身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2011年8月1日〜8月31日

●竹島どころじゃないだろう●セミがようやく大合唱●強行軍●大内節はまだまだ健在●すっきり短くカット●菅さんが首相でよかった●分かりやすいアナウンス●「セカンド」にエッセイ掲載●神の啓示か●節電対策で時短?●この国の民度を反映●原発再稼働の動き着々と●流星群は応答せず●アニメ「コクリコ坂から」●だれが得する被災地の薪●最優秀賞と優秀賞●内部被曝が拒めない●千万分の1に減少って!●吉田秋生「海街diary4」●アイスの安売り日●福島の農家は加害者にならないで●暑中見舞いのはがき●世論の責任、記者の役割●橋下増長の元凶は島田紳助だった●フィルム一眼レフ●「伝える力」について講演●現実直視できない福島県知事●汚染を拡散?●NHK誤報より大事な問題●半年ぶりのテレビ●アエラを執拗に攻撃する人々●●●ほか


8月1日(月曜日) 竹島どころじゃないだろう

 エッセイ・コンテストの第2次審査のため、エントリーされた作文に目を通す。僕が担当したクラスの学生の作品が、文句なしに一番よく書けていると思うなあ。ありきたりの内容でないというだけでなく、構成も文章表現も描写にしても、いずれの面もほかの作品と比べて格段に優れているじゃないか(と僕は判断する)。最優秀候補に推薦した。

 それはそれでいいんだけど、前期の授業が終わったというのに、なかなか取材と原稿に集中できないじゃないか。おまけにさあ仕事だと思っていると、午前零時前に駿河湾を震源とする大きな地震があって、静岡市などで震度5弱の揺れを観測。横浜南部も結構強く揺れて震度4だった。せっかく仕事に集中しかけていたのに、地震と原発が気になって中断しちゃったよ。なんて地震のせいにしちゃダメだよな。最近は揺れがくる直前か直後にカラスが鳴き出す。裏山がカラスのねぐらになってるからだ。いつもは鬱陶しいだけのカラスだが、こういう時はなぜかほっとする。

◇◇

 竹島問題で韓国の鬱陵島(うるるんとう)を視察しようとした自民党議員3人が、韓国政府から入国を拒否されたそうだ。竹島問題の当否はともかく、原発事故による汚染が収拾のめどさえ全く立っていないというのに、そんなことをやってる場合じゃないだろう。馬鹿じゃないか。自民党はもっと空気を読め。KY過ぎる。

 とどまるところを知らない原発の放射能汚染。ダダ漏れが果てしなく続いて、汚染されまくる日本の国土。土も空気も海も農作物も海産物もめちゃめちゃにされているのに、竹島の領有権どころの話じゃないことくらい分かりそうなものだが。それともまさか原発問題から国民の目をそらそうとして、わざとやっているのか。

 福島第一原発の1号機と2号機の間の主排気筒付近で、毎時1万ミリシーベルト以上の放射線を測定した、と東京電力が発表。過去最高値で、一度に浴びると確実に死に至る量だという(朝日)。

 岩手県産の牛から規制値を超えるセシウムが検出されたため、政府は福島県と宮城県に続いて、岩手県全域の肉牛の出荷停止を指示した。栃木県に対しても同様の支持を出すという(毎日)。十分に予想されたことで、まさしく想定内の事態だろう。じゃあほかの地域はどうなんだ、ほかの豚肉や鶏肉は、野菜は大丈夫なのか。それとも周辺地域はもうどこも全滅なのか。当然そういうことになるはず。状況は悪化するばかりできわめて深刻なのだ。

 繰り返すが、自民党の3馬鹿議員は、竹島がどうこうなんて寝言を言ってる場合じゃないんだよ。本当に国を愛しているのなら、この国全体が汚染列島になりかねない事態を、もっと真剣に憂えろ。原発問題にもっときちんと向き合え。話はそれからだ。お門違いの愛国心ほどみっともなく、無意味で情けないものはない。


8月2日(火曜日) セミがようやく大合唱

 きのう、おとといから、ようやく自宅周辺でセミが活発に鳴き始めた。日の出前の午前4時を過ぎたころから、ミンミンゼミとヒグラシが競うように声を震わせる。あたりはまだ真っ暗ということもあってか、ミンミンゼミは少し遠慮がちな様子だが、なぜかヒグラシは得意満面といった鳴きっぷりだ。日が昇って明るくなると、いつの間にかヒグラシは鳴き止んで、ミンミンゼミとニイニイゼミとアブラゼミのやかましい合唱が始まる。よかった、やっと夏らしい暑苦しい音が聞こえてきて。うるさいんだけど、いつもの季節の風情にほっと安心する。原発事故の影響がもしセミに出るとしたら、今年産卵された幼虫が羽化する7〜8年後だという。


8月3日(水曜日) 強行軍

 あす4日は始発で福島・会津若松へ向かう。これから4時間半ほどしたら家を出なくてはならない。しかも日帰りという強行軍だったりする。もうちょっと考えればよかったかなあ。でもこういう日程しか組めなかったから仕方がない。スマートフォンは持っていないので、「◯◯なう」(あまり好きな言い方ではない)なんてつぶやけないから、今のうちにつぶやいておく(苦笑)。


8月4日(木曜日) 大内節はまだまだ健在

 そんなわけで地元の私鉄駅から始発に乗って、東京駅発の東北新幹線やまびこで郡山に向かう。そこから高速バスで1時間かけて会津若松に到着。さらに路線バスに乗り換えて会津大学へ。こう書くとすんごい遠くて「ど田舎」のようだが、自宅から4時間で、東京駅からだと3時間ほど。意外と近い(ように思える)。

 全国高校総合文化祭(高校総文)福島大会へ。新聞部門の開会式と表彰式を取材する。新聞部門に参加する高校新聞部員の動向については、前に書いた通りで(7月13日付「身辺雑記」参照)、もう全くと言っていいほど期待してなかったけど、新聞教育研究所所長の大内文一氏(「新聞と教育」編集長)による叱咤激励の紙面審査講評を聞きに、きょうはわざわざ会津若松までやって来たのだ。大内氏は高齢でこのところ体調があまり思わしくない。にもかかわらず、「ジャーナリズムの理念と目的を高校新聞記者たちに自分が伝えなくてだれが伝えるのか」という強い思いから、この日もあえて登壇。予定時間を超えて30分以上の熱弁を振るった。

 「新聞は作品じゃない。働きだ。新聞で学校を変えるくらいの気概を持って、批判的に、校長にもだれに対しても疑問に思ったことは遠慮なく質問しろ」。相変わらずのあふれんばかりの迫力と、生徒や新聞へのあたたかいまなざしをベースにした演説に、会場の高校生や顧問教師たちも圧倒された様子だった。さすが、ほかのつまらない挨拶や式辞とはまるで違う。

 次のプログラムが終わって、ロビーで大内氏に久しぶりに挨拶した。「ちょっと待ってろ。時間はあるんだろう。昼飯でも一緒に食おう」と言われたので、大内氏がほかの面会者たちと話を交わすのを、少し離れて聞くともなしに聞きながら待つ。しばらくすると体調が悪くなったと言い始めた大内氏は、「きょうはこれで帰るからタクシーを呼んでくれ」と主催者に頼んだ。それでも昼は一緒に食べるつもりらしく、僕についてこいと言う。実際に気分はかなり悪そうなので、大丈夫かなと心配しつつも、タクシーに乗り込んで宿泊先の近くのレストランに入る。

 ランチを食べながら近況報告などあれこれ話をする。「新聞と教育」に学生時代に僕が書いたコラムを、麻布高校を定年退職された山領健二先生に頼んで探してもらったこと、それを大学の授業で教材として使ったことを報告すると、えらく喜んでくれた。「お前と話していると元気になった。一緒に飯が食えてよかった」。いつもの大内節が復活したので少し安心した。やや気弱になっていると思われる部分も見受けられるが、まだまだやりたいことや、やらなければならないと思い定めることはあるようで、意気軒高ぶりは維持されている感じに見える。そう簡単に退場されては困る。こういう時代だからこそ、御意見番の存在は不可欠なのだ。


8月5日(金曜日) すっきり短くカット

 3カ月ぶりに髪の毛をカット。長いと暑くて鬱陶しいので、ここ最近ではたぶん一番短くしてもらった。いつもは耳に少しかかるくらいの長さだけど、全面的に耳が出ている。ああすっきりした。それにしても暑くてたまらん。


8月6日(土曜日) 菅さんが首相でよかった

 東京駅前の丸の内オアゾへ。大学で文章講座を教える同僚の先生方6人で、暑気払いを兼ねた飲み会。名古屋の蔵元直営の和風居酒屋。すべての酒が蔵元直送で吟醸酒は絶品だという評判通り、確かに日本酒が飲みやすくて美味しい。しかし残念ながら日本酒はそんなに強くないので、最初の味見だけで後はひたすら生ビールを飲み続ける。自由に選べるお通し、刺し身、串焼き、三河名物の味噌おでん、牛筋の土手煮、奈良漬けなど、料理はどれも申し分なく上品で味わい深い。店内も落ち着いた雰囲気で、ゆっくり飲んでゆったり談笑するには最適な感じだ。

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 原発事故の大惨事を目の当たりにしたこの国の首相として、広島平和記念式典での菅さんの脱原発演説は、至極当然だと思う。今この瞬間も汚染と被害が続いているわけだから。原爆も原発も根っこは同じ。菅さんが首相でよかったと思う。

 大震災と原発事故が起きたこの時期に、菅さんが首相で本当によかった。もしも菅さん以外の人物が首相だったら、浜岡原発は止まらなかっただろうし、脱原発なんて言葉も出てこなかったろう。ましてや発送電分離や、経産省から独立した原子力規制庁を作るなんてことは、話にも上がらなかったはずだ。

 自民党政権だったら原発はもちろんすぐさま再開し、原発事故が起きたこの期に及んでも原発推進まっしぐらは間違いない。新しい原発建設を目指してさらに突き進むだろう。民主党の中で孤立しても脱原発を訴えているのは菅首相だけ。これからが正念場だ。本当に覚悟を決めて脱原発の道筋を作ってほしい。

 菅首相は死ぬ気で脱原発のレールを敷け。独立した真っ当な原子力規制行政の組織をしっかり作れ。辞めるのはそれからだ。

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 吉野家で新メニューのカレーを食べた。ところが出てきた水が生温い。カウンターの上は、前生姜や七味や牛丼の汁の跡が点々と散らばったまま。これじゃあ遠くない将来につぶれちゃうぞ。大丈夫なのか。吉野家のカレーはこくがあって味そのものは美味しいと思う。それだけにもったいない。残念だ。


8月7日(日曜日) 分かりやすいアナウンス

 夏の高校野球(花巻東 vs 帝京)のNHKラジオのアナウンサーは実況がヘタクソだなあ。余裕がないのか、たどたどしい。しかもアナウンスにリズム感がなく、ブチブチ切れるような感じで言葉が流れないので、とても聴きにくい。そう言えばニュース番組でも噛み噛みで繰り返しつまずき、抑揚はないしイントネーションが変な人がいる。深夜の定時ニュースや地方ニュースを読むアナウンサーが、特にひどい。気になって内容が全く頭に入ってこないので困ってしまう。先輩アナはしっかり後輩を教育してほしい。

 これに対し、ニュース担当が森山春香アナウンサーだと、心から安心して聴くことができる。声質がいいから耳に心地よく響くのはもちろん、言葉を大切にはっきりと原稿を読み上げてくれるので、とても分かりやすい。内容がすーっと頭に入ってくるのだ。途中で何回も引っかかるといったこともほとんどなく、ていねいで正確だからイライラすることがない。分かりやすく正確に伝えるアナウンスとは、こういうものなんだなあといつも感心する。


8月8日(月曜日) 「セカンド」にエッセイ掲載

 「セカンドインパクト」を更新。「エッセイ」のページに「原子力の『平和』利用?/誰のための原発なのか」を掲載しました。大学生の時に「南風駿」(みなみかぜしゅん)というペンネームで、雑誌「新聞と教育」に毎月連載していたコラムの記事です。文章は稚拙でずいぶんと気負ってるんじゃないかと、読み返しながら恥ずかしくなってしまいますが、内容そのものは今でも古さを感じさせないのではないかと思います。

 大学の文章講座ではこの記事を印刷して学生に配布し、「僕も学生時代はこんな文章を書いていた」と授業をしました。少しは自信を持ってくれたのではないでしょうか。もちろん内容に関しては何らおかしなところはないことを強調した上で、このコラムを教材に原発問題についての説明もしたのは言うまでもありません。

 ちなみにこのコラムを読んでいただけると、福島での原発事故の大惨事を見て、あわてて「反原発」を訴え始めた「にわか」ではないことの証明になるかなと(笑)。


8月9日(火曜日) 神の啓示か

 午後から東京地裁立川支部へ。開廷時刻など確認もせず適当に出かけたにもかかわらず、傍聴取材すべき裁判官の合議法廷と単独法廷が、それぞれどんぴしゃのタイミングで始まった。裁判そのものも結審と判決言い渡しで、この裁判官の法廷での様子が過不足なく理解できる審理内容だった。しかもきょうを逃すと、しばらく担当法廷がないことが判明。幸運な偶然に感謝するばかりだ。

 さらに駅のホームでは、冤罪事件で著名な旧知の弁護士と、久しぶりにばったり顔を合わせた。できれば会って話を聞きたいなあ、と思っていた矢先だっただけにびっくり。裁判所とは別のところに向かおうとしていたという。無駄なくここまできれいに取材対象が目の前に広がるなんて、まさに運命を感じてしまう。「さっさとこの取材を終わらせて原稿を仕上げなさい」という神の啓示ではないかとさえ思う。ちなみに僕は神様なんて信じてないけど。


8月10日(水曜日) 節電対策で時短?

 夜7時過ぎに急に思い立ち、自宅からかなり離れた農協系のスーパーに、久しぶりに行ってみようと思った。緑豊かな大きな公園を横切って、ゆっくり歩くと30分ほどかかる。散歩としてはいいかもしれないが、往復1時間は結構な距離だ。念のため家を出る前に新聞折り込みのチラシを見てみると、今月から営業時間が早まって午後8時までになっていた。「節電対策のため」だという。危うく無駄足になってしまうところだった。それにしてもこんな夜の時間帯に「節電対策」って意味があるのかなあ。そういう遅い時間こそ利用者に配慮して、普段と同じように営業してほしいと望んでいる人は、仕事帰りのサラリーマンなど結構いると思うんだけど。仕方ないので、夜10時まで営業している近くのスーパーで、いつもと変わらない買い物をした。


8月11日(木曜日) この国の民度を反映

 別にどうしても菅さんが首相でなくてはならない、ということはもちろんないけれども、しかし脱原発を明確に打ち出している政治家なんて、菅さんのほかにいないではないか。少なくとも原発を止めて、原発推進の経済産業省から独立した原子力規制庁を創設する方向で動いているのは、残念ながら菅首相だけだ。

 あれだけの大変な被害を出し、今もなお大量の放射性物質を垂れ流し続け、大惨事を目の当たりにしたはずの原発を、海外に輸出するなんてあり得ない話だと思うが、これについては菅首相は「交渉中のものは輸出を継続する」との方針で、輸出を断念するとは言っていない。稼働している原発を全面的に止めるとも明言はしていない。たぶん経団連などの財界や電力業界のほか、原発を推進してきた経済産業省の官僚から相当な圧力と反発があるはずだ。すさまじい抵抗や工作が渦巻いているに違いない。だから原発からの全面的脱却を、そう簡単には断行できないのだろう。

 もしも内閣支持率がもっと高ければ、財界や官僚の圧力や抵抗などものともせず、菅首相は脱原発にまっすぐに進めるはずだが、菅内閣の支持率はわずか15%ほど。どこの報道機関の世論調査でも似たり寄ったりの数字だ。脱原発の方針は7割近くが賛成しているのに、なぜか支持率に反映されない。国民の多くが本当に脱原発を求めるのなら、菅内閣を強力にプッシュすべきなのに、そういう行動はだれも取らない。支持率にも反映されていない。

 菅首相のほかにもっと適切な人物がいて、脱原発の方針を明確に打ち出してくれるのなら全くそれでも構わない。首相を交代すればいいんじゃないかと思うが、そんな政治家は今のところどこにもいない。にもかかわらず、菅首相は早く辞めるべきだとメディアと多くの国民が口をそろえる。これってどういうことなんだ。

 このままだとまず間違いなく、原発を容認する人物を次の首相にいただくことになる。懲りずに原発を再稼働させて、再び大惨事が起きるのを日本国民は黙って待つつもりなのか。今度はもう取り返しがつかない事態になるだろうに。本当にそれでいいのか。政治は世論を反映するもので、選挙民のレベル以上の政治は存在しない。そう考えれば、この国の現状と民度を正確に映し出しているということなのかもしれないが、なんとも虚しい。


8月12日(金曜日) 原発再稼働の動き着々と

 昨年定年退官した著名な元裁判官に取材を申し込んだ。僕の書いた記事を読んでくれていたそうで、「ぜひ取材をお受けしたい」とのこと。なんともうれしいお言葉をいただく。ただ、先方の都合で9月になってからとのこと。こればかりは仕方ないなあ。でもまあ断られなくてよかった。

◇◇

 あまりの蒸し暑さにたまらず、リビングのエアコンの設定温度を1度下げた。25度から24度へ。昨年までなら迷わず22度に設定してるので、僕としてはかなりの節電モード。24〜25度なら妥当な設定範囲だと思うけど。

 電気そのものは余っていて大丈夫だと思う。東京電力の電力不足デマのキャンペーンに乗って、無意味な節電をするつもりはさらさらない。だが、うちの電気代がピンチだったりする(汗)。

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 菅首相が辞めたら、原発推進派がここぞとばかりに跳梁跋扈するんだろうなあ。停止中の原発も動き出す。原発輸出も止まらない。そうなってしまったらそれはすべて、脱原発に舵を切ろうとした首相を、バックアップせずに孤立無援にした国民の責任だ。本当にそれでいいのか日本国民は? 考え直せ、まだ間に合うぞ。

 北海道知事は来週にも、北海道電力泊原発3号機の営業運転再開を容認する見通しだそうだ。正気か。原子力安全・保安院の最終検査を原子力安全委員会がチェックしたというが、どっちも信用できない経産省のひも付き機関じゃないか。少なくとも、原発推進行政の親玉の経産省から独立して新しく設置される原子力安全庁の判断を待つべきだろう。あまりにも性急すぎる。

 そもそも営業運転再開なんか認めるべきではない。北海道の大地まで放射能汚染の危険にさらすつもりなのか。ポスト菅に向けて、原発再稼働の動きは着々と進んでいる。時計の針が逆戻りしようとしていることに不安を感じる。


8月13日(土曜日) 流星群は応答せず

 ペルセウス座流星群を見に、午前3時過ぎに自宅近くをちょこっと散歩。星はいくつか瞬いているし、やけに明るく輝いてる星が一つ見えるんだけど、空が全体にもやっとしていて、流星群は見られなかった。月もなし。どの方角だとよく見えるのだろうか。雲がかかっていなければ観測できるのかな。

 それよりも、体にねっとりとまとわりつくような湿った空気が気持ち悪い。夜の散歩で気分転換なんて雰囲気じゃなかったな。コンビニでパスタサラダを買って食べてしまった。こんな時間に…。反省。流星群もさっぱりだったし。あすに期待しよう。(→14日未明も空は同様の状態でダメでした)

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 福島県内の1100人以上の子どもを対象にした調査で、およそ半数の子どもの甲状腺から放射性ヨウ素による放射線が検出されたという(NHKニュース)。「微量なので健康に影響が出るとは考えにくいが、念のため継続的な健康管理が必要」というが、「ただちに」影響はなくても将来が心配だ。予想はしていたがやっぱり。恐れていることが着々と現実になっていく。


8月14日(日曜日) アニメ「コクリコ坂から」

 スタジオジブリのアニメ「コクリコ坂から」を観た。お盆休みの最中なので空いているだろうとの予想通り、あるいはそんなのは関係ないのかもしれないが、最終の回だったこともあって映画館はガラガラだった。200席ほどの劇場に観客は30人ほど。ゆったりした気分で観られたので、個人的にはとてもありがたかった。

 駄作中の駄作として知られる「ゲド戦記」を監督した宮崎吾朗の2作目の監督作品というのが、最大にして唯一の不安材料だった。それでも新聞や雑誌などの前評判はそこそこよかったので、ほんの少し期待もして劇場に足を運んだ。結論から言うと、なかなかよくできたいい作品だったと思う。少なくとも「借りぐらしのアリエッティ」や「崖の上のポニョ」よりずっと面白かった。原作と親父である宮崎駿の脚本がしっかりしていたので、改悪しようがなかったということなんだろうか。

 昭和時代にありがちな「恋愛感情を抱いた相手が血のつながった兄妹だった」といった陳腐な題材をベースにしながら、最後はハッピーエンドできれいに終わらせていたし、郷愁あふれる昭和の描写も個人的には嫌いじゃない。「カルチェラタン新聞」にまつわるシーンも微笑ましい。長澤まさみの声の演技がヘタクソに感じたのは、なんとも残念だったけど。作品の後半に登場する徳丸財閥の徳丸理事長は、たぶん故・徳間康快をモチーフにしているのではないか。徳丸の本社内の壁に、「アサヒ芸能」(徳間書店)のポスターが貼られていたし。故人に敬意を表した遊び心かもしれない。「いい大人」の代表のように描かれていたのは微妙。人によっては評価が分かれるところだろう。

 原作漫画を読んでからアニメを観ようと思っていたのだが、かなり前に買ってはあるのだけど、まだ漫画はちゃんと読んでいない。当初予定していたのと順序が逆になってしまった。ぱらぱらと目を通した限りでは、アニメ映画とはずいぶんと雰囲気が違っていそうな感じがする。この後、改めて読んでみるつもりだ。

 【追記】原作漫画を読んだ。アニメ作品とは、設定も主要キャラクターもストーリー展開もかなり違う。漫画には漫画のよさがもちろんあるが、僕としてはアニメの方が納得できる部分がより多く面白いと感じた。ヒロインである海(メル)の人物像とジブリテイストのキャラクターデザインが、魅力的に描かれていることも感情移入しやすい。余分な枝葉の部分を簡潔にそぎ落としたことで、すっきりして全体が引き締まったように思う。


8月15日(月曜日) だれが得する被災地の薪

 京都の五山送り火で、なんで陸前高田市の松の薪をわざわざ燃やさなあかんの? 放射能汚染を懸念して住民が不安になるのも無理ないし、陸前高田の人たちだって何のメリットもないだろうに。そもそも被災地の薪を燃やす意味が分からん。引っかき回されただけでだれも得してないじゃん。アホくさ。

 こういう結末になることは目に見えていた。「被災地の薪を燃やす」と提案された時点で。どこの馬鹿が提案したのか詳細は知らない。「善意のつもり」だったのかもしれないが、あまりにも無邪気で無神経すぎる提案だった。被災地にも京都にもダメージを与えただけで、だれが得したんだよって思う。

 野菜にしても、牛肉にしても、がれきにしても、汚染されている疑いがきわめて強いのだとすれば(実際に汚染されていた)、被災地から外の地域に運び出すべきではない。もちろん食品は安全性が最優先されるのだから、特に子どもや妊婦は消費すべきではない。被災地から運び出したらその段階で汚染と被害が拡大し、トラブルになることを自覚してほしい。

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 民主党代表選の最大の争点は「政権の枠組み」「大連立の是非」だなどと、NHKや読売をはじめとするメディア各社は抜かしているが本気なのか。だれがどう考えても最大の争点は「原発をどうするか」だろう。そこをしっかり考えないと、この国の未来はないんじゃないの。いい加減にしろよ。政治部や経済部の記者の多くは、いつもピントがずれている。


8月16日(火曜日) 最優秀賞と優秀賞

 学内の「エッセイ・コンテスト」で、僕が担当するクラスの学生が最優秀に選ばれた。本当はもう1週間以上前に内定は出ていたんだけど、こういうところに書くのはまだ早いかなと思って控えていた。でも、もういいだろうな(たぶん)。

 エッセイ・コンテストには約400人が参加し、1次審査を通過してエントリーされたのが14クラスから14人。2次審査で最優秀賞1人と優秀賞4人が選ばれるのだが、僕のクラスからは最優秀賞のほか、優秀賞にも1人が入賞した。ちょっとうれしい。

 僕のクラスから最優秀賞と優秀賞が出たことで、適切なアドバイスをしてきっちりと添削指導すれば、文章力は確実にアップすることが実証された。文章テクニックやノウハウも必要だけど、「ものの見方や考え方が何よりも大事」という僕の指導方針は間違っていなかった。ほっとした。

 最優秀賞は文句なしの内容で、全体の構成も表現力も、ほかの作品と比べて格段に優れている。ただ、僕のクラスにはほかにもよく書けていた作品は3点ほどあって、それらは推薦数の制限からエントリーできなかったのが残念で、申し訳ないなあと思っている。でもまあ何はともあれ、よかったよかった。


8月17日(水曜日) 内部被曝が拒めない

 「福島は今、大変なことになっている」と小児科医の山田真医師が「救援」(救援連絡センター機関紙)で告発している。「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」を立ち上げ、仲間の医師や養護教諭らと今年6月に、放射能汚染を心配する親を対象にした健康相談会に参加。福島が抱える深い闇が見えてきたという。そこでの経験に基づく切実な訴えだ。

 子どもたちの内部被曝を心配する福島の親は、みんな不安でいっぱいだ。ところが福島県内では、内部被曝を拒めないといった事態が進行しているという。「学校給食の食材はすべて福島産を使っている。福島産でない安全な地域の野菜を使ってほしいと要求するとバッシングされる」と保護者の一人は言う。

 別の親は「保育園で福島産の牛乳を飲んでいる。変えてほしいと言うと怒られた。うちの子は飲まないようにと申し出たら、一人だけそんなことはできないと言われた」。ほかに「子どもが鼻血がよく出る。放射能のせいではと福島市内の医者に相談すると、笑い飛ばされて取り合ってくれない」といった声も。

 山田医師は、「福島県は放射能に汚染された地域というレッテルを張られないために、放射能は安全、福島は安全と声を揃えて言わなければならない状態に、追い込まれているように私には見えた」と指摘する。

 「福島産の野菜は安全だということを示すために、あえて子どもたちにも地産の食材を与えているように思われる。それは危険だと異議を唱える人は、地域でバッシングされるから口には出せない。地域の人間関係を壊し家族にも対立を持ち込む。そんな切ないことが福島では起きている」と山田医師。

 「既に相当な量の被曝をしている福島の子どもたちが、率先して汚染の可能性の強い食材を食べているのは、低線量被曝の人体実験をしているようなものではないか」と山田医師は懸念する。「この相談会に来たことが分かると地域でバッシングされる」とおびえながら語った保護者もいたそうだ。

 福島県知事は福島産の安全アピールに必死だ。しかし、「風評被害」という言葉を無批判に使っていいのだろうか。本当に安全だという根拠はどこにあるのか。納得できるだけの徹底した調査も測定もされずに、新たに「放射能安全神話」が一人歩きする怖さ。それに異議を唱えることが許されない地域社会の気持ち悪さ。「福島の子どもにはせめて安全な食材を食べてもらおう」。山田医師はそれがネットワークを立ち上げた責任だと訴えている。


8月18日(木曜日) 千万分の1に減少って!

 東京・多摩センターのホテルのラウンジ(喫茶コーナー)で、友人と7時間ほど取材も兼ねて雑談。原稿を書く意味やモチベーションをどう位置付けて高めるか、出稿のタイミングはどうすべきかなど、話をしながら自分の中で整理できた。その後、湘南台で買い物と食事をして帰宅。きょうは暑かったが、熱い1日でもあった。

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 テレビ朝日の人気番組「ちい散歩」が存続の危機だと?! 東スポの記事だからどこまで本当か疑わしいけど(笑)、番組開始から5年も歩き続けたため、散歩コースがなくなってしまって、レポーターを務める俳優の地井武男が「もう散歩したくない」と言ったとの噂まであるとか(マジか)。まったりのんびりしたいい番組なのにもったいない。

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 福島第一原発西門の敷地境界で、最近2週間の放射性物質の推定放出量が毎時約2億ベクレルと、事故直後の1000万分の1に減少(読売)。6月下旬の5分の1に減ったという(朝日)。逆に考えると、事故直後は1000万倍の放射性物質が大気中にまき散らされていた、ということじゃないか。1000万倍って…。その状態はいったいいつまで続いたんだ。それに何が原因でどういう原理で放出量が減ったのか、その説明がないのはなぜなんだ。不可解なことだらけ、としか言いようがない。

 福島県と宮城県の肉牛出荷停止が解除されるそうだ。正気かよ。死なばもろとも、進め火の玉、1億玉砕とでも言いたいのか。安全管理態勢が整ったというが、これまでロクに検査もしないまま、全国に放射性物質に汚染された牛肉が大量に出荷されていたというのに、安全だと言われてもにわかには信じ難い。信頼は地に堕ち、消費者は不審の目で見ている。


8月19日(金曜日) 吉田秋生「海街diary4」

 吉田秋生の「海街diary4/帰れないふたり」を読んだ。1年半に1冊のペースでコミックスが出るので、もうそろそろかなと待ち焦がれていたところでようやく最新刊が登場した。人気シリーズの第4巻。

 父親が亡くなって、異母姉妹の3人と一緒に暮らし始めた中学生すずの日常が、鎌倉の街を舞台に優しくほのぼのと描かれる。緊張感や微妙な空気が漂ってもおかしくないのに、全体として温かく思いやりにあふれている。そんな吉田秋生ワールドは、最新作でも期待を裏切らない。面白かったけど、お腹が減った(笑)。

 登場するキャラクターがみんなひたむきで、生き生きと描写されているのも魅力の一つ。人を好きになることの意味が、物語を通して繰り返し問いかけられるのだが、深刻で悩ましいテーマを取り上げながらも、読みながら明るく優しい気持ちにさせられるのはさすがだ。

 次に出る本が待ち遠しいということでは、僕としては、村山由佳の小説「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズと似ている。こちらは1年に1冊のペースで文庫本が刊行。どちらも続きが楽しみな大好きな作家だ。早く次が読みたい。


8月20日(土曜日) アイスの安売り日

 近所のスーパーで、週に1回ほどの割合で実施されるアイスの安売りの日。閉店に近い遅い時間帯に行ったが、きのうから急に涼しくなったこともあって結構たくさん残っていた。ラッキー。通常なら110円〜130円するアイスクリームが、この日は1個88円で販売される。5個まとめて買うと1個あたり80円。しかも歩いて20分ほどかかる駅前のスーパーと違って、近くだから帰宅途中に溶けるのを心配する必要もない。お目当ての抹茶アイスは残念ながらなかったけど、森永「MOW」シリーズの北海道ミルクバニラほかを購入する。まだまだ残暑は続くのだ(たぶん)。


8月21日(日曜日) 福島の農家は加害者にならないで

 「福島県産の食べ物の安全・安心を県知事が東京を訪れてPRする取り組み」(ふくしま新発売。)に対して、福島の農家の側から厳しい批判の声が上がっている。「それはおかしい。順序が逆だろう。原発の放射性物質が大量に降った現実を何とかしないまま作物を作って、安全だ!安心だ!と言ってだれが納得してだれが信用するんだ」と激しい怒りを行政や農協にぶつけている。「農家の婿のブログ」から以下抜粋する。

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 「福島産が忌避されるのにはちゃんと理由がある。福島産だってセシウムが検出されない商品がちゃんとあることくらいみんな知ってる。でも問題はそういうことじゃない。信用がないんだ。福島県民が不誠実だと思われているんだ。買う側も作る側も不安なんだ。だったら不安を払しょくする努力をしなければならないが、少なくとも暫定基準値以下だから安全だと声高らかに宣言することではない。僕も含め世間はその暫定基準自体を疑っている」

 「福島県の状況は、美味しいと評判のお弁当屋さんに、生ゴミ運搬車が突っ込んできて厨房に生ゴミが撒き散らされた状態だ。たまたま生ゴミで汚れなかった調理台を使って弁当を作っている。それを売ろうとしている。お弁当屋さんがこう答える。片付けてないけど、汚れてない台を使ってるんで大丈夫です」

 「やるべき順序が絶望的なまでに間違っている。ろくに除染をしようともせずに、安心だ安全だ、買わないのは風評被害だと、そんなふうに消費者のせいにするからどうしようもないことになる。彼らは不誠実な僕らに愛想を尽かしはじめただけだ。震災後、今までの対応が消費者の目には不誠実に映ったんだ」

 「過小評価して何とか出荷しようという目先の利益優先の行き当たりばったりな対応が、消費者に見透かされている。もうとっくに具体的に動く時期に来ている。まずは徹底的な調査をするべきだ。コスト的に無理とか資源的に無理とかじゃない。やるしかない。そして要除染区域と除染不要区域に分ける。基準値とその根拠と、その各区域の数値は徹底的に公表すべきだ」

 「要除染区域はとにかく除染を徹底的に。そして基準値を下回ったら除染不要区域に回す。除染不要区域には作物を植えて、出来たものをまた徹底的に検査する。信頼できる区域は安全区域宣言。継続検査が必要な区域は検査継続区域に。安全宣言が出された区域の作物だけ出荷できるようにすればいい。まずは会津地方から、時間がたつにつれ安全区域は増えていく。その時には堂々と宣言したらいい。『安心、安全で美味しい福島産』と」

◇◇

 なんと本質を突いた誠実で真摯な意見だろう。厳しく大変な状況でありながら、消費者の安心と安全をまず優先的に考えた上で、行動しようと呼びかける姿勢に頭が下がる。言うまでもなく福島の生産者は被害者だ。悪いのは安全神話を振りまいて原発を稼働してきた電力会社と、利権にまみれた原子力行政を推進してきた行政だ。だからこそ農家の方々には言いたい。「被害者だからこそ加害者にならないでほしい」と。農家が誇りを持って田畑を耕し、消費者が安全で美味しい福島県産の作物を安心して食べられる。そんな日が一日も早く訪れることを心から願う。

◇(農家の婿のブログ/ふくしま新発売。笑わせるな)→

http://ameblo.jp/noukanomuko/entry-10992569626.html

◇(NHK NEWS WEB “ふくしま 新発売。” 安全をPR)→

http://www3.nhk.or.jp/news/tokusetsu2011/0817.html

◇◇

 政府は高濃度の放射性物質に汚染された原発周辺地域について、長期間にわたって居住が困難になると判断したという。何を今さら感が否めない。当初からこうした認識を述べていた菅首相は、よってたかって散々非難されたじゃないか。「本当のこと」が言えるようになるまで、無駄な時差が生じる典型だ。

 「原発周辺地域は長期間にわたって居住困難」とやっと公式に表明されたが、警戒区域はこの先いったいどこまで広がるのか。本当に原発周辺だけで大丈夫なのか。そこが今後の焦点になるだろう。政府や知事レベルだけでデータを囲い込まず、手遅れにならないようにしっかり情報公開してほしい。


8月22日(月曜日) 残暑見舞いのはがき

 残暑見舞いのはがきを書き終えた。いただいた暑中見舞いへの返事なんだけど、このまま秋になったら「残暑」ではなくなってしまう。どうしようと一瞬心配したが、明日からまた暑さが戻ってくるという。杞憂だったな。

 ちなみに残暑見舞いのはがきには、取り返しのつかない原発事故を起こした電力会社と原子力行政の批判を、5行(100字)ほど書いて印刷。「電力不足デマ拡散」に対する「怒りの夏」をコメントした。原発なんかなくても電気は十分に足りてるんやで。そんな今夏を象徴するメッセージだ。


8月23日(火曜日) 世論の責任、記者の役割

 少なくとも脱原発を真正面から主張した最高権力者は、後にも先にも菅首相ただ一人です。菅首相が脱原発を強く訴えた時が、大きく舵を切る最後のチャンスだったと思います。あの時に世論が強力にバックアップしていれば、と考えると残念で仕方ありません。

 マスコミから袋叩きにされ、原発を推進してきた官僚機構からは情報遮断とサボタージュをされ、財界と与党さえも原発推進といった四面楚歌の状態で、世論の支持なしで脱原発を進めるのは無理だと思います。菅首相を潰してしまった世論の責任は大きいです。

 この次に原発が爆発したら、日本はもう終わりでしょう。今だって放射性物質が大量に漏れ続けているし、原発が稼働される限り、膨大な核廃棄物が生み出され続けるのです。原発に幻想を抱く社会からは一刻も早く抜け出してほしい。とにかく脱原発の姿勢が明確な首相を切望します。

◇◇

 夕方から東京・四谷。出版社の暑気払い。編集長から「福島原発2キロ圏内の突入取材をやれ」と言われた。2キロって…。それはともかく、原発に対する被災者の思いを取材するのが企画の本筋だそうで、それなら引き受ける価値がある。原発への怒りや食材への不安を吐露できない人も少なくないだろうから。

 危ない場所にあえて出かけて突撃取材をするのが、ジャーナリズム精神だと僕は全く思わない。そういう取材もあるだろうが、僕はそういうことに価値を見い出さない。原発や原発事故に対する被災者の本音を聞くことこそが、記者のやるべき仕事だと思っているので、危険区域に入る必要性も必然性もないと考えている。まあ、飲んだ席での話なので、冗談半分だと思うが(汗)。

 暑気払いは家庭料理の風情のある店。粋な小料理店がひしめき合う一角にあり、路地の奥まったところにたたずんでいる。栃餅の揚げ出しや水茄子のお新香など、あっさりしているのにコクがあってどの料理もすごく美味しい。鶏皮の唐揚げはしょっぱくてビールや焼酎に合う。やきそばだってちょっと普通とは違っていた。いい店だなあ。お招きいただいてありがとうございました。


8月24日(水曜日) 橋下増長の元凶は島田紳助だった

 「今の自分があるのは紳助さんのおかげ」と大阪府の橋下徹知事が述べたとか(読売)。自称弁護士をここまでのさばらせた元凶は島田紳助だったのか。憲法や人権や刑事弁護の基本さえもろくに知らず、大阪府政を好き放題に蹂躙する人物を世間に送り出した紳助の罪は重い。

 自分の考えに合わない者は排除する、言うことを聞かない奴は処分する、という橋下知事の言動には賛成しかねる。公務員はすべての主権者の奉仕者であって、為政者(橋下)の下僕(手下)ではないからだ。それは独裁者の発想だ。

 それにしても島田紳助の話なんかニュース番組で3分以上流すなよ。ワイドショーで扱うならいざ知らず、朝夕のニュース時間帯で延々と流すことか。伝えるべき大事な項目が、ほかにもっとたくさんあるだろう。とは言っても夕方のニュースはもはやワイドショーレベルだった(涙)。NHKも昼のニュースで、官房長官の談話などとからめて長々と放送したのには絶句した。

◇◇

 高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の廃止を、公明党がエネルギー政策の方針として掲げるという。「自民党との(連立の)10年間に過渡的エネルギーとして抑制的に(原子力を)使うという精神を少しずつ忘れていった」のだそうだ(朝日)。やっと目が覚めたのか公明党。だったら菅首相の脱原発をもっとサポートしてほしかった。今さらという気もするけど。


8月25日(木曜日) フィルム一眼レフ

 一眼レフのフィルムカメラは全く使わなくなったので、専門店に引き取ってもらおうかなと機体を磨いていたら、なんだか愛おしくなってもうしばらく手元に置いておこうかと思い始めた。新聞記者時代から現場取材では必ず一緒だった戦友だが、最近は取材で使うのはもっぱらデジカメの一眼レフだ。

 現像の手間はかからないし、撮影したデータはパソコンからすぐに送信できる。データ管理も簡単。デジカメ取材は当然のなりゆきで、今さらフィルムカメラの出番はもうないと思う。でもニコンの黒いボディーをごしごしと拭っていると、取材現場での風景が浮かんできて、手放すのが可哀相になってきた。

 予備のフィルムを入れるケースがくっついたストラップは、記者やカメラマンにはおなじみの装備。フィルム不要の今では、それも全く無用な代物となってしまった。それらも含めてニコン一眼レフのフィルムカメラは、このまま自宅で静かに隠居させることにしよう。これまでの活躍に感謝。ご苦労さま。

◇◇

 「想定外の規模の津波だった」というのもウソだった。一世一代の言い訳かと思っていたら、それさえも作り話だったとは。もう何から何まで全部ウソばっかりじゃん。東京電力というのは度し難い恥知らず集団だな。前からみんな分かっていたことだけど。


8月26日(金曜日) 「伝える力」について講演

 久しぶりに講演をした。しかも公費。横須賀市内の県立高校で人権教育研修の講師として、ジャーナリズムの役割だとか、「伝える力」は誰のためのものかといったことを、50人ほどの教員に話をした。ベースにしたのはやはり原発事故と報道の問題。どうしてもこれは避けて通るわけにはいかない。

 昼下がりのエアコンなしの会議室は蒸し暑い。黒板を使いながらの約2時間の講演だったが、居眠りをしている先生は4〜5人ほどで、皆さん熱心に話を聴いてくれた。例年だと半数近く寝ていることもあるという。ツボを押さえた鋭い質問もあったし、まずまずの出来だったかな。

 県教育委員会の指示で、夏休み中の暑い最中にわざわざ「人権研修」の講義を聴かされるなんて、先生方もたまったもんじゃないだろう。個人的には同情するし、まともに耳を傾けてくれるかなあと実は心配していたんだけど、少なくとも退屈せずに関心を持ってくれた(ように見えた)のでよかった。

 講演の締めくくりで先生方には、おかしいと疑問に思う記事や番組があったら、新聞社や放送局や出版社に遠慮なく批判の声を届けてほしい、逆に共感するような記事やニュースがあった場合は、支持するメッセージをぜひ届けてほしい、ということをお願いした。それがメディアのジャーナリズム精神を育て、現場で頑張っている記者やディレクターを援護射撃することになるからだ。

 そして最後にもう一つ。高校新聞の記者(新聞部員)の活動や役割は、プロの記者と同じであることを強調した。その上で、彼らが事実と違うことや人権侵害につながることを伝えようとしている時は、もちろんきちんと指導してもらいたいが、事実と信念に基づいて報道しようとしている場合は、それが学校や教員にとって都合の悪いことであっても、顧問やほかの先生も管理職も全力で新聞部員を守ってほしい、と強くお願いした。それができるかどうかによって、その学校の民主主義の成熟度と教育理念の豊かさが見えてくることになるからだ。複雑な表情を見せる先生もいれば、うなずいている(ように見えた)先生もいた。

◇◇

 大阪維新の会が府議会や大阪市議会などに提出する「教育基本条例案」について、橋下知事が「(教職員が)政治家の決定に従うのは当たり前だ」と語気を強めたという(読売)。この人は本当に法曹資格を剥奪されるべきだ。教育に政治が介入していいわけないだろう。教育委員会制度がなぜ存在するのか、どうして政治から独立して存在する必要があるのか、まるで理解していない。歴史から何も学んでいない。時代錯誤の独裁者。

◇◇

 菅首相の退任会見の録画を見る。原発に関するくだりは特に出色だった。首相が菅さんでなかったら、脱原発なんて言葉は出てこなかっただろうし、原発を止めることなどまずあり得なかった。もちろん自民党政権なら絶対にない。民主党代表選の度し難い中身のなさを見ながら、菅首相続投でなぜダメなのかと改めて思う。


8月27日(土曜日) 現実直視できない福島県知事

 菅首相が福島県の佐藤知事と会談し、「汚染土壌などを一時管理する中間貯蔵施設を福島県内に整備する」「長期間にわたって帰還や居住が困難になる地域が生じる」と伝えた。これに対し佐藤知事は、「突然の話で非常に困惑している。ただただ困惑している」と繰り返し述べたという(NHKニュースなど)。

 さらに佐藤知事は、「住民は一日も早く自宅に帰りたいと思っている。とてもショックを受けるだろう。まず除染をしっかりしてほしい」などと述べたそうだ。突然の話も何も、汚染土壌などについては常識で考えて現時点でほかに管理のしようがないし、緊急事態なんだから悠長に根回しなんかをやってる余裕などなかろう。

 福島県内で生じた汚染物質は大量にあり、しかもこれからもどんどん出てくる。そもそも放射性物質の「除染」など不可能で、実際には一時的に土を入れ替えるだけの作業に過ぎない。福島県外に運んだりしたら汚染を拡大するだけだ。佐藤知事は具体的に何をどうしたいと考えているのか。

 被災地住民の心情は察するに余りあるが、長期間にわたって居住できない地域が生じることは、原発が爆発して高濃度の放射性物質が大量にまき散らされた時点で、分かりきった話だろう。当初から菅首相はそう述べていた。子どもたちの県外への疎開を阻み、福島産の給食を食べさせようとするなど、現実をまるで直視しない(できない)福島県知事の無能さには驚くしかない。

 読売新聞によると、退陣表明した菅首相からの「長期間にわたり居住困難地域が生じる」という「宣告」に、原発の地元から怒りの声が上がったそうだ。いかにも読売らしい悪意に満ちた記事。見出しも同様。<退陣表明した首相からの「宣告」に怒りの声>これが読売の見出しである。さすがにひどすぎるだろう。退陣表明する前から菅首相は、長期間にわたって住めなくなることは指摘しているし、居住不可能なのはだれの目から見ても明らかなのだから。呆れた馬鹿記事としか言いようがない。


8月28日(日曜日) 汚染を拡散?

 放射能汚染された廃棄物の中間貯蔵施設を福島県内に設置する方針って、そんなにおかしなことなの? 地元自治体の首長が「受け入れられない」って怒ってるけど、それはつまり県外に運べってことだよね? 気持ちはとてもよく分かるけど、そうしたら放射能汚染を拡散することになるよね? むしろ地元の姿勢の方が理解に苦しむんだけどなあ。

 放射能汚染物質の中間貯蔵施設を福島に設置する菅首相の方針って、無責任で思いつきですかね。他県に移動して汚染を拡散させないためには、県内貯蔵は仕方ないんじゃないのかなあ。日本国民みんなで被曝を分かち合えというのなら、それはそれで一つの考え方だとは思うけど、地元はそんなことを望んでいるの?

 汚染廃棄物の中間貯蔵施設について、福島県大熊町の渡辺利綱町長は「とても受け入れられない」と町内設置を認めない考えを示した。これに対して、細野豪志原発担当相は「中間貯蔵の問題を乗り越えないと、除染が進まない状況に追い込まれている」と語ったという(朝日)。細野氏の言葉の方がもっともだと思う。


8月29日(月曜日) NHK誤報より大事な問題

 きょうから自宅にNTTの光回線が開通するはずだったが、ケーブルがマンション内の配管の途中で引っかかっているらしいということで、残念ながら本日の開通はならず。後日あらためて専門の技術者が再工事することになった。プロバイダーにもその旨を連絡して、切り替えたインターネット接続サービスを元のADSLに戻してもらった。工事に立ち会うため待機していたのに、時間が無駄になってしまった(涙)。よくあることらしいけど。あーあ。

◇◇

 NHKが民主党代表選の決選投票の生中継で、決選投票が始まってすぐに「馬淵澄夫氏は、決選投票になったら海江田万里氏以外の候補に投票するように呼びかけた」と報じたが、後で「馬淵氏は、決選投票になったら自分と政策の近い海江田氏に投票するようにと述べた」と訂正した。ラジオ第1放送を聞きながら、あれれ、それだと数が合わないなと思っていたらやはりの訂正。それにしても酷い誤報だな。焦り過ぎだ。

 NHKは馬淵氏の言葉を決選投票が終わった段階ですぐに報じればよかったのに、少しでも早くと勇み足で伝えて、挙げ句に取材記者の勘違い(たぶん思い込みによるものだろう)で、正反対の内容を流すことになってしまった。酷い誤報だと思うが、民主党議員がこのニュースを見聞きしながら投票したとは思えないから、結果に影響はないのではないか。

 インターネットのツイッターなどでは早速、「極めて悪質な情報操作」とか「意図的に捏造報道」などと騒いでいる連中がいる。大変な問題だ、訂正して済む話じゃない、といきり立っている自称論説記者もいる。そんな大層なことじゃないように思うけどなあ。もちろんあってはならないミスだが、取材したNHKの政治部記者が間抜けでポカしたのだと思うけど(たぶん)。陰謀論が大好きな人は、そうは受け取らないのだろうな。毎度毎度ご苦労なことだ。

 そんなことよりもはるかに問題なのは、民主党代表選で原発がろくに議論されなかったことだろう。原子力発電をどうするのか、原発事故にどう対処するかが最大の課題のはずなのに、この国の政治家はなんて悠長なんだろう。メディアも。国民の生命と国の存亡に関わる待ったなしの深刻な事態に直面しているのに。危機感のなさに呆れる。何回でも言うが、菅首相を辞めさせる意味がどこにあったのか、さっぱり分からない。菅さん続投でよかったじゃん。


8月30日(火曜日) 半年ぶりのテレビ

 家電量販店に注文したテレビが届いた。大震災の10日ほど前に壊れてから、ずっとテレビなしの生活を送ってきた(2011年3月6日付「身辺雑記」参照)。あれからちょうど6カ月ぶりに、自宅のリビングでテレビを視聴する。ドジョウ野田首相の顔が大写しになった(笑)。14インチの小型から32型にグレードアップ。やっぱり大きな画面はいいな。

 来月にスタートするアニメ「侵略!イカ娘」2期の放送が見たくて、テレビの購入を決断(笑)。テレビ大好き人間だった僕が、ラジオ中心の生活を続けるのは最初は苦痛だったけど、1週間ほどで慣れた。くだらない番組がいかに多いか痛感したので、時間を浪費しないようにドキュメンタリーやニュースを中心に視聴を絞って、節度ある姿勢で見るつもりだ。

 壊れた古いテレビをどけて、物置状態の壁際を片付けて新しいテレビの設置場所を確保し、ごちゃごちゃになっている配線を整理した。テレビ購入や光回線の工事が来るといった「外圧」があると、さすがに大掃除に取り組まざるを得ない。ナマケモノなので追い込まれないと動かないのだ。

 さてと部屋もすっきりしたことだし(当社比)、仕事だ仕事だ。片付いたのはリビングだけで、仕事部屋は道半ばの状態だが、書かなくてはならない原稿がたまってる。取材計画も立てなきゃ。


8月31日(水曜日) アエラを執拗に攻撃する人々

 いまだに大震災直後に発行されたアエラ「放射能がくる」(3月28日号)の表紙コピーを持ち出して、人権意識が低いなどと非難してる輩(2011年3月19日付「身辺雑記」参照)が大勢いることに驚く。そして今週号のアエラが特集記事で、放射能被害に怯え恐れおののく被災地の子どもや保護者の声を扱ったことに対し、これまた人権意識が低いなどと罵倒している。なんだかなあ。

 アエラを非難する連中は、「子どもに原発不安の作文を書かせて政治利用している」「不安を助長させる親がけしからん」という理屈を展開して、矛先を周囲の大人に向ける。子どもは自分の意思や感性で発言などしない、大人に言わされているだけ、といわんばかりの論調だ。なんと子どもの人格を軽んじた発想か。これこそ人権意識の低さそのものではないか。

 そしてこの連中は「ふつうの子供産めますか」という言葉に噛み付く。彼らはもっともらしく「ハンディキャップを持つ人への蔑視だ」と批判するが、子どもでも大人でも将来を不安に思うのは当然だろう。そういう彼らは、ベトナム戦争の枯れ葉剤散布地域の住民にも、「将来の不安を口にするな」と言うのだろうか。まさに典型的な論理のすり替えである。

 もっともらしく「人権意識」といった言葉を持ち出して、アエラの原発報道を叩き、原発事故による健康不安を訴える切実な声を罵倒する人々。彼らの言動こそが「人権意識の欠如」そのもので、実は原発不安を矮小化させるための屁理屈にしかなっていない。むしろ東電や原子力行政の代弁者にしか見えない。原発事故を過小評価し、健康被害への不安の声を抹殺する役割を見事に果たしている。

 アエラの「放射能がくる」(表紙キャッチ)や「ふつうの子供産めますか」(福島の子どもたちからの手紙)に、一部の人たちが異様とも言える嫌悪感を示すのは、これらの言葉が本質を突いているからだ。一番触れられたくない真実の部分。都合の悪い部分。黙らせたい部分。隠したかったことを、的確に端的にえぐらったからにほかならない。

◇◇

 「脱原発を掲げた菅氏との違いは明らか。ぶれずにやってもらいたい」──。大間原発を抱える青森県大間町の金沢満春町長や地元事業者らは、新首相に指名された野田氏に対して原発推進への期待感をにじませたという(読売)。原発立地自治体と経済界は、目の前で原発が爆発して、さらに再び大量の放射性物質がまき散らされても目が覚めないのだろうなあと、絶望的な気持ちになった。この記事自体も酷いな。「一方、反対派からは不安の声」って最後の3行だけ。もう少しほかに書きようがあるだろうに。いかにも読売という記事ではあるけれども。

◇◇

 上司の問題行動を社内のコンプライアンス窓口に通報した「オリンパス」社員が、不当配転の無効確認を求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(鈴木健太裁判長)は、「不利益はわずかで配転命令は報復目的ではない」とした一審の東京地裁判決を取り消し、「人事権の乱用。事実上の報復人事にあたる」と認めて、オリンパス社員側の逆転勝訴の判決を言い渡した。高裁判決は、社内窓口の守秘義務違反を認定するとともに、「内部通報者に不利益となる扱いを禁じた社内規定に反する」と判断した。

 東京高裁は当然の判断をした。むしろ一審の社員側敗訴判決がおかしい。内部通報者に人事制裁や報復をするような企業に対し、司法はもっと厳しく対処するべきだ。司法が毅然とした対応を取らない限り、通報制度は形骸化するだけで正常に機能しない。司法の怠慢こそ問題だ。


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