身辺雑記 

by totoropen (OOKA Minami)


2011年11月1日〜11月30日

●危機感が希薄な新聞労組●充足感たっぷり●脱原発バッジ●原発推進広告に横尾忠則氏抗議●球団を利用するな●映画「悪人」に共感できず●NHK総合で「ずっとウソだった」●レジュメ改編●社員である前に「記者」であれ●「テレビ大好き生活」復活阻止●巨人球団代表の告発●山田太一さんの話●朝日新聞が取材断念●やはり釈然としない●気分はもう師走?●原発を他国に売り込むな●内部告発への徹底攻撃●アド街・草加特集●放射線測定器が届く●出稿●時刻表●夜中の「深夜食堂」は反則●年賀はがき購入●「DOCTORS 最強の名医」●試験問題作成●ナチス台頭を想起するハシズム●橋下氏は「民意」を無視するな●読売ナベツネ氏と報道機関●「食い入るように…」●●●ほか


11月1日(火曜日) 危機感が希薄な新聞労組

 10月21日付の朝日新聞に掲載された意見広告「選ぶべき道は脱原発ではありません」(同日付「身辺雑記」参照)について、某全国紙の先輩H記者が電話をくれた。この意見広告は5紙誌に掲載されているという。広告主である「国家基本問題研究所」のサイトを早速確認すると、読売(20日付)、朝日、産経(21日付)、日経(22日付)の4紙と月刊WILLの12月号に掲載されたようだ。「本来なら新聞社の労働組合が問題視するべき話なのに、まったく取り上げる気配さえない」と先輩記者は嘆いていた。こうした問題に対してかつては敏感に反応していた新聞労組の新研部(新聞研究部)は、もはやほとんどまともに機能しておらず、中堅や若手記者の問題意識もすっかり希薄になってしまったということなのだろうか。そもそも危機感がないどころか無関心なのかもしれない。新聞ジャーナリズムが衰退し、残念な存在になりつつあるのを垣間見たような気がする。


11月2日(水曜日) 充足感たっぷり

 午後から授業。学生の反応がすこぶるよい。この日の講義に対する感想や質問などを自由に書いてもらう出席カード(コメントシート)にも、びっしり記入してくる学生が多かった。時間内に過不足なく立て板に水で話ができたし、居眠りや私語もほとんどなく、手応えもあったのでとても気分がいい。充足感たっぷりで講義を終えることができた。


11月3日(木曜日) 脱原発バッジ

 午後から横浜市内で、憲法集会「生存権を脅かす原発」を取材。販売コーナーに並んでいた脱原発の缶バッジを購入。ソフトな感じで「原子力?さようなら」とメッセージが書かれているのがいい。僕自身のスタンスは明確に「脱原発」「反原発」でも、さすがにこのバッジを付けて取材するのは、記者倫理としてまずいと思うが、授業をする分には何も問題はないはずだ。来週はバッジで意思表示をしつつ教壇に立ってみよう。もっとも原発と原発報道の問題点については、毎回のように講義の中で触れているんだけど。


11月4日(金曜日) 原発推進広告に横尾忠則氏抗議

 「櫻井よしこさんが原発推進と思われる意見広告を読売新聞に出されたことを今日、そのコピーで知りました。そこにぼくが3年前に描いたマークが使用されているのも初めて知りました。当初は原発が問題になっていない時で、日本を考えていくための有識者の団体だと聞いていました。それが原発推進の行動を起こそうとされているようです。ぼくは元々原発には反対の立場で、現在、脱原発のポスターも制作中です。そんなぼくのマークを使用すること自体この団体は自らの主旨に反することを行っていることになるので、以後マークの使用を一切禁止するよう抗議しました」

 10月20日付の読売新聞や21日付の朝日新聞などに掲載された意見広告「選ぶべき道は脱原発ではありません」(10月21日付「身辺雑記」参照)について、グラフィック・デザイナーで画家の横尾忠則さんがツイッターから発信したコメントだ。心から安堵した。意見広告には「ロゴデザイン/横尾忠則」とわざわざ明記してあったので、「このような団体と意見広告に横尾忠則さんが関与しているなんて」と疑念を抱いていたからだ。

 同じように「まさか本当に?」と感じた読者も多かったのではないだろうか。しかし「ぼくは元々原発には反対の立場」「以後ぼくの描いたマークの使用を一切禁止するよう抗議しました」と、これだけはっきりと断言されているのを読んでほっとした。それと同時に、広告主の「国家基本問題研究所」なるもののいかがわしさが、改めてよく分かった。

 「国家基本問題研究所」の公式サイトには、横尾さんからの抗議について一切触れられていない。そればかりか新聞の意見広告もそのまま掲載されている。さらに「研究所概要」のページでは、ロゴマークの由来と横尾忠則さんの略歴まで大々的に紹介して、組織の権威付けに利用しているが、こちらもそのままだ。恥知らずなだけでなく誠意のかけらさえ感じられない。つまるところそういう団体なのだろう。「連綿と続く日本文明を誇りとし、かつ、広い国際的視野に立って、日本のあり方を再考しようとするものです」と書かれた研究所概要の御大層な説明がなんともそらぞらしい。


11月5日(土曜日) 球団を利用するな

 漫画家のやくみつる氏が横浜ベイスターズのファン休止を宣言。「モバイルゲームは社会に必要ない。子どもによくない。携帯電話はおもちゃじゃないんだ」と理由を語ったという。全く同感。「地元横浜の企業が買ったらまたファンになる」そうだ。横浜への筋の通った愛情を感じる。

 広告宣伝のためだけに球団を利用する姿勢が露骨なオーナー会社は論外だ。社会的な文化公共財を温かく見守るパトロンのような懐の深い会社が、球団を持つべきだと思う。カネは出すけど口は出さない。そんな理想的なオーナーはもはや存在しないのだろうか。


11月6日(日曜日) 映画「悪人」に共感できず

 テレビ朝日系の日曜洋画劇場で「悪人」を見た。登場人物の誰にも共感できず、感情移入もできなかった。あえて共感できるとすれば、柄本明が演じた被害者の親父さんくらいかな。後味も悪いし、最後まで嫌な感じしか抱けない作品だった。ファンの人には申し訳ないけど、映画館で見なくてよかった。柄本明と樹木希林はとてもいい演技をしていたと思う。


11月7日(月曜日) NHK総合で「ずっとウソだった」

 NHK総合テレビ(地上波)で、斉藤和義「ずっとウソだった」が流れた。「京都音楽博覧会2001」の番組の中で、ライブシーンが全編ノーカットでしっかりと放送された。すごい。原発事故以降の脱原発や反原発の世論の盛り上がりがなければ、絶対に放送しなかっただろう。そういう意味では実に感慨深い。

 取り返しのつかない悲惨な原発事故が起きて、ようやく伝えるべきことが伝えられるようになった(ほんの少しだけ)、というところが何とも情けない話だけど…。取り返しがつかない事態が起きてしまう前に、自主規制せず圧力をはねのけてしっかり伝えるべきことを伝えておけば、もっと違った展開になったはずなのに、と思うのはパニック映画で描かれる物語と全く同じだよなあ。


11月8日(火曜日) レジュメ改編

 授業のレジュメをいろいろと改編。前年度まで毎年使っていたものを、なんだかんだで、大幅に手直しすることになってしまう。レジュメと一緒に配る資料も差し替えの準備。社会状況の変化が大きいこともあって、今年度は毎回そういう作業が多い。

 でもってそのこととは全く関係ないのだけど、原稿の締め切りを延ばしてもらった。まことに申し訳ありません(汗)。


11月9日(水曜日) 社員である前に「記者」であれ

 午後から授業。大学の印刷機の調子が最近よくない。しょっちゅう故障する。そのたびに事務職員に頼んで直してもらうが、きょうは次の授業時間が迫っているので、レジュメや配布資料の一部は印刷でなくコピーに回した。「経費節減のため30部以上の場合はコピーでなく印刷を」と注意喚起されているけれど、緊急事態だから仕方がない。ギリギリで講義に間に合った。

 きょうの講義のハイライトは、巨額の損失隠し問題に揺れるオリンパスの前社長と副社長との会話のエピソードだろう。「あなたはだれのために仕事をしているんだと、オリンパスの前社長が副社長に聞いた。当然のことながらオリンパスのために仕事をしていると答えると思ったら、自分はオリンパスの会長のために仕事をしていると副社長が答えたので、解任された英国人の前社長は絶句したそうだ」。そんな話を学生たちに紹介した。

 だれのために何のために取材して記事を書くのか。記者は読者に判断材料を提供するために仕事をしているのであって、記者は会社員である前にまず「記者」であるべきだ。これは記者だけに限った話ではなく、実はすべての職業人に当てはまる。すべての職業人はまず消費者のために仕事をすべきで、その結果が会社の利益・信頼につながるという順序を忘れてはならない。そういう文脈の中で、オリンパスの前社長と副社長との会話を学生に紹介した。メディアの病巣の一端はそこに潜んでいるのだ。伝えようとしたことはしっかり学生に届いたみたいだ(たぶん)。

◇◇

 オリンパスの不正経理問題の最大の責任は、腐りきったとんでもない経営陣にあるのは言うまでもないが、監査法人の責任も相当大きいと思う。経営と決算をしっかり監査すべき監査法人が、チェック機能を果たしていなかったのは明白で、職務怠慢か意図的にサボタージュしていたのではないのか、と疑われても仕方ないだろう。企業の悪質な不正経理が明らかになった場合は、監査法人の職務怠慢と不作為による結果であると判断して、監査法人にも厳しいペナルティーを与えるように法律を改正すべきではないか。それくらいのことをしないと、監査法人は独立して公正に日本企業のコンプライアンス(法令遵守)とガバナンス(企業統治)のチェックなどしないだろう。


11月10日(木曜日) 「テレビ大好き生活」復活阻止

 8月末に地デジ対応のテレビを買って、半年ぶりにテレビを見るようになってから、じわじわと以前のような「テレビ大好き生活」に戻りつつある気がする。無駄で無意味な番組はなるべく見ないようにと肝に銘じて、ニュースやドキュメンタリーのほかは、お気に入りのドラマとアニメを厳選しているのだが、ドラマとアニメはついつい結構な数を見てしまう。もっと気合いを入れて厳選しなければ。それでもワイドショーやバラエティーなど、テレビの電源をオフにした後で時間の浪費を後悔するクズみたいな番組は、ほとんど見向きもしなくなったのは進歩だと思うけど。


11月11日(金曜日) 巨人球団代表の告発

 巨人のナベツネこと渡辺恒雄・球団会長(読売新聞グループ本社会長・主筆)を、清武英利・球団代表が告発したが、清武代表の担当弁護士は、取材などで昔から懇意にしていただいているY弁護士だ。私物化、コンプライアンス、プライド、基本的人権、といったキーワードに、Y弁護士の一貫した姿勢がうかがえて感慨深い。

 東京都の常軌を逸した教育行政にたった一人で闘いを挑んだ元都立高校校長・土肥信雄さん(2009年7月4日付「身辺雑記」など参照)の訴訟も、Y弁護士は担当している。土肥さんの闘いと、巨人の清武球団代表の内部告発とは通じるものがある。理不尽な命令にも黙って従い、保身に走る日本社会や企業体質を象徴しているように思う。プロ野球界も同様だ。

 ふだんはポーカーフェースながら、ここぞという時には容赦ない姿勢で相手に迫るY弁護士は、なかなか頼もしい存在だ。土肥さんの裁判は来月22日に一審判決が言い渡される。清武球団代表の告発とともに、どちらもいい結果が得られるように期待している。

◇◇

 野田首相が、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加の方針を正式表明した。あるいは「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」ことを正式表明した、と言うべきなのか。どちらにしても、野田首相がTPP交渉参加の腹づもりなのは間違いない。

 それにしても「国益を基本にする」なんて言われてもなあ。それぞれの立場によって「国益」の内容は違ってくるもんなあ。野田政権は分かりにくくて曖昧なことばっかり、言ったりやったりしているが、しかしそれでごまかされる人もいるのだろうなあ。


11月12日(土曜日) 山田太一さんの話

 午後から横浜・桜木町。市立高校教職員組合の教研集会で、脚本家・山田太一さんの講演を聞いた。取材というよりファンの一人として(汗)。終わってから主催者のご厚意で、懇談の席に同席させていただいた上に、一緒に記念撮影までしていただく。一応は遠慮して固辞したんだけど(滝汗)。記者失格と言われようとも、でもうれしい。山田太一さんの話で印象的だった言葉。「くだらないものや不便なものに価値を求めるのはいい社会。そこに生きている喜びや値打ちがある」。なるほど、納得。

 山田太一脚本の「早春スケッチブック」では、山崎努の「ありきたりなことをいうな」「お前らは、骨の髄まで、ありきたりだ」という台詞が印象的だが、この台詞に関して、「視聴者に喧嘩を売るようなこんな台詞が書けるなんて」と言わせるくらい脚本家志望の若手に衝撃を与えた2011年9月29日付「身辺雑記」参照)そうですが…と山田太一さんに質問した。山田さんは「当時のテレビ局だからこそ放送してくれたんでしょうね。今は無理でしょう」とおっしゃっていた。昔のテレビ局はとんがっていて、度量があったんだな。


11月13日(日曜日) 朝日新聞が取材断念

 10月20日付の読売新聞や21日付の朝日新聞などに掲載された意見広告「選ぶべき道は脱原発ではありません」(11月4日付「身辺雑記」参照)について、朝日新聞の社会部が取材に動いたそうだ。脱原発の世論が高まっているこの時期に、新聞社がこのような意見広告を掲載する背景には何があるのか、横尾忠則さんの抗議の意味はどういうものなのか、といったことを検証する目的だったという。この意見広告に関しては、僕もこれまで何回か触れてきたが、僕の「身辺雑記」を読んでいただいたことなどが、取材の動機付けになったと聞いた(11月1日付「身辺雑記」参照)。

 ところが朝日新聞はこの取材を途中で断念した。「原発には反対の立場だ」として、広告主の櫻井よしこさんら「国家基本問題研究所」に抗議していたグラフィック・デザイナーで画家の横尾忠則さんが、これ以上の抗議を止めてしまったことが理由だという。横尾さんと櫻井さんらとの間で何があったのかは不明だが、抗議していた本人が抗議を止めたら確かに記事は書きにくくなる。

 もちろん、原発推進の意見広告が出された背景や、広告を掲載した新聞社の事情などをしっかり検証して、詳しく紹介する記事を書く余地は十二分にあると思うけど、しかしそれだけだと「インパクトが弱い」「新聞社の幹部を説得できない」などと判断したのかもしれない。「逃げ道を作っておくことができなくなった」ことによる「大人の事情」ってやつだろうか。

 そもそもお金があふれていたバブル絶頂期のころだったら、この手の一方的な意見広告は、編集方針や広告掲載審査基準から外れることなどを理由として、少なくとも朝日新聞の紙面には掲載されなかっただろう。しかし「貧すれば鈍する」という言葉通り、内容のいかんにかかわらず貴重な収入源である広告掲載を断る体力は、残念ながら現在の新聞社には残されていない。ほとんど余力がなく、もはや「背に腹は代えられない」といった状況なのだろう。広告だけに限った問題ではない。毅然とした態度が取れない新聞社や放送局などのメディアに、ジャーナリズムとしての未来があるのかどうか、はなはだ疑問に感じる。紙面や編集の姿勢に対して、チェック機能を果たさない労働組合(新研活動)も同じだ。

 【補足】 原発推進意見広告のロゴマーク使用中止の連絡を受けて、横尾氏は広告主への抗議を取りやめた。朝日関係者によると、そのために朝日は取材を中断したという話だ。しかし、広告主である「国家基本問題研究所」の公式サイトには13日現在も、横尾さんからの抗議について一切触れられていないし、新聞の意見広告もそのまま掲載されている。抗議を止めた横尾氏にも、取材を中断した朝日にも釈然としないものがある。初志貫徹してほしかった。


11月14日(月曜日) 山田太一さんの名言その2

 山田太一さんの話で印象的だった言葉シリーズその2。「お経なんてみんな分からないまま、まあいいやって聞いているけど、そこに魂の安定がある。よく分からないものをそのままにしておくことに豊かさがある。言葉が世界共通になればいいと言う人がいるが、分からないことや神秘性があるからいいんだ」。なるほど。


11月15日(火曜日) やはり釈然としない

 「国家基本問題研究所」が公式サイトに「ロゴ使用中止のお知らせ」を載せた。しかし「お知らせ」を掲載したのは15日になってからようやくのこと。しかも同サイトには15日現在も、横尾氏のロゴを使ったそのままの形で意見広告が掲載され続けている。それで「使用を止めてほしい」との横尾忠則氏の主張が受け入れられたことになるだろうか。横尾氏は取材に対して「抗議を止めた」と述べたと聞いている。やはり釈然としない。


11月16日(水曜日) 気分はもう師走?

 午後から授業。きょうのテーマは「ネット社会の光と影」。やはり食い付きがいい。授業が終わってから感想や質問を書いてもらう出席カード兼コメントシート(リアクションペーパー)には、半数以上の学生が、自分自身の体験や講義内容に対する共感の声をぎっしり書いてきた。がっかりさせられたり不快に感じたりするような記述は皆無だった。おまけに履修していないモグリの学生まで感想を出してる。ほえ〜っ。ちょっとびっくり。だけどうれしい。

 毎年クリスマスシーズンになると、イルミネーションで彩られた巨大ツリー10本ほどがキャンパス内に登場するが、早々とツリーの設置作業が始まった。おいおいもうそんな時期なのか。気分は既に師走かよ。まじで焦る。

◇◇

 千葉市で男が人質をとって路線バスに立てこもった事件で、千葉日報社の記者が、千葉県警の警察官に頼まれて記者腕章を貸していたそうだ。この警察官は捜査員のそばで記者腕章を付け、捜査員は容疑者に「報道の記者を連れて来た」と伝えて説得にあたったという。貸してくれと頼む警察も警察で論外だが、記者が報道目的以外で記者腕章を使わせるなんて問題外だ。記者倫理以前の話で完全にアウトだろう。こんなことがまかり通れば、だれも取材に協力してくれなくなってしまう。報道機関として自殺行為としか言いようがない。信じられない。


11月17日(木曜日) 原発を他国に売り込むな

 インド南部に原発が完成したものの、住民の反対運動で商業運転のめどが立たないという(11月15日付の朝日)。この記事の締めくくりの言葉が印象的だった。反対派住民の先頭に立つ元大学教授ウダヤ・クマールさんの問いかけだ。「自国民が苦しんでいる時に、同じ原発を他国に売り込もうなんて、日本はそんな非人道的な国なのか」。日本人として恥ずかしさに身が縮む。原発の輸出を必死になって画策している野田政権、読売新聞などのメディア、企業グループ、原発推進団体の連中には、怒りを込めて恥を知れと言いたい。誇りがあるなら加害に加担してはならない。


11月18日(金曜日) 内部告発への徹底攻撃

 「巨人と読売新聞グループの名誉・信用を傷つけた」として、清武球団代表が解任。巨人の敷居をまたがせることはないのだとか。予想通りの展開、反応に失笑する。内部告発し組織に異議を唱えると、どんなやり方をしたとしても九分九厘は排除され、徹底的に攻撃される。労働事件と同じだ。

 

 それだけ社会も会社も成熟していない、ということなのかもしれない。組織の論理に異議申し立てをした人間に対し、冷淡どころか寄ってたかって非難され罵倒されるのが怖い。その結果、長いものに巻かれた方が得だとなって、みんな声を出さなくなってしまうのがなんとも情けない。

 「日本シリーズの最中(直前)になんでこんなことを言い出すんだ」「プロ野球ファンのことを考えるべきだ」としたリ顔で非難する人たちがいるが、これは全く的外れでおかしな言いがかりだ。日本シリーズの最中だろうが後だろうが、必要があればいつ発信しても構わないじゃないか。日本シリーズも巨人の内紛もどっちも、同時並行でニュースを楽しめばいいだけだ。そもそも日本シリーズの間は大事件も大事故もなく、国際ニュースも政治ニュースもストップしているとでも思っているのだろうか。告発や記者会見の時期を持ち出して問題にするような連中は、いつ告発したとしても何かしらの理由を考えて難くせを付けてくるに違いない。

 清武代表個人のことを僕は何も知らないけど、今回の清武氏のナベツネ氏に対する批判や内部告発は、公益性のある訴えだ。プロ野球が社会の公器だと言うのであるならば、巨人の内紛だけでは済まない問題のはずだ。


11月19日(土曜日) アド街・草加特集

 テレビ東京の「出没!アド街ック天国」今週は埼玉・草加の特集だった。駆け出し記者時代はこの街で過ごしたので懐かしい。せんべい屋も町並みも独協大学も松原団地も。


11月20日(日曜日) 放射線測定器が届く

 注文していた放射線測定器(簡易型放射線チェッカー)がようやく届いた。どの測定器がいいのだろうかとあれこれ調べて探してみたが、店頭での販売にはなかなかお目にかかることができず、最終的には通販でお願いした。そして選んだのは、福島取材の際に出版社が用意してくれたものと同じ日本製の測定器。実際に使ってみて測定値に信頼性があったことと、安定性、使いやすさ、手ごろな価格といったところを総合して判断した。

 早速、自宅の室内を測定してみた。最初は0・8マイクロシーベルト/hだとか、1・2マイクロシーベルト/hだとかバラバラなうえに、やけに高い数値を示して不安定だったが、そのうち次第に落ち着いてきて、0・12マイクロシーベルト/h、さらには測定できないほど低い放射線量を示すLOを表示するようになった。自宅で高濃度が表示されても焦ってしまうので、とりあえずほっとする。それにしても、5・65とか14・77マイクロシーベルト/hなどという数値を測定した飯舘村や浪江町が、いかに異常な事態なのかを改めて深く考えさせられた。


11月21日(月曜日) 出稿

 締め切りを延長してもらっていた原稿をやっと書き上げて送信。写真も適当に見つくろって15枚ほど送信。しかしほかにもだらだらと先延ばしにして、たまっている仕事や雑用が山積している。ひと山を越えても、さらに山が連なっていて休めない。にもかかわらず怠惰な生活が全く改まらないのは、たぶん集中力がすっ飛んでしまっているからだ。…とまあ一応の自覚はあるらしい(おい)。


11月22日(火曜日) 時刻表

 横浜から千葉の房総半島まで、東京湾アクアラインを走って1時間ちょっとで結ぶアクアラインバスの時刻表を調べる。乗り換えなしで直行してくれるのが便利なので、久しぶりに乗ることになりそうだ。ところが間の悪いことに、到着してほしい時間帯がちょうど抜けている。これだとかなり早く着いてしまって、1時間以上も暇になってしまうじゃないか。その次の便だと間に合わないし、なんとも中途半端だなあ。やはり早めに到着するバスに乗るしかなさそうだ。できるだけ遅く起きて家をゆっくり出たかったのに。仕方がないなあ。食事でもして時間をつぶそう。


11月23日(水曜日) 夜中の「深夜食堂」は反則

 毎週毎週こんな夜中に美味しそうな食い物を見せつけて反則だろう。腹が減ってきてたまらん。今夜の「深夜食堂」(TBS系)はクリームシチュー。食べたくなるじゃないか。小林薫が作って差し出されると余計に食欲をそそる。こういうマスターがいる店が近くにあればいいのになあ、といつも思いながら見ている。


11月24日(木曜日) 年賀はがき購入

 年賀はがきを買った。いつもギリギリになって慌てて郵便局に駆け込み、余っているほかの局から取り寄せてもらうなどと、恥ずかしい醜態を毎年のように演じてしまう。希望枚数が確保できない分を、普通のはがきで出したこともあったなあ。今年は早めに行動したおかげで、希望のうぐいす色のインクジェット紙のはがき160枚を、無事に購入することができた。しかし実際に年賀状を書いて投函するのは、大晦日に間に合えば上出来だろう。たぶんいつものように新年になってから出すことになりそうだけど(汗)。


11月25日(金曜日) 「DOCTORS 最強の名医」

 実はいま一番楽しみに見ているテレビドラマは、「深夜食堂」ではなくて、テレビ朝日系の「DOCTORS 最強の名医」(木曜夜9時)だ(深夜食堂はその次に好きなドラマ)。1話や2話ほどの強烈なインパクトはないが、それでも毎週の話の展開が実に面白い。表面上はケンカに負けたようでいながら、しかし実質的な勝負には圧勝し、「患者本位の病院改革」という目標を天才外科医が着実に実現していく。腐りきった医師の目線をどうやって患者に向けさせるかと計略を巡らせつつ、のほほんとマイペースを崩さない改革派医師を、沢村一樹が表情豊かに見事に演じている。一方、病院長の甥でプライドと嫉妬心だけは人一倍強く、かなり性格のゆがんだ外科医を高嶋政伸が好演。ほかに伊藤蘭、野際陽子、小野武彦らベテラン陣が、安定した芝居でドラマを盛り上げる。シリアスな社会派だけど基本はコメディータッチ。とにかく面白い。今シーズンではイチオシのドラマだ。


11月26日(土曜日) 試験問題作成

 定期試験の問題を作成。それにしても試験の実施は2カ月近くも先だというのに、いつものことながら試験問題の提出時期が早いよなあ。余裕を持たせるためだとは思うけど、どこもこんな感じで早いのだろうか。


11月27日(日曜日) ナチス台頭を想起するハシズム

 NHKの大河ドラマ「江」が始まると同時に、大阪府知事・市長のダブル選の当選テロップが画面に出たのは笑ったが、それにしてもつまらん最終回だった。前回で終わってたらよかったのに。大河ドラマのことですけど、もちろん選挙結果もね。

 大方の予想通りの結果とは言え、大阪府知事選と市長選は酷い結果になったもんだ。まあ東京都知事選の時と同じなんだけど、都民も大阪人も変わらない衆愚政治だよなあ。悲しき民主主義としか言いようがない。

 橋下徹、松井一郎両氏の記者会見を眺めていると、ロシアのプーチン・メドベージェフのコンビとダブって見えてくる。「これからは大阪府知事に府政の全権を委ねる」と、ふんぞり返ってのたまう橋下氏の物言いが、首相から大統領に返り咲いたプーチンにそっくりじゃないか。

 橋下氏の言動のめちゃくちゃぶりは、どう考えても石原慎太郎・都知事よりもはるかに酷いと思うんだけどなあ。一般公務員や教職員を必要以上に悪者に仕立て上げて、大阪府民や市民の不満を上手に救い上げたわけだが、独裁的でファシズムに近い政治手法や、教育への政治介入の問題点なんかまるで争点にならなかった。教育や憲法や人権問題は票にならないんだよね。

 都知事選の場合は対抗馬にロクな人がいなかったから、石原氏が当選するのもあり得るとは思うけど(納得はできないけど)、大阪市長選は現職でも十分に対抗できる候補だったのに、なんで橋下氏なんかに投票するのかなあ。

 新潮や文春が橋下氏の人格攻撃を大々的に繰り広げた影響は、結構大きかったように思う。露骨とも言えるネガティブキャンペーンは、かなり意図的なものがあるんじゃないかと感じていた。本人の出自や家族の話まで持ち出すことで、橋下氏が同情を買うとか判官びいきによる票が橋下陣営に流れるだけでなく、一連のネガキャン記事で橋下氏批判がやりにくくなったと思われるからだ。実際どういう意図があったのかは分からないが、少なくとも結果的には批判にためらいが生じて切れ味が鈍くなったのは間違いない。

 本質的な問題点から目を逸らさせて、罵詈雑言をぶつける対象を作り上げる。そうして人々の不平不満を表面的なところに集約させながら、異論を唱える相手は数の論理と恫喝で黙らせる。橋下氏のこの手法は怖い。ナチスドイツが台頭して、ヒトラーが跋扈した状況と二重写しになる。「ハシズム」が大阪を席巻した今回の選挙結果を、大阪の人たち(だけではないかもしれない)が、数年後か数十年後に後悔することにならなければいいが。

 大阪市の職員と教職員はこれから毎朝、「日の丸」に向かって最敬礼させられて、「君が代」を大声で斉唱させられるのかな。選挙で選ばれた首長は絶対的な存在であって、その首長の命令に逆らうのは民意に背くことになる、というのが橋本氏の理屈らしいから、あながち冗談で終わりそうもない。個人的には「日の丸」も「君が代」も嫌いじゃないが、他人に強要するのはあかんよ。

◇◇

 NHKスペシャル・シリーズ原発危機「安全神話〜当事者が語る事故の深層」。「事故なんか絶対に起きない、だから対策など講じない」なんてあり得ないだろう。しかもそれが原子力発電を対象にしての話だとは…。信じられない。「事故が絶対に起きない」わけがない。なんと非科学的で傲慢な連中なのだろう。日本の電力会社幹部は正真正銘のクルクルパーだな(ため息)。おまけに人ごとのように語っているし。

 「リスクを知りながら対策を取らなかった、目を向けようとしなかった」なんて、最悪過ぎる。不作為の作為にもほどがある。市中引き回しの上、打ち首獄門に値するとしか言いようがない。

 「今回の事故で原発に絶対安全はないことが分かりました」ってどういうことだよ、そんなの今回の事故が起きていなくても自明の理じゃないか。馬鹿じゃないのか。NHKスペシャルの最後の締め方はおかしいだろう。大河ドラマ「江」の最終回と同じくらいわけが分からん。


11月28日(月曜日) 橋下氏は「民意」を無視するな

 「市役所の職員は選挙結果を重く受け止めるように」「民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」。大阪市長選で当選した橋下徹氏の言葉だ。一見すると確かに正しいことを述べているように思えるが、しかしそれでは「民意」とは何なのかという前提部分が、きわめてあいまいにされたまま、もっともらしい言葉が発せられるところが実に危うい。橋下氏の手法の最大の危うさだ。

 橋下氏が多数決で選ばれたのは事実だが、多数決なら何をしてもいいのだろうか。橋下氏の得票は約75万票で、一方の平松氏の得票は約52万票だった。橋下氏が過半数を越える支持を得たのはその通りだが、だからといって52万票の市民の存在を無視しても構わないことにはならない。言うまでもないけれども、橋下氏に投票しなかった52万票の声も大切な「民意」だろう。

 「民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」と橋下氏は言うが、橋下氏の考え方を支持する声だけが「民意」で、自分の意見と異なる声は「民意」ではない、切り捨てても当然だというのでは、民主主義は成り立たない。多数派が少数派を説得して、できるだけ多くの人が納得できるように合意形成を進めていくのが、民主主義の本来のあるべき姿だ。そうでなければ、いたずらに対立を生むだけだろう。自分の支持者だけが「民意」であって、それ以外は「民意」にあらず、言うことを聞かないやつは去れ、という橋下氏の論法や手法はあまりにも乱暴すぎる。

◇◇

読売ナベツネ氏と報道機関 きょう28日付の朝日新聞に掲載された読売新聞グループ本社会長・主筆の渡辺恒雄氏のロングインタビュー「独裁者と呼ばれて」は、内容としては特に目新しいものはなく予想通りだったが、久しぶりに朝日の紙面で大々的に吠えたところが興味深い。朝日の懐の深さでもある。読売新聞は絶対にこんな記事は掲載しない。どのようなスポーツ大会や文化事業でも、主催する他社の名前はかたくなに隠して、自社の紙面には一切載せないのが読売だからだ。

 あえてピックアップするとすれば、政界との距離を聞かれてのナベツネ氏の答えが目を引いた。「読売新聞の社論を実行できる内閣になるなら悪いことではない。そういう内閣に知恵を授けて具現化するのは僕には正義だし、合理的なことだ。朝日新聞の社論通りに実行する内閣なら倒さなければならない。民主党の首相は2代続けてひどかったが、野田佳彦首相はいいんじゃないかな。うちの社論に80%近い感じがする。正直だし、やる気がある」。こうなるともう「新聞」じゃなくて「機関紙」だよなあ。報道機関ってどういう存在なんだろう、権力を監視する役割とはどういうことなんだろう、ジャーナリズムって何なんだろうと考えさせられる。

 もう一つは、読売新聞が原発推進を掲げていることについて聞かれて答えたところだ。「調査研究本部を中心に、専門家や研究者を招いて意見を聞いた上での判断で、安全性を十分に確保しながら再稼働していくのは必要なことだ」「日本の高い技術力によってリスクを最小限に抑えた原発を、中国に輸出すればいい」。あれだけの事故を目の当たりにしながら、人間が原発をコントロールできると信じて疑わないことに驚かされる。しかも日本の原発事故は収拾の目処さえ立っていないというのに。脳天気ぶりに言葉を失う。いかんともしがたいドンを抱えて仕事をする読売の記者の皆さんと、そんな読売を購読する読者の皆さんに同情するばかりだ。


11月29日(火曜日) 運転免許証更新

 午後から横浜・二俣川の運転免許試験場へ。運転免許証を更新。優良運転者なので30分で手続き完了する(えっへん)。なーんて威張るような話ではなく、実は最近ずっと運転していないから無事故無違反の優良運転者になるのは当たり前なのだった(汗)。それにしても更新のたびに思うのだが、写真撮影の係の人はほかのどこのコーナーの人と比べても、ずば抜けてつっけんどんで居丈高だよなあ。おまけにめちゃめちゃ空いていても急かすし。なんでだろうね。もうちょっと愛想よくしても罰は当たらないのに。その方が相手も自分も気持ちよくなれると思うんだけどなあ。

 ちなみに受付の人も、印紙の係の人も、視力検査の人も、講習会場の人も、ほかの職員はみんな普通に親切だったぞ。それと、いつの間にか暗証番号を登録するようになっていて、免許証にICチップが埋め込まれているのに驚かされた。


11月30日(水曜日) 「食い入るように…」

 午後から授業。「テレビと映像メディア」をテーマに、ドキュメンタリー「国労冬物語」と映画「チャイナ・シンドローム」を学生に見せた。どちらも毎年必ず授業で上映していて食いつきもいいけど、言うまでもなく今年は現実に福島で取り返しのつかない原発事故が起きたので、「チャイナ・シンドローム」を見せるのは、やはりこれまでとは意味が大きく違ってくる。学生の反応が楽しみだったが、予想以上に真剣に見てくれて、講義終了後に感想をぎっしり書いてくる学生も多かった。よかったよかった。受講生の感想を、ほんの一部だけど抜粋して紹介。

◇◇

 「電力会社の人間が記者のインタビューを受けているところが、東電の記者会見とダブって見えて怖くなった。こうしている今も日本では放射能がまき散らされているという現実を、映画を満て再認識させられた」

 「このようなことが福島の原発でも行われていたかもしれないと思うと心が痛みます。伝えなければならないことを、もっと映像で流してほしい」

 「報道・ニュース・ジャーナリズムは、だれのためにあるものなのかを考えさせられる内容だった。3・11による原発問題に通じる部分があった。きょうは一部しか見られなかったが、レンタルして見ようと思った」

 「真剣に見てしまいました。授業で扱われるビデオは、いつもなんとなく眺めている程度でしたし、周りもそんな感じでした。しかし今回の映画は、日本での原発問題もあったせいか、自分も周りも食い入るように見ていました。テレビ局にとっては視聴率も大切かもしれませんが、このように視聴者が真剣になって見れるような番組が必要だと思いました」

「チャイナ・シンドローム」を上映中の教室内。

 すっかり外が暗くなったキャンパスには、恒例のクリスマスのイルミネーションが燦然と輝いている。キリスト教系の学校だけあって、さすがにこういうところは節約とは無縁なんだなあ。心のゆとりは豊かな感性を育むので、こういうデコレーションで学内を飾るのはけっして悪いことではないと思う。せこせこケチってわびしいキャンパス風景が広がるのは寂しい。こういう習慣は止めないでぜひともずっと続けてほしいと願っている。

学内をイルミネーションで彩るツリー群。気分はもうクリスマス。


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