるため、消費者の購買意欲を少しでも刺激しようとの試みだろうが、確かについつい財布のひもは緩みそうになるかもしれない。ただそうは言っても、いざ買おうかなという段になると、そこはやはり厳しい生活状況に思いをめぐらさざるを得ないのが現実だ。消費者の多くは「やっぱりここは我慢しておこう」と、2点を手に取っても結局1点はもとの棚に戻すのではないだろうか。僕もそうやって熟考してセーブしました。もう少し値引きされていたら、もう1点も買ったかもしれないけど。


12月14日(日曜日) パネル発言は難しい

 午後から東京・永田町。「強制と選別の教育」を考える市民集会のパネルディスカッションに、パネリストとして出席する。1時間半ほどの時間を、弁護士や保護者ら計4人で使う構成なのだが、これだと不十分なことしか話せないよなあと思っていたら、心配していた通りの展開になった。僕は3つに区分けされたパートのうち、東京都教育委員会の強権的な姿勢を批判している現役の都立高校長の立場について4分、学校で教員が分断・孤立・疲弊している状況や、経済格差と教育格差の関係について8分、学力テストの成績公表やケータイ禁止を迫る大阪府知事など、教育現場に政治が介入する問題について4分……といった感じで発言した。主催者側のご要望に応じて話の内容を決めたんだけど、どう考えてもこれだけの時間で話すのは無茶だよなあ。詰め込み過ぎにもほどがある(汗)。でもまあ、少しくらいは伝わった部分もあったみたいで、それならそれでいいかと自分を納得させた。

 終了後、赤坂見附の居酒屋で懇親会。その後、保護者の皆さんと赤坂の喫茶店でコーヒーを飲んでから帰宅。NHK大河ドラマ「篤姫」の放送時刻には間に合わず、仕方なく録画ビデオで最終回を見る。うちのビデオは標準モードでもイマイチの録画状態で、再生すると最悪の画質だったりする(涙)。しかし最終回の「篤姫」は、前々回の「無血開城」ほどの盛り上がりや感動もなく、ほとんど総集編のような感じで淡々と終わったので、これなら最低画質でもまあいいやと自分を納得させた。


12月17日(水曜日) 学生の反応

 午後から授業。「言論・報道の自由」がテーマ。NHKに対する政府の命令放送、盗聴法(通信傍受法)、住民基本台帳ネットワーク、個人情報保護法、犯罪被害者等基本計画(匿名発表)などを題材に、国家権力による情報統制の危険性について解説する。知らないうちに自分も盗聴対象にされるかもしれないとの問題意識から、盗聴法の危うさに関心や不快感を示す学生が多かった。「授業の回が進むにつれて、メディア(ジャーナリズム)の果たすべき責任と役割について理解が深まり、情報の受け手の側にも真偽を確かめる姿勢や指標が必要だと感じています」といった感想を書いてくる学生が、少しずつ増えている。なかなかいい傾向だ。

 授業冒頭のネタ振りとして、米国のブッシュ大統領がイラク人のテレビ記者から革靴を投げ付けられた事件について触れたら、これが大層反応がよかった。ブッシュ大統領の反射神経のよさに驚きつつも笑える映像だったこと、記者会見の場で記者が当事者になってしまったことの問題、イラク人やアラブ圏の人たちにしてみたら、笑い話では済まない出来事であること──など、押さえるべきところをしっかり押さえた上で、大勢の学生があれこれコメントしているのはなかなか頼もしい。話を聞いていないようで、意外とちゃんと聞いているんだね。

 4年生の学生から、「◯月◯日は◯◯社の会社説明会で、△月△日は△△社の二次面接だったので授業を休みました」といった申し出が相次ぐ。そのうちの一人は、内定を取り消されてしまったために、就職活動をやり直しているという。僕の授業の受講生にも「内定取り消し」がいたとは…。今年の就職戦線は本当に大変らしい。


12月18日(木曜日) 仮説修正

 超多忙な安田好弘弁護士の話をようやく聞くことができた。意外な事実が判明したので、原稿の方向や展開が変わってしまうことになりそう…。仮説を立てていても、取材結果によって修正されていくものなのだから。しかし言われてみると、確かにそれはそれで話の辻褄は合うんだけど(謎)。もちろんほかの関係者にも、話を聞いてみなければならない。


12月19日(金曜日) 筆記体は習っていない

 最近の中学生は、英語の筆記体について授業で習わなくなったのだそうだ。だから当然のことながら、筆記体で板書されると読めない高校生や大学生も出てくることになる。最初は悪い冗談かと思ったが、学習指導要領が改訂されて、必ずしも筆記体の指導をしなくてもよくなったためだという。まったく知らんかったよ。びっくりした。これまでは、通常なら中学1年の時点で筆記体が教えられていたが、2000年度以降は、学校によって教えるところもあれば、教えないところもあるといった状況らしい。私立では教える学校も多いとの話もある。

 完全週休2日制の導入で授業時間数が減ったために、優先順位の低い項目は省略するということから、筆記体の指導がされなくなったのだろう。確かにテレビや映画などを見ていても、欧米人が自筆で文章を書く時には、筆記体を使わずにブロック体を使っていることが多い。つまり実際の英語圏の人々の間では、ブロック体で文章を書くのが一般的なのだ。だとすれば、日本人がわざわざ筆記体を学習する必要もなくなってくる。もちろんブロック体も筆記体も理解して、両方とも使いこなせればそれに越したことはないが、限られた時間の中で何を優先するかと考えれば、英会話や文法や作文などの学習に時間を割いた方がはるかにいい、という判断もありかもしれない。ネットの掲示板の書き込みからこうした現状を知ったのだが、どうしてなかなか、たまにはためになる情報も流れてくるものである。勉強になったよ。


12月28日(日曜日) 取材は続く

 年の瀬のギリギリまで取材が続いている。原稿の締め切りは、もうとうの昔に過ぎているんだけどなあ。でも自信を持って書けるだけの材料が集まらないのだから、それはそれで仕方がない。見切り発車するわけにはいかない。いつものことながら、編集部の皆さまには本当にご迷惑をおかけしています。申し訳ありません。


12月30日(火曜日) 忘年会

 夕方から東京・吉祥寺へ。いつも仲良くしてもらっている弁護士や大学教授(よその大学)の仲間たちと恒例の忘年会。恒例といっても、メンバーの一人が海外留学していたため、みんなが集まるのは1年半ぶりだ。1軒目は和風創作料理の店で乾杯。裁判官やロースクール(法科大学院)の内状について、いろいろと興味深い話を聞かせてもらうことができた。さらになぜかマンガ「黒執事」の話題も(笑)。幼稚園児にも人気のマンガなのだそうだ(驚)。2軒目は歴史の重みを漂わせているジャズバー。吉祥寺にはこういう店が結構ある。リキュールのカクテルがすごく美味しかった。3軒目は時間調整を兼ねて、カフェでコーヒーを飲んでお開き。将来の方向性について、皆さんから適切なアドバイスをいただいた。先輩の意見はとても参考になったし、ぐずぐずと考え込んでいたので、いい具合に背中を押してもらった感じがする。感謝。


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